第361話 舞い降りる剣

 作戦が始まり――今、俺たちは高度3000メートルの空の上にいた。

 

 竜化した《神焉竜しんえんりゅう》の背中に乗り込んで、一気にグレンの拠点へ接近。

 超高空から強襲して先制攻撃をかますのだ。


「ふむ。左前方、見えてきたのじゃ」


 《神焉竜しんえんりゅう》にいわれた俺が、知覚系S級チート『龍眼』を使って地上に視線を飛ばすと――、


「いた、あれだな。確認したよ」

 廃墟のような小さな遺跡にグレンがいるのが確認できた。


 まだ傷が癒えていないのだろう、グレンは周囲を警戒しながら手近な岩の上に腰を下ろしてじっと動かないでいる。


「よしよし、上は全くの無警戒っぽいな」


 上空3000メートルから攻め込まれるとは、さすがの《剣の魔将》も思いもよらなかったってわけだ。


「では主様ぬしさま、ファーストストライクをまずはガツンと頼むのじゃ――」


「セーヤさん、ご武運を――!」


 《神焉竜しんえんりゅう》とウヅキの応援を背中に受けながら――、


「ああ、任せとけ! よっと!」


 ――俺は《神焉竜しんえんりゅう》の背中から、なにもない中空へと身体を投げ出した――!


 途端に身体からスッと重力が失われ、風にあおられながらどんどん自由落下を始めてゆく。

 

「空中姿勢制御系S級チート『フリーフォール』発動!」


 俺は落下時の空気抵抗を利用し、身体全体を使って落下速度と空中姿勢をコントロールするサポート系のS級チートを発動した。


 このチートのおかげで自由の利かない空中でも体勢がしっかり安定しているとはいえ、どんどんと巨大な地表が近づいてくるのは、


「これは心臓に悪いな……というかぶっちゃけマジ怖いんだけど」


 しかもこのチート、わざわざ但し書きの説明が記載されていて、


「――ったく、なにが『高度7000メートルから自由落下して生還した人もいます。ただし使用は自己の責任でお願いします』だ。S級チートならちゃんと最後に着地するとこまで面倒みろよ!?」


 ってわけで、


「ちょっと早いけど、いくよ、精霊さん!」


 俺はS級チートよりも信頼できるSS級の相棒に――自由落下に一緒についてきていた精霊さんへと声をかけた!


「オーケー、マナシロ・セーヤ! どんとこーい!」


 翼くんと岬くんな有名ゴールデンコンビのごとく、俺たちは意思の疎通を行って――、


「「精霊融合――エレメンタル・フュージョン!」」


 ピカーッ!!


 心を合わせた掛け声とともに精霊さんが七色の光の粒子となって、落下する俺の身体に吸い込まれてゆき。

 同時に、俺の身体の中に《精霊神竜》の強大な力が満ち満ちてゆく――!


「――っ!? 空からだと――!?」

 SS級である《精霊神竜》の力の発現によって、ようやっと俺の存在に気付いたグレンに、


「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――っっっっ!!」


 落下の勢いそのままに!

 俺は精霊剣クサナギを――こちらも《精霊神竜》の力によって七色に輝いている――グレンへと叩きつけた!


 ギン、ギャギリリンッッ――!!


 精霊剣クサナギによる強烈な一撃を、


「ぐぅぅぅぅぅううううううぉぉぉぉぉおおおっっっ――――!!」

 しかしそれでもグレンは受け流してみせる。


「はぁっ!? マジかよっ!? 手負いの上に、今のは完全に不意を打ったってのに――!」


 できれば今の初撃でケリをつけたかったんだけど、


「くっそー、そう簡単にはいかないか。アンタほんと反則的な剣技だよな、さすがは《剣の魔将》と呼ばれるだけはあるぜ、グレン」


「貴様こそまさか高空からの一点強襲とはな。やりおるわ。周囲に仕掛けた罠がすべて台無しになってしまったではないか、《神滅覇王しんめつはおう》マナシロ・セーヤ」


 互いに精霊剣クサナギと魔剣グリムヴェルを構えながら、俺とグレンは互いにニヤリと笑いあった――。


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