第十五話 ルビアス王子の決意
ルビアス王子は何度も思い出していた。
天界からの使者である聖なる獣ジスが、自分に「その身の進退を決めろ」と、漆黒の勇者の護りの要が告げたのだ。
重たい言葉がのしかかる。
イルニア帝国の第三王子ルビアスは苦悩する。
その様子を聖獣バルカンがニワトリの姿でじっと見守っていた。
「……聖剣エクスカリバーを借りるっていつまでだ。大体なぜ、女神イシス様は俺に啓示を出し、イルニア帝国に持って来るように言ったんだ?」
女神様の啓示は、その期限をいつからいつまでなんて言わなかったじゃないか。
人知を超えた存在である女神が伝えたことが、人間である自分にすぐには理解が出来るわけがない。
第一、大魔王ヴァーノンは漆黒の勇者によって倒され滅んだはずだ。
脅威が去ったのに、イルニア帝国に勇者の聖剣を持ち帰る理由はなんだ?
考えても考えても途方もない堂々巡りの思考は、答えなど出るわけもなかった。
ならばやはり、聖剣エクスカリバーをイルニア帝国の地に運ぶしかないだろう。
祖国が滅びると啓示を受けておいて、手をこまねいて打てる手を打たないことは民を守るべき王族の恥だ。
――聖剣さえ持って帰れば祖国は救われる。簡単なことじゃないか。
この時のルビアス王子は単純にそう考えていた。
カトリーヌは決めかねている様子だったがこの紋章入りの指輪を代わりに預かってもらうのはどうだろうか。
イルニア帝国の王子である証の指輪は代々継承されてきたものの一つで王家の、大切な国の宝だ。紋章も希少価値の宝石も埋め込まれている。
これなら漆黒の勇者が持つ聖剣エクスカリバーを借りる為に相応しいのではないか?
昨日のカトリーヌや聖獣達との楽しかった晩餐から一日が過ぎようとしていた。
眼差しに力のこもったルビアス王子は意を決して椅子を立ち上がる。
彼はカトリーヌの白い家を目指して、確かな足取りで歩き出した。
その踏み出した一歩は彼のこれからの運命を変えるのだ。
カトリーヌにとっても運命が変わり、その輪が回ることになる。
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