第十話 顔馴染み

「いやー。さすがジス様ですね」


 目の前の火の鳥がしゃべった。


「いつからだ? お前、気配も姿も完全に消えていたから分からなかったぞ。能力が上がったのか」


 ジスが火の鳥に話しかけると

「いやあ、ちょっとはつよくなりましたかねえ」と、火の鳥が笑って照れた。


「ジス。この子って聖獣だよね?」

「そうだ。こいつは魔導師にくっつくことになっている」

 

 ルビアス王子は、鳥と犬が仲良くお喋りする滑稽こっけいな様子を口をあんぐり開けて床に尻もちをついたまま眺めていた。


「知り合いなの?」

「まあな」

「知り合いも知り合い。かなりな旧知の仲です。天界ではジス兄さんにはえらいお世話になりました」


 ――天界。

 天上世界。


 そこは聖獣が住む世界。


 生きとし人が入りこめない世界。


「ワタクシ、名前を火の鳥のバルカンと申します。以後お見知りおきを。漆黒の勇者エリザベート様」


 火の鳥バルカンはニコォっと笑った。


「かっ、可愛い。……思わずぎゅってしたくなるわ」


 エリザベートはバルカンの荘厳でも人懐っこい雰囲気に胸がキュンッと高鳴った。

 大好きな愛馬と接する時のように――。

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