#9 おばあさんのお人形

暖かな日差しにうたたねするおばあさん。

そこへ二人のお孫さんが遊びにきました。


一人ぼっちのおばあさんはにこにこ顔で喜びます。

おばあさんは内気なほうのお孫さんにせがまれて、昔ばなしをはじめます。


  幼い頃に無くしてしまった、世界で一番美しいお人形

  おばあさんと仲よしだったお人形

  二人の幸せなひととき


おはなしが終わるときに、外で遊んでいた元気なほうのお孫さんもやってきました。

「ねえねえ、おばあさま。裏の牛小屋でお人形さんをみつけたの。」


  差し出されたお人形

  お顔は色褪せ、牛に踏まれて手足はもぎとれて

  あれほどきれいだった金色の巻き毛もすっかり伸びきったお人形


お人形を受けとるおばあさんに、内気なほうのお孫さんがたずねます。

「どうしましょう、おばあさま。もっと美しいのだってありますよ。」


内気なお孫さんの問いかけに、おばあさんは答えます。

「そのひつようはないのよ。私はこのお人形さんがよいのです。」


ボロボロになったお人形をお膝にのせて、おばあさんは歌います。


  仲よしのお人形

  いまでも世界で一番美しい



 以上の物語は、A・フレイザー著,和久洋三監訳『おもちゃの世界史』(玉川大学出版部,1980年)にて紹介されていたチャールズ・キングスレー著『水の子どもたち』(原題:The Water-Babies, A Fairy Tale for a Land Baby)の引用から思い浮かんだ物語です。

 以下、『おもちゃの世界史』本文より該当部分を一部引用。


 『水の子』(キングズレイ著)に出てくる妖精の「何でもしてくれるおばさん」は、無くしてしまった「世界一美しい人形」を、顔の色はあせ、牛に踏まれて手をもぎとられ、巻き毛もすっかりのびてしまった姿で見つけたとき、それでも次のように歌っています。


  仲よしだったお人形

  いまでも世界で一番美しい。

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