第360話 鬼退治に出発だ――!

「さてこれからグレンの拠点に乗り込もうと思う」


 俺は居間に集まったみんなにを見渡すと、力強く宣言した。


 時刻はもうお昼を回っていた。

 全員お昼ごはんも済ませて準備は万端だ。


 本来朝一で攻め込む予定だったのが、昼すぎにまでずれ込んでしまったのは、ひとえに俺がお寝坊さんしたせいである。


 だってさ……。

 ティモテと夜遊びしたあとに、《神焉竜しんえんりゅう》に見つかってこってり絞られて、そっから寝たんだもん……。


 ただまぁ《神焉竜しんえんりゅう》ったらね?


 怒った後は、反省した俺を優しく抱きしめてくれてさ。


 そのまま二人で一緒にぎゅーってしながらぐっすり寝て、俺も幸せな一夜を過ごせたんだけどね。

 まったく《神焉竜しんえんりゅう》はお布団の中でも子猫のように甘えたさんだったなぁ、ふふふ。


 おっと話を戻そう。


「じゃあまずは急襲組メンバーの最終確認をするよ。俺、《神焉竜しんえんりゅう》、精霊さん、ティモテ、巫女エルフちゃん、ウヅキの6人だ」


 今回の作戦は、簡単に言うと少数精鋭のSS級メンバーによる急襲作戦だ。


 主力はもちろん俺、《神焉竜しんえんりゅう》、精霊さんのSS級3人。


 狙われている当のティモテを連れて行くのは微妙な判断だったんだけど、SS級がそろっている俺たちの近くにいたほうが、むしろ安全じゃない? ということで同行してもらうことになった。


 サポート役として巫女エルフちゃんも同行する。


 グレンの瞬間移動技である『鬼門遁行きもんとんこう』の妨害役、アンド俺(と精霊さん)の新技である『精霊融合エレメンタルフュージョン』の調整係を担っている。


 今回の作戦の大前提として、『鬼門遁行きもんとんこう』を封じて逃げ道を封じることは作戦成功の要でもあるので、とても頼りにしている。


 そしてもう一人のSS級、《シュプリームウルフ》シロガネを、万が一の事態に備えてこちらの本拠地であるアウド街(建設中)の防衛に残すという、完璧な布陣だった。


「あれ? ウヅキはなんで急襲組の方に入ってたんだっけ?」


「《神焉竜しんえんりゅう》さんに『奥方殿抜きに出過ぎた真似はできぬのじゃ』と言われまして」


 俺の疑問に、一言一句再現して答えてみせるウヅキ。


「そういやそうだっけか……変なところでメンツを気にする奴だなぁ」


「む、主様ぬしさまわらわをいったい何だと思っておるのじゃ?」


「なんだと言われるとねぇ……」

 後先考えない暴虐の王竜さんですかねぇ……。


「それにの。ティモテ同様、安全なのはむしろわらわたちと一緒の方なのじゃ。わらわたちの近くにいれば、何があっても対処は可能じゃろうて」


「まぁ確かにもう一人くらいなら増えても大丈夫だろうけど……」


 ただ俺にとってウヅキはやっぱり特別なんだ。

 異世界転生してからずっと世話になりっぱなしだし、《神滅覇王しんめつはおう》の力もウヅキが居なければ手にすることはなかっただろう。


 だからウヅキの身の安全については最大限配慮したいんだ。


「なに、向こうは手負いなのじゃ。ちゃちゃっと行って、さくっとケリをつけてくるだけのことじゃ。なんならわらわ一人で行っても構わんのじゃぞ?」


「いややっぱり当初の作戦通りに、逃げ道を封じたうえで最大戦力で一気に叩こう」


 うん、そうだよな。

 うだうだ考えだって仕方ない。


 グレンとの戦力差は決定的だ。

 負けるはずは、ない。


「じゃあま、そういうことで。みんな準備はいいね?」


 俺の言葉に、みんながこくんと頷きで返す。

 じゃあ最後に、みんなが一致団結するための決起の言葉を――、


「じゃあみんないくわよ! いざ、反攻作戦スタート! 鬼退治に出発だ――!」


「「「「おー!!!」」」」


 ――言おうとしたところで、精霊さんが狙いすましたように全部持っていきやがりました!


「さてはこいつ……! 狙っていやがったな!? 途中経過を全部俺に任せて、最後の一番おいしいところだけ自分の手柄として持っていきやがった……!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る