第280話 新たなる契約

「……こほん。で、だ。俺としてはさ、何よりもまずはエルフ村の常夏仕様を現状維持して欲しいんだ」


 俺はとてもまじめな顔をしてそう告げた。


「これは既に生活の一部ともなっていることだし、巫女エルフちゃんたちのことを思うと、俺としてはこれはもう絶対に譲れない。逆にそこさえクリアできたら後はどうでもいいまである」


 俺は駆け引き抜きで、ズバリ単刀直入に求める条件を提示していく。


「まずは世のため人のため……素敵です……! さすがです、セーヤさん!」

 そんな俺を見て、目をキラキラさせるウヅキ。


「ははっ、それほどでもないよ」

 謙遜してみせる(もちろんあくまで「してみせた」だけである)俺も、もちろんまんざらではないわけで。


 ふぅ、女の子にチヤホヤされるってほんと快感だなぁ……!

 この圧倒的な充足感……これがモテるということなんだな……!


 やっぱり異世界転生は最高だぜ――!


 どうせならもっとはやく異世界転生させてほしかったね!


 おっと話を戻そう。


「でさ、そのための方法が何かないかなーって。精霊さんってかなり凝り性で器用だろ? もしかしたら、精霊さんが常駐しなくても常夏エルフ村を維持するような、そんな方法を開発してたりしないかなーって思ったんだけど」


「あら! なかなかいいところに目を付けたじゃない! ちゃんとあるんだよね、実は既に! 温度管理から送風までを完全自動化してあるんだから!」


「おおっ! すでに実行済みだったなんて!」


 さすが精霊さんだ……!

 することがなさすぎて、暇に飽かして10年かけてガーゴイルを製作していただけのことはあるぞ……!


「具体的には、自動温度感知センサーを村のあちこちに立ててあるの! そこから得られた温度データを統括判断する人工精霊『MIR.AI』の開発にも成功! 人が多いところ・日なたで暑いところその他もろもろをリアルタイム予測して、あらかじめ涼しい風を送り込むことで、快適な夏を提供できるってわけ!」


「すごい、すごすぎるぞ精霊さん! もはや完全なエアコンじゃないか!」


「えあこん! 教えてもらいました! セーヤさんの故郷の氷室ひむろのことです!」

 ウヅキが抜群の記憶力を披露すると同時に、


「そーいえば、昔と比べて最近は気候きこー安定あんてーしてるって、ばーやが言ってましたー」


 巫女エルフちゃんが、全自動化が全くの問題のないことを――どころか手動より優れていることをユーザー視点から教えてくれる。


「じゃあもう本当に、精霊さんをエルフ村に縛り付ける必要はないわけなんだな」


「ですね!」

「ですー」

「うにゅ」

「ばっちり解決です」


「――――チッ」


「みんなの賛成も得られたことで――《神焉竜しんえんりゅう》だけは露骨に舌打ちをしたけど聞かなかったことにした――これで決まりだな。エルフ村については全自動化に任せて、精霊さんは今後完全に自由ってことで。そしてこれが、俺と精霊さんの新しい精霊契約だ!」


 言って、俺が差し出した手――の人差し指を、


「ぅ、うん……あの、ありがとう……」


 精霊さんが小さなお手てでちょこんと握り返してきた。


 精霊さんはエネルギー体だから実際には触れてはいないんだけれど、傍から見た分にはきっとしっかりと約束を交わしたように見えることだろう。


 そんな精霊さんに、


「なーに、人として当然のことをしたまでだよ」

 俺はカッコいいセリフをさらりと言ってのけたのだった。


 ぶっちゃけエルフ村が薄着おっぱいの常夏仕様にさえなってくれれば、精霊さんを縛り付けることには全く意味はないもんな。


 つまり――、


 きゃっほう!


 これでこれからもずっと、俺の巫女エルフ村は最高に薄着でえちえちおっぱい祭りだぜ!


 今度はいつ遊びに来ようかなっ♪

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る