モブ勇者の成り上がり
バリウム
1.プロローグ
初めまして、バリウムです。
小説情報にも書きましたが、演出の為、最初の方はあえてつまらなくなっています。
36話ぐらいから話が加速し、面白くなります。
それまで我慢して貰えれば幸いです。
よろしくお願いします。m(_ _)m
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キーンコーンカーンコーン
昼休みの終わりを告げるチャイムの音が教室に響く。
僕はそれを合図にのそのそと読みかけのラノベに栞を挟み、机に仕舞う。
そして代わりに次の授業の教科書を引っ張り出した。
次の授業は英語、担当の川崎先生がやって来る。
川崎先生は新任の女教師で、抜けているところが多い小動物的な先生だ。
殆どの生徒からも好かれている。
「皆さん、授業を始めます。佐藤さん、挨拶お願いしますね。」
「はーい先生。起立、礼。」
このクラスの委員長で、艶やかな長い黒髪が似合う美人さんだ。
明るく活発で、クラスの中心、いわゆるスクールカースト最上位ってやつだ。
「では、教科書120ページを開いてください。……ってあれ!?私の教科書は?」
「おいおいまたかよ〜」
「さすが川崎先生」
初めから
近藤は身長180台という長身のイガグリ頭な野球部で、谷口は明るい茶髪をポニテでまとめた少しチャラめの女の子だ。
明らかに染めているように見えるが、一応地毛らしい。
聞こえてきた。
「うう〜すいません、先生また忘れてしまいました。気をつけるようにしてたのになあ。」
川崎先生が、小柄な体を更に小さくして反省している。
「そんなことより先生、早く取りに行かないと授業終わっちゃいますよ。」
イケメンスマイルを浮かべながらそんなことを言うのは
佐藤さんと並びスクールカーストの頂点だ。
イケメンで頭も良く、人当たりもいい。
他校の女子からも告白されたとかなんとか。
しかも、サッカー部のキャプテンを務めていて、佐藤さんと幼馴染らしい。
何度か一緒に帰るのを見かけたことがある。
イケメンで、性格も良くて、運動も出来て、美少女の幼馴染も居て……絵に書いた様なラブコメ主人公だ。
「はっ!そうですね、早く取りに行かないとですね!先生が取りに行ってる間、皆さんは自習してて下さいっ!」
そう言い残して川崎先生が駆けていく。
ああ、そんなに急いだら……
バタンッと先生がこける音が廊下から聞こえる。
やっぱり。
それと同時にこのクラスと、隣のクラスから笑い声が聞こえた。
僕はその間に続きを、と思い机からラノベを出して読み始める。
この本は、主人公が異世界に転移し無双するという内容だ。
人気で、アニメ化も近々予定されているらしい。
ネットの小説投稿サイトで人気になって、本になったみたいだ。
僕はこの異世界モノと呼ばれるジャンルが好きで、よく読んでいる。
やっぱり異世界モノはいい。
現実と乖離した物語を読むことで、現実の自分を忘れられる。
正直、あんまりいいことないし。
え、そんなことよりお前は誰だって?
僕の名前は
ぼっち、陰キャ、コミュ障という属性を持ち、スクールカースト最下位、『空気』の称号を欲しいままにするモブですがなにか?
……と、不貞腐れてみたところで今の現状が変わるわけでもなく、僕は依然としてぼっちのままだ。
だが、僕はこの生活が嫌いなわけでもない。
ただそこにいるだけ、正に『空気』。
誰にも気にされないまま自由に生きて、誰にも知られずに死ぬのだろう。
それが僕だ。
勘違いしないでよね。別に嫌いじゃないだけで、好きじゃないんだから!ってやつだ。
…勘違いする奴なんていないけど
「……はあ。」
自分の痛さに思わず溜息が出た。
でもなあ、少しぐらい刺激があってもいいんだけどなチラッチラッ
としてみたところでいきなり転機が訪れる訳でもなくて。
…異世界召喚でもされないかな。
「まあ、現実にそんなことあるわけない、け……ど?」
気づいたら教室の床一面によくある魔方陣みたいなのが広がっていた。
その円状の魔方陣は光りながらゆっくりと回転している。
「何これ…」
「何だ何だ?」
などといったクラスメイトの動揺した声が聞こえる。
「皆さんどうしましたっ!?」
生徒の慌てた声を聞き、急いで戻ってきたのだろう。
川崎先生が駆け足で教室に足を踏み入れたその瞬間。
今まで以上に魔法陣が強く発光し、教室が光に包まれた。
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