グロリアの再教育 XXVI.カーネル先生とグロリアの攻防
「手を!手を動かすざます!」
「無理、もうできない」
「口ではなく手を動かすざます」
「私、気分が悪いわ。くらくらするの」
「ちょっとくらいくらくらしても問題ないざます。
私もくらくらしているざます。
ついでに言うと頭も痛くなってきたざます。
ガタガタ言っていないで手を動かすざます。
これが終わらなければ食事も休憩も睡眠も抜きざます」
「そんなぁ!死んでしまうわ」
「人間死ぬ気になれば何でもできるざます」
「お母様なら私にこんなことさせなかったわ」
「私はあなたのお母様ではないざます。
いつまでおしゃべりを楽しむつもりざますか?
さっさと手を動かすざます。終わらないざます」
「あなたが終わらせないんでしょう。
酷い虐待だわ。こんなの。無理やりさせるなんて。
それに私はあなたとの会話を楽しんではいないわ」
「そうざますか。私にっとは楽しい会話ざますよ。
話していると頭が痛くなって、無意味に叫びたくなるぐらいにはあなたとの会話を楽しんでいるざます。
それと教育とは大概、無理やりさせるものざます。
勿論、#子供__・__#がその気になってくれて自主的なのが好ましいざますがね。
そんな子は滅多にいないざます。
そんな#子供__・__#に教育させるのが家庭教師の役目ざます。
多少の厳しさなど世間の荒波に比べたら屁の河童ざます。
それに『虐待だ』と訴えるなら本物の虐待がといういうものか見てから言うざます。
さぁ、手を動かすざます。
でなければ終わるものも終わらないざます。
ああ、それと伯爵様には私が声をかけるまで食事を運ばないように言っているので安心するざます。
さぁ、これで心置きなく宿題ができるざますね」
さんざん逃げた挙句先生に捕まり無理やり部屋に引っ張り込まれた後、逃げられないように部屋に鍵をかけられたグロリアの目の前には2日分の宿題が置かれていた。
逃げられない部屋で先生と二人っきりの空間はグロリアにとって耐えがたいものだった。
どうして私ばかりこんな辛い目に合わなければいけないの?
私は何も悪いことはしていないのに。
それにクリス様との婚約だって勝手に決められて。
私の意志は無視。
誰も私の話なんて聞いてはくれない。
もう嫌、死んでしまいたい。
ミハエル様に会いたい。
グロリアの目から大粒の涙が流れて来た。
「泣いてもダメざます。
あなたが宿題をしてこないからこうなったざます。
何かをサボればそれだけリスクを背負うことになるざます」
「・・・・お願い、少し1人にして」
「ダメざます。これが終われば好きにしていいざます。
何もしないで自分の要求だけは聞いてもらおうなんてそんな都合のいい話はそこら辺に転がっていないざます。
自分にとって都合の良いものがそこら辺に転がっている場合は何かしらの悪意が含まれていると見た方が良いざますね。
リスクもなく得られるものなど何もないざますよ」
「私は伯爵家の令嬢よ」
「よく存じ上げているざます」
「私にこんなことをしていいと思っているの?」
「私は自分がしてはいけないと思ったことはまずしないざます」
「私じゃなくてお姉様だったら絶対にあなたはこんなことはしないでしょうね」
「セシル嬢ならその前に私の授業から逃げ出さないのでこんな状況にはならないざます」
何よ、それ。
それじゃあ、まるで私が逃げているみたいじゃない。
私は好きで逃げているわけじゃないのに。
本当に気分が悪くて、それで少し横になりたいだけなのに。
だれも私のことを分かってはくれない。
みんな私のことが嫌いなんだわ。
だからみんな私だけに辛く当たる。
どうせ私はお姉様みたいに綺麗じゃないもの。
私にお姉様のような美しさがあれば絶対、みんな私を好きになったわ。
「グロリア嬢、いつまで休憩しているざますか」
ああ、私はなんて可哀想なのかしら。
ミハエル様に会いたいわ。
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