第27話 コネクションって凄い

 来る時に乗ってきた船で俺が帰るとスズメさんに付いていったことが協会にバレて色々とマズい。だからノーツの近くの町で一旦俺だけ降りて、連絡船で帰る。

 そして酒場で協会への報告を済ませたスズメさんとランをいかにも待ってました、と言うように出迎えた。


「意外とバレないもんだな」

「そう何度も使える手じゃねェけどな」


 小声で交わし合って借りている部屋まで戻る。スズメさんがベッドに腰掛けて、報告の際に得た情報を話してくれた。


「あの日記に書かれてた“納品場所”っていうのが今も使われている線が濃いらしい。それも、海賊共と奴隷売買集団の合同アジトだってよ」


 その口から出たかなり大きな情報に目を瞬かせる。こりゃまた大層な。


「協会はよくもまあそんな情報を取れたな」


 言うと彼女は「協会に所属してる冒険者はなにもアタシだけじゃないんだぜ」と肩を竦めた。横からもランが軍も情報を協会に流したことを付け足す。

 それにしてもここまで情報を教えてもらえるなんてさすがはS級冒険者と一級医療魔術師様々だ。一旅人の俺とは全然違う。すごい。


「合同アジトには最近人魚を攫ってきて集めてるってウワサもあるからな。この後は軍警がそのアジトに乗り込んで検挙するからアタシ達の出番はここまでだ」


 湧いたのも束の間、その言葉に俺は俯く。膝に乗せていたざくろが手に擦り寄り『ぴゃう』と鳴いた。


『メェ?』


 心配そうに舌足らずな声でメイの名を呼び、俺の顔を覗き込む。その大きな瞳に写った自分の顔はひどく情けなく、泣きそうだ。

 ああ、ちくしょう。

 これ以上ざくろにこんな姿を見せたくなくて、その小さな身体を胸に抱えた。すると黙ってこちらを見ていたスズメさんが「よし」と苦々しげに口を開く。


「なんとかしてメイを探しにアジトに入るくらいは出来ないか交渉してみる」

「「え」」


 ランと声が重なる。出来るのかい、と聞いたのはランだ。


「アタシのコネを舐めるなよ」


 彼女はそう笑って、連絡の為に部屋を出て行く。その横顔が少し疲れたものに見えたのは気のせいだろうか。

 その背を見送って、ランが「ああそうだ」と声を上げた。


「あの集落跡についてはまた人魚族が住み始めていたからあまり干渉しないように、ということで話を通しておいたよ」


 彼の言葉にまあ嘘はない。

 きっとこれは、ワーナーさんへの気遣いだ。あそこが放棄されてそのままだと知られたら、あの静寂な眠りの場は再び調査だとか何だとかで人間に踏み荒らされる。

 俺は大きく頷いた。

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