第279話 今後の話
「まぁなんだ……アストラル界が便利だけど実は怖いところだってのが分かったところで……精霊さん、今後のことについて話をしたいんだけど」
俺はそう切り出した。
「話……って……?」
よく分からないって顔をする精霊さん。
「精霊契約を見直そうってことだよ。精霊さんは契約に縛られて長い間ずっと、ここから動けなかったんだろ? やっぱそれは可哀そうだし、いろいろちょっとおかしいかなって」
常夏巫女エルフ村は大切だけれど、だからと言って一方的に自由を縛る奴隷のような契約が良いことだとは思えない。
そんな俺の提案に、
「でもでも、アタシ負けちゃったし……最後は《精霊神竜》が出てきちゃって、みんなにも迷惑かけたし……」
――しかし精霊さんはというと、珍しく殊勝な態度を見せたのだった。
申し訳なさそうに上目づかいで見上げてくる精霊さん。
普段は超が付くほどのお調子者&イラつくほどにKYなだけに、それだけで精霊さんが暴れまわったことをどれだけ反省してるかってのが伝わってきて――。
ほら、やっぱ精霊さんはいい子じゃないか。
そういう子にはこっちもちゃんと誠意をもって、誠実に対応すべきだと俺は思うんだ。
「うーんとさ。全部が全部、勝った方が自分に都合よく決めるってのは、やっぱ違うと思う。なんだっけ、独占禁止法に優越的地位の濫用……? とかいうのがあったような……?」
大学の授業でやったはずなんだけど、あまりに昔過ぎてもはや記憶のかなたでござる……。
そんな子供用プールのように浅くて狭い知識の俺に、
「はいっ! 立場が優越している一方当事者が、取引の相手方に対してその地位を利用して、不当に不利益を与える行為のことです! さすがです、セーヤさん!」
すかさず援護射撃をしてくれるウヅキさんってば、マジ
「あ、はい、そうです、それです。いやほんと、ウヅキは知恵袋さんだな……」
ごめんねいつも、手間かけさせちゃって……。
「えへへ、セーヤさんに褒められちゃいました」
ウヅキがそれはもう可愛らしーく、はにかんだ。
でもさ。
さっきだって「さすがです!」と言われたものの、
「超曖昧な俺の言葉を、いつも即座に補完してくれるウヅキの方がスゴいと思うのは、俺だけなのだろうか……?」
まぁそれはそれとして、だ。
「つまりだ。契約ってのはお互いに納得した上で決めるもんだろ?」
俺はにこっと笑って言ってやった。
ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』に加えて、勧誘系S級チート『昼休みに来る保険のお姉さんの営業スマイル』を発動する。
契約の時に相手をふわふわ~っといい気分にさせて、幸せな気持ちで気分よく判子を押させちゃうこのチートによって、精霊さんがぽわ~っと頬を赤らめた。
「アンタ……実はいいやつだったのね……ただのおっぱい大好きなエロエロ覇王とばかり思ってたわ。ごめんね、勘違いしてて。うん、アンタもすごくいいやつ! 素敵だわ、《
「…………(滝汗)」
俺の笑顔がビシリと固まった。
もはや冗談でも「薄着おっぱいのため」などとは言えない雰囲気をひしひしと感じます。
……オッケー、不都合な真実は告げないでおこうね。
JFケネディ暗殺の真相然り――知らないがゆえに、世界が平和かつ円満に動いていくこともあるのだよ。
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