第109話 デートのナイア 3 耳ぺろ
どうにかこうにか「おっぱい容疑者」から解放された俺は、気分を落ち着かせつつ、しばらくナイアと肩を並べて座っていたんだけど――、
「すー……」
そうこうしている間にナイアが寝落ちしてしまっていた。
「ナイアは戦いの後も徹夜で仕事してたんだもんな……。チートもないのにほんとすごいよ……」
俺がウヅキ&ハヅキと温泉できゃっきゃうふふしている時も、その後ぐっすり寝ちゃってた時も、カッコイイポーズを練習していた時も。
ナイアはずっと休むことなく頑張っていたのだ。
そりゃ少し気が抜けちゃって、寝落ちしちゃっても仕方ないことだろう。
「15分くらい寝かせてあげよう……」
約15分のショートスリープは疲れた脳を劇的に回復させる効果があるって、この前テレビでやってたし。
「それにこれは、俺の前で無防備な寝姿を見せちゃうくらいにナイアが心を許してくれている、ってことでもあるわけだしな……!」
ふぅ、またモテてしまったぜ。
やっぱりこの異世界は最高に俺のためにある……!
ナイアが寝落ちしたのと前後して、女の子にいい夢を見させてあげるラブコメ系A級チート『あたま、こてん』が発動した。
きっとナイアは、今ごろ素敵な夢の世界の住人となっていることだろう。
「おやすみ、ナイア。いい夢を――」
俺は体重を預けてもたれかかってくるナイアの頭を支えるように、自分の頭をそっと添えてあげた。
というのもナイアは女性にしては高身長(俺と同じくらい)のため、俺の肩に頭をこてんすると、首が曲がりすぎてしまうからである。
なので俺は自分の頭を傾けて、ナイアの頭とお互いに支え合う感じで頭を寄せ合っていんだけど――、
「ふわっ――!?」
いきなり敏感な声を上げてしまった。
……俺が。
ごめんね、ナイアじゃなくて。
変な声を上げてしまったのは他でもない。
ナイアが俺のみみたぶを、ぺろっと優しく舐めてきたからだ。
「な、ナイア?」
ビックリして尋ねてみたもののナイアの意識は完全に夢の中にあって、起きる気配はまったくみられない。
しかし無意識下のナイアの舌は、ぺろっ、ぺろっと、俺のみみたぶを、何度も何度も柔らかく、いやらしくねぶりはじめたのだ――!
「ナイア――、んぁっ!」
敏感なところを舐めたてられて、思わずイケナイ声が上がってしまう。
……もちろん俺のである。
ほんとごめんね……、いろいろごめんね……。
しかもナイアの口撃は、それだけでは
ナイアは無意識のうちにも俺の耳たぶに狙いを定めると、そのぷりぷりな口唇でもってはむはむしはじめたのである!
瑞々しい口唇が、唾液でぬめる舌が、俺の耳たぶを執拗に攻め立てはじめる。
耳たぶという防御力皆無の敏感なところをついばまれ、襲いくる初めてのイケナイ快感が背筋がぶるっと駆け上がっていく――。
「ら、らめぇ……、な、ナイア、これ以上は……」
ダメだ――、と起こそうとして。
――しかし俺は、はたと思いとどまった。
もっとぺろぺろしてほしい、唾液ののったぷりっぷりの舌の感触が気持ち良すぎて、なんかちょっと癖になりそう……、という意味ではもちろんない。
……いやそりゃね?
そういう気持ちがゼロかというと、決してゼロではないんだけれど。
だって男の子だもん!
でも主たる理由というのはだ。
「せっかくとれた貴重な睡眠時間なんだ、もうすこし寝かせてあげたいよな……」
『偉い人』として周囲の信頼に応えながら一切弱音を吐かずに頑張っているナイアが、今ようやっと、わずかなまどろみに浸ることができたのだ。
幸せそうにちゅっちゅする寝顔は、ナイアが今、心から安心している証左だろう。
そんな刹那の幸福に包まれたナイアを、起こしていいはずがあろうか?
「いや、ない!」
だからこれは俺がナイアに耳をぺろぺろはむはむされ、どころか優しく甘噛みされ始めて、なんかもうビクンビクンしちゃうエロスを堪能したいからではなく――、
「ナイアのためを思っての、心と身体を休めてもらうための、これはある種の医療行為なんだよ!」
俺は使命感を胸に抱き、ナイアの舌と唇の感触を存分に味わう――、おっと間違えた、ナイアのするがままに身を委ねていく。
ぺろ、ちゅっ、ちゅぷ、はむ、はむ、れろ、ちゅ……、
「ぉう……、くっ、はぅ……、あっ」
ビク、ビクン!
そう、これはしかたない、ビクン!
しかたがないことなんだ! ビクビクン!!
…………
……
15分後。
「ナイア、そろそろ起きようか」
「ふぁーー、ん……。ってごめんセーヤ、ちょっと寝ちゃってた!」
俺に声をかけられて目を覚ました途端、寝落ちしたことに気付いたナイアが慌てて謝ってくる。
「わ、悪い、アタイからデートに誘っておいて、その、つい安心して寝ちゃって……」
慌てるナイアは結構新鮮で、これまた可愛いことこの上ないのだった。
「すごく気持ちよさそうに寝ちゃってたね」
「め、面目ない……」
「ううん。俺の方こそナイアが疲れてるのに気付いてやれなくて、ごめんな」
「そんな、セーヤが謝ることなんてないさ」
「そうだね、ナイアの可愛らしい寝顔を見れたんだ。役得だったから、ここはごめんじゃなくてありがとう、が正解かな(キラリン!)」
俺はこの会話を想定して15分ぺろぺろちゅっちゅされながら考え抜いた、超イケメンセリフを、ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』全開で打ち放った。
「……っ! セーヤは本当にかっこよすぎて、アタイはもうどうにかなっちゃいそうだ……」
その効果は絶大で、ナイアの頬は完熟トマトのように真っ赤に染まったのだった。
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