第十一話 ほうら、やっぱり
「あー! 君はやっぱり漆黒の勇者エリザベートなんじゃないかっ!」
カトリーヌはやれやれといった感じに立ち上がって、ルビアス王子に手を差し伸べた。
「まず立ち上がり、体勢を整え下さい。ルビアス王子」
「そっ、そうだな」
ようやく自分が格好悪いことになっていることを認識したルビアス王子は顔を赤らめてカトリーヌの手をとった。
「しかしなんでまた聖獣が俺に? 俺は魔導師なんかじゃないぞ」
「ルビアス様は魔導師がお似合いです」
聖獣バルカンが言う。
「いやあ。お似合いといわれても魔法に関してはたいそうな知識も技術も俺にはそんなにない。どちらかと言えば剣や武術の方が好きなんだが」
「そもそもなんで? どうして聖獣が新たに人間界にやって来るの? だって魔王は倒したじゃない」
「そこだよ、エリザベート。君は分かっていない。じゃあなぜそこの犬はかえらない?」
二人と一羽はジスを見た。
「ルビアス王子。私はもうエリザベートじゃないんです。普通の……。ただの人間に農園主のカトリーヌとなったのです」
「勇者は辞めたのか?」
「魔王を倒してその役目は終わったのです」
「カトリーヌ。まだまだ生き残りの魔王の手下どもが暴れている。困っている者はたくさんいるというのに……」
ワナワナとカトリーヌは体を震わせた。
「私の代わりになる勇者が現れたら、証である聖剣エクスカリバーを引き継ごうと思っているのです。……私はもうほとほと疲れ果てました」
エリザベートは悲しげに視線を床に落とし、睫毛を伏せた。
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