メメントモリ
吉行イナ
死を思う
死を思う。ぼくは死を思った。
先人たちの考えは大きく2つに分かれた。
ある者は死を思うなれば今夜は飲み踊り明かそうと。明日、次の瞬間にはどうなっているかわからないと。
ある者は生あるうちの物事は空虚であると説いた。
片方は生きることを全うし片一方は死を引き合いにした。
ぼくはどっちだろうと思った。
ぼくは酒を飲むのも好きだしその際には暴食の限りを尽くす。
そして朝にはとても気分が悪い。
まだ25歳なんだけれどその瞬間、このような生活を続けていたら早死には免れないと感じる。
その場限りの感傷だが。
先人たちはどのような過程で極論に至ったのだろうか。
その人たちのそばにはいつも死が寄り添っていたのだろうか。
5分ほど前にぼくの横を気怠そうに通過していった黒猫が今は車道脇で倒れている
。
対面2車線の普通道路で日曜の午前8時、交通量もいつもより少ないのにもかかわらず。
ぼくはあの耳が奇妙に折れ曲がった黒猫をかわいいと思った最後の人間となった。
そしてそれを轢いた人間は今頃どこかで「黒猫を轢いてしまった。不吉だ」と感じているに違いない。そこにいくらかの後悔があっても猫は救われない。
あの黒猫はこうなる前に腹いっぱい飯を食べることはできたのだろうか。
メメントモリ 吉行イナ @koji7129
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