第340話 クリスさんと……
「えっとあの。まだ何かあったり、的な……?」
クリスさんにいきなり超真剣な顔で迫られて、思わずへっぴり腰になっちゃた俺。
だってね?
正直言って責められそうなことに、いくらでも思い当たる節があるんだもの……。
あれかな、昨日の夜にウヅキと巫女エルフちゃんと3人で寝た件かなぁ……。
それとも温泉でティモテをお触りしたラッキースケベの件かなぁ……。
あ、朝起きたら裸のサーシャを抱きしめてたことかもしれないなぁ……。
だめだ、昨日一日だけでもぱっとこれだけ出てくるんだけど……。
まさに疑惑の総合商社。
剥いても剥いても、次から次へと女の子に何かしちゃった事案が出てくる、たまねぎ男こと
ううっ、今度はいったい何について問い詰められるんだろうか。
戦々恐々で身構えた俺だったんだけど――、
「失礼します」
クリスさんはそう言うと、なぜか俺の腰をグイっと強引に引き寄せると、腰を合わせるようにして抱きしめながら、身体を密着させてきたのだ。
「く、クリスさん?」
ぎゅうっと密着したクリスさんからは、かすかにラベンダーが混じった石けんのいい香りが漂ってきて。
しかもスタイル抜群のクリスさんの触感ときたら、そのイケナイ女の子のぬくもりときたら……マ、マーベラス!
昨晩、両手に花で生殺しにされた俺のいけない《
「ふふっ、怖がっていても身体は正直ですね? ねぇマナシロ様、覚えておいてくださいね。もしお嬢さまを1番に選んでいただければ、この私ももれなくついてくるということを――」
耳元でそうつぶやいたクリスさんは、それだけでは終わらずに、
「ちゅ――ん――はむっ」
俺の耳たぶを唾液の乗った舌先でなまめかしくつつきながら、はむっと甘噛みをしてきたのだった。
「ふわっ――!?」
クールビューティなクリスさんのいい匂いに包まれながら、敏感な耳たぶを優しく責められて、イケナイ昂ぶりが俺の背筋を駆けあがっていく――!
いきなり『えっちなお姉さん』になってしまったクリスさんのリードの前に、ピクッピクッと身体を強張らせてなすがままにもてあそばれちゃう俺。
朝っぱらから人の部屋で、しかもティモテに見られてるっていうのに、これから俺はいったいどうなってしまうのか……!?
欲望が期待を呼び、期待が興奮をかき立て、興奮がさらなる欲望を呼び起こす――。
もはや理性では止められない、えろえろスパイラル……!
――しかしその直後だった。
クリスさんはまるで何事もなかったかのように、すっと身を離してしまったのだ。
「あ、あれ……?」
「失礼、首元に
ティモテと連れ立って、献立を説明しながら、もういつものポーカーフェイスに戻って部屋を後にするクリスさん。
「えっと……え……?」
ティモテの部屋に俺だけ残るわけにもいかず、わけが分からないままに俺も2人の後を追って歩き出す。
まるで白昼夢でも見ていたのかってくらいに、一瞬で元の日常に戻っちゃったんだけど――、
「さっきのってつまり、サーシャとクリスさんはセットでにゃんにゃんしていいよってことなんだよな……?」
甘噛みされた耳たぶを、俺はそっと手で触れてみる。
まだ残る唾液のわずかな湿り気が、さっきのやりとりが夢でも何でもない、紛れもない現実であったことを、これでもかと教えてくれたのだった。
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