#4 貴賤沼

 あるところに土地のものから貴賤沼と呼ばれる小沼があった。

 その沼の周辺は不法投棄によるが多く、いつも沼には何ともしれないおぞましいものが浮かんでいる。むろん沼の水は汚く穢れており、沼から漂う臭気も尋常のものではない。

 ただ、そんな沼には一輪の蓮が咲いた。

 その蓮はこの世のものとは思えぬほど見事に美しく、見物の為に穢らしい沼へ訪れる者までいるほどである。そして、人が訪れるたび沼に浮かぶ大小のごみも増えていく。

 そうした賤しき人々の行いによってできた沼の汚泥ごみだめにより貴き蓮の花が咲く。

 いつからか沼が土地のものから貴賤沼と呼ばれるようになった由縁。

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