唯一の夢

勝利だギューちゃん

第1話

幼いころは、夢にあふれていた。

頑張れば叶うと、教えられた。


でも、世の中そんなに甘くないと気付く。

そして、夢を捨てて行く。

しかし、そのかわりに得るものもある。


が・・・


僕も、殆どの夢を捨てた。

だが、そのかわりに、何も得ていない。


ただ、ひとつの夢を残して・・・


30歳を過ぎても、独身でいる。

両親はすでに他界し、兄弟もいない。

つまり、天涯孤独の身。


でも、それでもよかった。

毎日の生活には、不自由していない。


時々、出会う。

昔のクラスメイトと・・・

皆、結婚している。


「あら、藤原くんじゃない、久しぶり」

「やあ、楢橋さん・・・いや、渡辺さんだったね。今は・・・」

渡辺美代さん、旧姓楢橋美佐さん、高校時代のクラスメイト。


卒業後すぐに、当時付き合っていたサラリーマンと結婚。

なので、子供はもう大きい・・・


「一郎、挨拶しなさい」

「おじさん、こんにちは」

「はい、こんにちは」

渡辺さんの、お腹は大きい・・・


「もしかして?」

「うん、ようやく2人目。8か月」

みんな、結婚して子供が出来て親になる。

そして、家庭を築く。


どの職についても、それは当たり前になっている。

でも、僕はその道を選ばなかった。


独身を通すのが、世間への抵抗だった。


渡辺さんとは軽く話して、別れた。

「元気な赤ちゃん、産んでください」

それを、最後にかけた。


断っておくが、初恋の人でのなんでもないので、誤解なく。


それから、数十年が経った。

もう、人生はいつ終わってもおかしくない歳になった。

未だに独身だ。

お見合いの話はあったが、全て断った。


そして、長年の温めたおいた、唯一の夢を叶える時が来た。

僕は、これまで貯めた貯金、そして全財産を捨てた。


そして、出た。

世界放浪の旅に・・・


これから残された余生を、世界中を見て回ろう。

そのために、必死になって働いた。

今更、人のために使いたくない。


もう、自分のために使おう。


生が尽きるまで、世界を旅する。

そこで、どんな出会いが待っているのか、楽しみだ。


「では、行ってきます。」

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唯一の夢 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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