第333話 S級チート『なぜかそこにある石けん』
「ですが――」
「だってほら、裸になって湯船につからなかったら、ティモテの身体が冷えちゃうからさ」
そう、これは俺が女の子と混浴したいという下心からではないのだ。
ティモテの出るところは出て、ひっこむところはひっこんでる均整の取れた女の子ボディに興味が津々なのでは、決してないのだ。
ティモテの身体を気遣っての、紳士・
「それは一理あります、けど――」
俺の極めて紳士的な発言に、ティモテは少し悩むようなそぶりを見せた。
ちらちらと温泉や俺を見ては、
どうしよっかなー、でもなー、うーん。
――みたいにそのそわきょろきょろしている態度が、小動物系の愛らしさにあふれていて、つまりとても可愛らしかった。
「――ん?」
ふと気づくと、ラブコメ系S級チート『なぜかそこにある石けん』が発動していた。
そして、
「や、やっぱり今回はご遠慮します。また後日、機会があればお願いします」
極めて常識的な判断とともに、申し訳なさそうにぺこりと頭を下げたティモテが、この場を離れようと
「きゃっ!」
可愛い声をあげた。
踏み出した足を、なぜかちょうど足元にあった石けんの上に、置いてしまったのだ……!
「だからそこに石けんはねぇっつってんだろうがよぉ!?」
このチート群、普通に危ないんだってば!
あと露骨にチート数を水増ししてんじゃねぇ!
石けんを踏んで、つるっといってしまったティモテ。
顔をバッテンにして(こんな感じ→(>_<))、両手をばんざいしてすってんころりんした彼女を――、
「おりゃ――っ」
いい加減この手のチートには慣れっこになっていた俺は、
ザバァっっ!!
露天風呂の
「よっこらせっと」
即座に落下点へと滑り込んで、クッションとなるべくティモテの身体を抱きとめたのだった。
ティモテの柔らかい女の子の身体が、俺の腕の中にすぽんとおさまる。
柔らかいなー、うん、すごく柔らかい。
ふにゅっ、にゅふっ。
ふにゅっ、にゅふっ。
ちなみに『ふにゅっ』はティモテに触れた柔らかい感触で、『にゅふっ』は俺の――多分ちょっと気持ち悪い――笑みである。
ふにゅっ、にゅふっ。
ふにゅっ、にゅふふふっ。
「ふぅ、やれやれ……」
とまぁそんな感じで、無事にことなきを得たんだけれど、
「なんかもうこの対応も手慣れてきた感があるな……」
誰がどう見ても自作自演なこの一連のチート群に、ちょっとだけ微妙な気分にさせられなくもない俺だった。
もちろん「ちょっと」以外は役得!という気持ちです。
俺は自分の気持ちに正直な漢・
「助けていただきありがとうございました……あの、なぜか気づいたら足元に石けんがありまして……」
腕の中で俺に抱かれたまま、小さな声で感謝の言葉を伝えてくるティモテ。
「あっ、と思った時には既に身体が宙に浮いていまして……それにしても、どうしてこんなところに石けんが?」
「あ、うん、そうだね……なんでだろうね……?」
思わず言葉を濁してしまった俺だった。
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