第一部 《神滅覇王》――其の者、神をも滅する覇の道を往きて――
異世界転生 1日目
第6話 S級チート『ラッキースケベ』発動!
その後、転生装置なるものに入れられ、ブォンという音とともに浮遊感がしたかと思うと、次の瞬間、俺は開けた崖の上に立っていた。
「おおっ、ここが異世界か――」
身を乗り出して
下には広大な森が広がっていて、遠くにはキラキラと陽光を反射する海も見える。
「世界中の青空を全部ここに集めたみたいな雲一つない青空――まるで俺の旅立ちを祝っているみたいじゃないか」
さすが異世界、綺麗なもんだ。
日本の都市部ではまずお目に掛かれない大自然を、満足いくまで見やってから。
今度は後ろを振り返ってみると、そこにもまた広大な森林が広がっている。
「周囲に高い山は見えないから、低地の森林地帯ってとこかな?」
崖の上からの眺望はなかなか素晴らしくはあったものの、俺が異世界に来たのは雄大な自然を満喫するためではない。
俺の目的はただ一つ。
この世界で可愛い女の子にモテモテになることだ。
「っと、そうだ、スマホ――はあるわけないか……服以外に持ち物はないっぽいな」
まぁスマホがあっても電波が届くかもわからないし、そもそもバッテリーが切れたらただの置物だ。
異世界転生できた対価と考えれば、スマホがないなんてことは安いもんだろう。
「不便さにもそのうち慣れるか……」
日本人だってほんの20年前は、スマホどころか携帯電話すらなしで普通に生活していたらしいし。
「このままここにいても仕方ない、とりあえず歩いてみるか」
まずはこの世界の住人に――可愛い女の子に出会わないとな。
話はそれからだ。
探索系C級チート『犬も歩けば棒に当たる』の発動を感じながら、俺は適当に歩きはじめた。
その効果は、ちょっとしたラッキーに遭遇する(かもしれない)、だ。
目のまえの森に分け入ると――チートのおかげか――すぐに手掛かりが見つかった。
人為的な痕跡が見受けられたのだ。
これは同じく探索系のB級チート『マタギ』による、獲物を追うという効果だ。
草を踏みしめた跡、目印として付けられた木の幹の傷など、明らかに人が付けたであろうその痕跡をたどっていく。
そのまましばらく歩いていると、
「きゃっ」
ハヅキルーペのCMのような可愛い声がしたと思ったら、俺は大樹の陰から飛び出してきた女の子とぶつかった。
二人絡まるようにして倒れ込む。
「いてて……」
実はC級チート『受け身』が発動したおかげで、大して痛くはない。
ただ反射というか本能というか、人間は急にぶつかったりすると思わず声が出てしまうものらしい。
身を起こそうと思ったところで――目の前が真っ暗なことに気が付いた。
さらになんだか温かいものに顔や首が挟まれていて、状況を把握しようともぞもぞ顔を動かすと、
「あっ、やん、あんっ……ぁっ!」
なんていう、ちょっとえっちな声が上がるのだ。
こ、これはもしかして――!
もぞもぞ、くんくん、もぞもぞ……
「あ、あんっ、そこは、そこは、だめぇ――っ」
嬌声をあげながら、ビクンビクンと身体を震わせる女の子。
なんとなく湿度も増してきた気がするようなしないような?
――そう。
つまり。
なんということだろうか――。
俺は転倒してM字開脚した女の子の、スカートの中に頭を突っ込んで、その股間に顔面を押し付けてしまっていたのだ!
ラブコメ系S級チート『ラッキースケベ』が発動したのである!
「来ていきなりこれとか、やはりこの世界は俺のためにあると言っても過言ではない……っ!」
だが、このままもぞもぞしてしまっていては、ただの性犯罪者である。
犯罪は良くないよな、うん。
俺は未練を引きずりながらも、女の子の股間から顔を離すと、
「ごめん、ぶつかってしまって。大丈夫だったか?」
と問いかけた。
ラブコメ系A級チート『イケボ』のおかげで、人気声優のような超格好いい声になっている。
後は言葉が通じるかどうかだが、
「あっ、いえ、わたしの方こそ走ってて、急に飛び出してしまって――」
なんて言って頬を赤らめる美少女。
「オッケー、普通に通じてるな」
同時通訳をしてくれる基礎系S級チート『サイマルティニアスインタープリター』の効果で、日本語で会話をしているのと全く変わらずに会話ができる。
しかも『えっちぃとらぶる』があったのにこの反応である。
これはラブコメ系A級チート『イケボ』と、同じくラブコメ系のこちらはS級チート『ただしイケメンに限る』とのシナジー効果だ!
俺は完全に、完璧に、これ以上なく確信をした。
「この異世界は、俺のために存在する――!」
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