青春時代は心中に似ている

第1話 高校生

 「こんばんは。 

今日は澤たちと久しぶりにボーリング行った。極めたい   先生は、どんな日曜日でしたか?」

 2004年8月 高校1年、夏。(16)

えーと、暑くてたまらない。この日記を書いたらCD屋さんまで自転車で、行こうかな。僕らのクラスだけ、毎日担任とする日記帳があった。明日、学校に行けば明後日からは、夏休み。

暗闇の中自転車をかっ飛ばした。午後9時。 

スズムシの鳴き声。えらく自由になった気分だ。CD屋さんの隅に止めた自転車。降りて歩き出したら自転車がうしろで倒れる音がした。

先月まで大事にしていた、自転車の事をふと思い、そのまま起こさずに店の中に入った。

無料視聴コーナーで60年代のフォークのあの曲を聞いた。一曲15秒しか再生されないこのコーナーで、毎晩のようにこの曲を聞きに来た。いつか、買おう。15回ぐらい再生して、店を出た。夜の店は昼に入る店とは、なんだか違う。同じ店なのに。知ってる人は誰もいない、家族連れの笑い声がよく見えた。 

ぼくは自転車を更に漕いだ、2時間ぐらい漕いだだろうか。頭の中ではあのフォークのメロディが流れている。僕は昔の曲がすきだ。「旅の宿」 僕にとって恋とはいつも歌の中の、少しほろ苦い話だった。

 なんてな。

同じクラスのさとるの市営住宅の脇に自転車を止めて、メールを送る。 

「出てこいよ、流れ星見ようぜ。」

変身が来た。

「きめぇな笑」

101号室のさとるが10秒で出てきた。 

これやるよ、さとるに押し付けてテトラポットに歩き出す。

おぉーい、後ろから声が聞こえる。

「トイレットペーパーなんかいらねぇよっ」

コンビニ帰りのお土産だ。 コンビニのトイレに寄って、パーカーの中に隠して持ってきた。 

さとるが背中になげてくるトイレットペーパーを、いちいち投げ返した。  

テトラポット向けて歩こうとして、誰かにぶつかりそうになり、慌てて止まった。

「なんでいるの笑」  

マッコだった。  

幼馴染の東条まきこ。中学二年生の時に今の家に引っ越すまでは三人は、ここらへんで、いつも遊んだ。 

俺はすぐにマッコの持つリードの先に居る犬に飛びついた。

「よぅ」 

さとるはなぜか、照れながら上をむく。

代わりに俺が、まっこにこんばんはを連呼する。

まっ子は笑顔で俺の頭を叩き、住宅に入って行った。 

「やっぱ、おまえの事好きだよなぁまっ子。」さとるがつぶやき、俺がさとるを睨む。 

こいつの思考回路がおれには理解できんところが昔からある。 

じゃあまたあしたな さとるに手を上げ俺はサドルを握った。どこまで走ろう。どこでも良かった。 

この夜の中では、無敵を感じていた。いい方にも悪い方にも行けた。

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