応援コメント

04_概念と実体のアンサンブル」への応援コメント


  • 編集済

    初めまして。
    この度は『ローテーション批評企画』にご参加いただきありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。

    一万字と少しを拝読させていただきました。
    まずは良かった点から書きます。やはり世界観が面白かったです。常識さえも逸脱した世界観は読者を置き去りにするリスクがありますが、本作はある程度の丁寧さで以て表現されていた印象です。他にもセンスを感じさせる設定や固有名詞で世界観が彩られており、作品の色が序盤から安定していたように感じました。それに伴い、本作の持つ哲学的な側面が柔和に描かれていたのではないかと思います。登場人物たちのやり取りも適度な軽さがあり、いい意味で「二人だけの世界」が展開されていました。

    気になった点は一つ、描写についてです。
    豊富な語彙と言い回しで世界観が語られる一方で、現状では読解をかえって難しくさせている部分が多々ありました。原因としては場面の説明が、主観的すぎることが挙げられます。一人称作品なので当然ではありますが、もう少し主人公に周囲を客観視させてもいいのではと思います。たとえば本作は「完全に空に覆われた世界」というのが肝でしょう。ですが、そのことの表現が序盤ではもどかしくもあります。駅の線路の場面では現象の説明は丁寧なのに、主人公はそれの意味することからはあえて目を背ける。伏線とも考えられますが、やや不自然ではありました。一言、「空という名の球体に閉じ込められている気分がする」くらいの感想を述べてもいいのかなと個人的には思います。

    それに関連して、場面の解像度を上げることも提案します。現状でも状況把握は可能ですが、折角ならもっと詳しく書き込んでもいいのではと。ここまで読んだ限り、作者様には十分な筆力があることが窺えました。少し意識を向けるだけで描写は化けるはずです。尤も「本作においては、今のスタンスを貫く」というのであれば、無理に解像度を上げる必要はありません。

    以上になります。
    作者様の創作活動の一助となれば幸いです。

    作者からの返信

    反応が遅れ申し訳ありません。この度はお読みいただきありがとうございました。
    良かった点の方は、エントリー時に敢えて記載しなかった哲学的な側面まで汲み取っていただき、かつ魅せたいと思った部分をほぼ全て評価いただき大変嬉しいです。

    気になった点の方も金言でした。やはりというか、あれこれ込めすぎて難解になってしまった点は他の読み手様からも指摘いだたいたことがあります。今回はその原因と解消のヒントが見えてきました。おっしゃる通り主人公の主観に私自身が重なって描いているため、物語の全てを知っている私の理解度がそのまま主人公の理解度になり、客観的に世界を、世界への疑問を捉えなくなっているようです。「そうしないと世界がくっきり見えない」のかどうかはさておき、それとは別の弊害が出ていることに気付けていませんでした。
    筆力があると言っていただいたことに慢心せず、“少し意識を向ける”ポイントを見出して改稿したいと思います。
    重ね重ねありがとうございました。