第911話、わたくし、『女神様にお願い♡』ですの⁉(後編)
「──ところで、単純に世界同士に優劣をつけるとしたら、どのような世界が最も強く、すべての世界同士の間で戦争を行った場合に、勝ち残れると思うかい?」
な、何だ、こいつ、またいきなり妙ちきりんなことなんか、聞いてきて⁉
「……そりゃあやはり、剣と魔法のファンタジーワールドのように、魔法とか超能力とかが広範に使われている世界なのでは?」
「いいや、むしろ現代日本のような、魔法とか超能力とか言った非常識極まるものなんて皆無の、何の変哲も無い、『普通の世界』こそが最強なんだよ」
──ふ、普通の世界こそが、最強ですって⁉
「どうして、そうなるのよ⁉」
「──もしも、真の意味において『神様』なる者が存在するとなると、それはこの世界を始めとするすべての平行
「……え?」
いやだからどうしておまえは、こうも立て続けに、とんでもないことばかり言い出すんだよ⁉
「夢とは人の無意識の具現であり、ある意味『世界観』そのものだと言えるので、ありとあらゆる世界を無限の夢として──すなわち、ありとあらゆる人々の『世界観』そのものを見ている存在こそが、神様と言えるんじゃ無いかな?」
──なっ⁉
「か、神様がすべての人間の『世界観』を夢見ているって、どうして神様が、そんなことをしているのですか?」
「それこそが、神様の正体だからだよ」
「……神様の、正体?」
「もしもこの世界が神様が見ている夢だとして、神様が目を覚ました時、本当にそこにはその『神様
「何言っているの⁉ 話が完全に矛盾して、破綻しまくっているじゃないの⁉」
「だから最初から言っているじゃ無いか、神様なんてけして存在せず、世界と言うものは人の無意識の集合体に過ぎないって」
「──いやだから、もう何が何だか、わけがわからないよ⁉」
「だったら、もっとわかりやすく説明し直してやろうか? 例えばこの世界は神様なんかでは無く、ちゃんと実在する人物である、『田中さん』が見ている夢だと言うことにしよう」
「何でいきなり、田中さんなんだよ⁉」
「田中さんは神様では無いので、目覚めたら当然のごとく普通の世界の中にいることになって、先ほどのような矛盾や破綻は無くなるよね」
「いや、どうして神様でも無いただの人間である田中さんが、この世界そのものを夢見るなんて、それこそ神様同然のことをしでかせるんだよ⁉」
「そりゃあ当然じゃん? 確かに僕らにとっては『唯一無二の現実世界』だけど、田中さんにとっては『単なる夢』に過ぎないだけの話で、たとえ『夢の世界の中の住人にとってはれっきとした現実世界』であろうとも、彼が目を覚ますとともに、文字通り夢幻のように消え去っても、何もおかしく無いだろう?」
「──‼」
「つまり、我々の世界は、『田中さんの世界』に
「……世界が、負けた? ──それも、単なる夢として、壊されてしまったですって⁉」
「もちろん、田中さんの世界だって、けして安泰とは限らないんだ。この世界が夢である可能性があるのと同様に、田中さんの世界が夢である可能性も、また否定できないからね。──さて、田中さんの世界を夢見ているのは、果たして『田中さん自身』でしょうか?」
「──ああっ! そうか、そう言うことか⁉」
「そう、確かに僕らの世界にとって、田中さんは『神様』みたいな存在と言えるけど、絶対的な『真の神様』なんかじゃ無いんだ。なぜなら、田中さんの世界を夢見ている存在がいるかも知れないことも、また否定できないのだからね。つまり、人間が無限にいれば、それぞれが無限の世界を夢見ている可能性があるわけで、実は真の意味での『神様』と言うものは、そんな無限の人間の『夢を見るという行為』の集合体であり、真の意味での『世界』と言うものは、人々の無数の
「となると、あなたがさっき言った、『最強の世界は、ごく普通の現実的な世界』というのは……」
「『夢』──ここではまさしく、『夜見る夢』と『人々の願望』との両方の意味合いを含んでいるんだけど、この『夢』という抽象的で非常識なものから、最もかけ離れていて、具体的で常識的であるほど、誰かに『夢として見られること』が無く、『最後に目覚めた時に待ち構えている世界』になる可能性が高いからだよ」
「そ、そうか、『夜見る夢』も『人の願望としての夢』も、どうしても現実から乖離した非常識なものになりがちだから、現実的かつ常識的であればあるほど、『神様が見ている夢』である可能性はほぼ皆無となり、『最後まで壊されることが無い』──すなわち、『世界同士の戦い』において、『最後まで勝ち残る』ことになるってわけですか⁉」
「つまり僕が最強のスキルと見なしている、『世界を壊す力』とは、ありとあらゆる異世界において、『不思議現象』をすべて消滅させて、現代日本同様の常識的な世界にする力なんだ」
「……原則的に『何でもアリ』の異世界を、現実的かつ常識的な世界にしてしまう力こそが、実は『最強のチートスキル』だったなんて」
「これって(メタ的に本作の作者の流儀に基づいて言い直せば)、まさしく神様やすべての平行世界の具現とも言える、いわゆる『集合的無意識』とのアクセスを、全面的に遮断するわけであり、どんなに強力なチートスキルであろうとも使えなくなってしまうからね。いかなるチート転生者だろうと恐れるに足らぬし、そいつらが
「……なるほど、確かに『最強のチートスキル』だわ」
「──と言うことで、あらゆる『なろう系
「──おいっ、何で『異世界』に『サクヒン』なんて、いろいろな意味でヤバいルビなんかをつけるんだよ⁉」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます