第1179話、わたくし、『転生病』にかかってしまいましたの⁉【異世界編】

「──どう言うことだ、どうして俺様のチートスキルが、おまえらには通用しないんだ⁉」




『魔王城』(暫定)の広大なる謁見の間に響き渡る、この城のあるじの絶叫。




 しかし俺たち『狩人』のほうは当然のごとく、攻撃の手を緩めることは無かった。




「──ぐわっ⁉」


 本来鉄壁の防御力を誇るはずの『魔王』(暫定)様の魔法障壁を難なく打ち破り、雨あられと降り注ぐ無数の光弾。


「そ、そんな馬鹿な⁉ 俺の『チート結界バリア』を、この異世界レベルの魔法で突破できるなんて、一体おまえら何者だ?」


 ほんの数日前までは、この世界随一の権勢を誇っていたと言うのに、今やすべての部下を屠られて、自分自身も絶体絶命のピンチとなり、もはやなりふり構わずわめき立てるばかりの、他称『魔王』様。


 それに対して頃合いよしと、ようやく追撃を止めた僕は、


 ──『残酷なる名乗り』を、上げた。




「現代日本からの『転生者』だよ。──君と同様にね」




 一瞬何を言われたのかわからず、間抜け面を晒す玉座の男。


 しかし次の瞬間、血相を変えてわめき立て始める。


「お、おまえらも、転生者だと⁉ そんな馬鹿な!」


「どうしてだい? 君自身が現にこの世界に転生しているのだから、君以外の人間が転生できてもおかしくは無いのでは?」


「おかしいに決まっているだろう⁉ この世界の秩序を──特に、『現代日本からの転生』を司っているのは、文字通り創造主であられる『なろうの女神』様なのであり、俺は彼女の依頼によりこの世界を支配し、新しい秩序を創ろうとしているのであって、そのためにこそチートスキルを与えられたのであり、そんな『なろうの女神』の御威光に逆らって、俺の覇道の邪魔をしようとしているおまえらが、『女神の恩恵』であるチートスキルを使えるわけが無いだろうが⁉」




「ああ、元々ぼくら『狩人』は、現代日本にいた頃から、この程度の異能チカラは──あんたの言うところの『チートスキル』は、使えたんだよ」




「──なっ⁉」




 僕の更なる『告白』に、今度こそ完全に言葉を失ってしまう『魔王』(暫定)様。




「君たち『なろうの女神絡みの転生者』たちの横暴に、異世界側の支配層がついに我慢の限界を迎えて、独自に召喚術を使って現代日本から、元々君らの『チート能力』に匹敵する力を有する僕らを召喚したのさ。──何よりも、君たちのような『なろうの女神絡みの転生者』を狩るためにね」




「──うっ⁉」




「でもまあ、普通に考えたら、至極当然の結論じゃ無いの? チート能力を有する『転生者』を狩ろうと思うのなら、同じ『転生者』こそを使おうとするのは」




「──ううっ⁉」




「いやあむしろ、こっちは大助かりだよ。現代日本においてこんな力を持っていると知られれば、『異端の存在』として排除されかねないので、自分の『正体』を知られないように息を殺して暮らし続けていたところ、こうして異世界に召喚してもらったお陰で、思う存分力を行使できるようになるなんて!」




「──うううっ⁉」




「しかも力を使えば使うほど、『世界の恩人』とか『正義の味方』とか『救世主』とか『勇者様』とか呼ばれて、感謝してもらえて、富も権力も思いのままにできるなんて、もうやめられまへんわw(いきなりの関西弁)」




「──ううううっ⁉」




「それもこれも、あんたら『なろうの女神絡みの転生者』の皆様が、これまで手にしたことの無かったチートスキルなんて与えられて有頂天になって、女神に言われるままに好き放題して、この世界を大混乱に陥れたお陰だよな? いやあ、女神様とあんたら間抜けな転生者どもには、感謝感激雨あられだよwww」




「──ふっ、ふざけるなっ! 俺たちはこの世界を司る女神様の意を受けて、文化文明が大きく立ち後れていて、過酷な身分制度に苦しめられている下々の人たちを解放しようと、富と権力を独占している支配者たちを懲らしめているだけじゃ無いか⁉」




「あはははは、下々の農奴や労働者階級の解放のために、正当なる支配階級や資本階級を排除するって? どこかの歪んだ『主義者ゴミュニスト』サマの思想そのものだな? あんたらのやっていることは、自由な市場経済をぶっ壊して、自分たちに都合のいい発展性皆無の国家計画経済を導入して、自分たちが新たなる『独裁者オウサマ』になることだろうが? ──なあ、『魔王』様? それとも『書記長』とか『国家主席』とか『将軍様』とか呼ばれるほうがお好みですか?」




「──人のことを勝手に、『魔王』とか呼ぶんじゃない! そんなものはこの世界の『旧支配者』どもが、自分に都合の悪い新勢力を貶めようと、いかにも『民衆の敵』であるかのように『レッテル貼り』をしているだけだろうが⁉ むしろ俺たちのほうがこの世界のあるじである『なろうの女神』様の意を汲んだ、『正義の勢力』なんだ!」







「はあ? 『なろうの女神』って、そんなものだろうが?」







「………………………へ?」




 その僕の『ほんの一言』が、それ程想像の埒外だったのか、茫然自失と立ちつくすばかりとなる、『魔王』(暫定)様。





「いやそもそも、『異世界転生』なんて有り得るはずが無いんだ。僕も君も、自分が『現代日本人の生まれ変わり』だと『妄想』しているだけの、純粋なる『この世界生まれの人間』に過ぎないんだよ」


「……何を、おまえは一体、何を言っているんだ?」


「そもそも君は、自分がどうして『チートスキル』なんかを使えるようになったと思っているんだ?」


「そ、そりゃあもちろん、『なろうの女神』様に授けられたからに決まっているだろうが⁉」


「はあ? 何の説明にもなっていないよね、それって? 君の頭のレベルは『幼稚園児』並みなの? 『女神様が力を与えてくれたから、僕ちんはチートなんだ!』とかさぁw そんなの能無しWeb作家の作品の『なろう太郎系』主人公でもあるまいしぃwww」




「──おいっ、いきなり全方面に向かってケンカを売るのはよせよ⁉」




「……もう本作においてはうんざりするほど語り尽くしているから、今回は大幅に端折らせてもらうけど、僕たちはただ何らかの理由で、ある日突然『集合的無意識』とのアクセスに成功しただけなんだ。これによって『チートスキル』が可能になると同時に、『現代日本人としての記憶と知識』もインストールされて、自分のことを『現代日本人の生まれ変わり』だと認識することになったけど、君たち『自然発生派』のほうは、『なろうの女神様によって転生させられてチートスキルを与えられた』と言った『記憶シナリオ』であったために、『チートスキルで俺様異世界無双!』パターンを邁進し、この世界に多大なる迷惑を及ぼすことになったので、僕たちのような、この世界の『転生問題』の解決を担っている『聖レーン転生教団』によって人為的に『集合的無意識』とアクセスさせられて、『元々現代日本においてチートスキルを有していた』と言う『記憶シナリオ』をインストールさせられた『人工転生勇者派』が、君たちを根絶やしにする『狩人』として生み出されたって次第なんだよ☆」

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