第703話、わたくし、『夫婦別姓』はダメですが、『旧姓の公的使用』は認めますの⁉(前編)

ちょい悪令嬢「──いやあ、やはり優秀な方は、『性別』なんて関係ありませんね! 別に国会の男女格差なんて是正する必要は無いし、『クオータ制』の導入なんてもっての外でございます。どんなに絶対数が少なくても──いやむしろ、少なければ少ないほど、女性にとって国会議員になることがとてつもない『狭き門』であるほど、とんでもなく優秀な女性が議席を勝ち取ることができるのです! やはり日本の国会及び社会制度は正しかった! 何せ、世界で最も『識字率』の高い超文明国家ですからね、『男女格差』にもちゃんと意味があったのです!」




メリーさん太「……あ、あの、どうしたの? のっけからいきなり、無茶苦茶熱弁をぶち上げて、なんかジェンダー的に、無茶苦茶なことを言い出したりして?」




ちょい悪令嬢「わたくしはただ、日本国の女性は素晴らしいと! 中でも、たとえ世界的に少数であろうとも、日本の国会の女性議員は最高だと! 心の底から叫びたいだけなのです!」


メリーさん太「──いや、叫ぶなよ⁉ 一体何がそれ程までに、あんたを駆り立てているんだ?」




ちょい悪令嬢「『夫婦別姓』問題、です」




メリーさん太「へ?」


ちょい悪令嬢「これに一応の解答が、示されたのです」


メリーさん太「はあああああああああああああああああ⁉」


ちょい悪令嬢「ね、びっくりでしょう?」


メリーさん太「解答が示された、って……」


ちょい悪令嬢「まあ、あくまでも『一応のところ』、ですけどね」


メリーさん太「いや、一応でも何でも、すげえよ! 『夫婦別姓』の法制化と言えば、現在日本中を騒がせている『ジェンダー四天王』における、最強の問題と言っても、過言では無いだろう⁉」


ちょい悪令嬢「……いや、『ジェンダー四天王』なんて、誰も呼んではいないと思いますけど?………………ちなみに、後の三つは何でしょうか?」


メリーさん太「あんた自身がさっき言った、国会等における『男女格差の是正』に、『LGBTの保護』に、『同性婚の法制化』…………かな?」


ちょい悪令嬢「何で、疑問形なのです?」


メリーさん太「いやほら、あのエセ人道主義者どもときたら、いくらでもイチャモンをつける気満々なんだから、これからもいろいろと新たなる『四天王』が出てくるかも知れないし、『LGBTの保護』と『同性婚の法制化』は、一緒くたに扱うべきかも知れないし、あんたがいつも言っているように、『男女格差の是正』と『LGBTの保護』とは、お互いに矛盾していたりもするしで、果たしてこの四つで『ジェンダー四天王』と名乗っていいのかどうか、自信が無くてさあ」


ちょい悪令嬢「『四天王』内で、仲違い等があるのは、むしろお約束では?」


メリーさん太「──誰も『魔王退治』系のサブカル作品のお約束なんか、聞いてねえよ⁉」


ちょい悪令嬢「まあ確かに、『夫婦別姓』がジェンダー問題において、最強クラスの難題であることに、異論はありませんけどね」


メリーさん太「他の三つは、それこそ本作において、これまで何度も何度も、けちょんけちょんに論破してきましたからね」


ちょい悪令嬢「あら、夫婦『別姓』制度の法制化であれば、今からでも完璧に全否定できますけど?」


メリーさん太「え? 『夫婦別姓の制度化』について、一応の解答が示されたんじゃなかったの? それとも『夫婦別姓なんて絶対認めない』といった方向で、最終的決着が図られることになったとか?」


ちょい悪令嬢「『夫婦別姓』はともかく、『旧姓の公的使用の法制化』については、非常に前向きかつ有力な提言がなされたのですよ!」


メリーさん太「……どこが、違うんだよ?」


ちょい悪令嬢「全然違いますよ! 『夫婦別姓の制度化』のほうは、夫婦でありながら別々の姓を使用することを『推奨』しているみたいで、穿った見方をすれば、日本国における『夫婦の分断』を目的にした破壊工作のようにも見なせますが、『旧姓使用の法制化』のほうは、家族制度はもちろん、日本の社会システムの根幹をなす『戸籍制度』が健在のままで、現在おもに女性の皆様から出ている、『旧姓の継続使用』のご要望を、完璧に応えることができるのですよ!」


メリーさん太「何と、『旧姓使用派』の願いを完璧に叶えられるって、どんな離れ業なんだよ⁉」




ちょい悪令嬢「結婚等で新たに入籍した戸籍に、旧姓を併記できるようにするだけです」




メリーさん太「………………………へ?」


ちょい悪令嬢「後は、役所に届け出るだけで、ほぼ無条件で自動的に、公的に旧姓を名乗ることができるようになります」


メリーさん太「──いやいやいやいや! 戸籍に旧姓を記入するだけで、現在最も困難を極めている最強のジェンダー問題が、あっさりとクリアできるなんて、そんな馬鹿な⁉」




ちょい悪令嬢「できますよ? 本当に旧姓が使用できなくて困っているのか、実は『外国勢力の工作員』であるのかは知りませんが、主に女性の皆様からお寄せいただいているご要望は、①結婚しても旧姓を使い続けたい、②それを単なる通名では無く公的に認められたい、③その際の手続きを極力簡単にしたい──ですので、新たに入籍後の戸籍に旧姓を併記できるようにして、結婚等をしようが公的に旧姓使用を認めて、民間企業や研究機関や病院や金融機関等も追随するようにさせれば、旧姓を役所等の公的場面や職場や病院や銀行等々で使用したい場合は、もはやこの時点でオールクリアされているし、手続きについても、役所に結婚時に提出する婚姻届に、新たに『旧姓の継続使用を希望』等と記入する欄を設けるだけで、自動的に旧姓を使い続けることができるようにすればいいのですよ」




メリーさん太「……あれ、本当だ? 大体これまで『自称ジェンダー』勢が言っていたことが、ほぼすべて解決してしまったぞ?」


ちょい悪令嬢「それだけではございません、これには更に『副産物』があるのです」


メリーさん太「副産物、だと?」




ちょい悪令嬢「やはり婚姻後改姓することにおけるデメリットして、『主に女性ばかりが、婚姻という最重要個人情報が、名字の変更によって広く世間に知られてしまうのは、深刻なるプライバシーの侵害だ!』などと、自称人道主義者どもが難癖つけ始めたところですが、絶対こいつら自身は、結婚とは何の縁もない『さびしんぼう(w)』ばかりだぜ? 普通結婚して姓が変わるなんて、めでたいことじゃん、女として誇らしいことじゃん。むしろ自分の身の回りの既婚者から誇らしげに、『あてくし、今度結婚して鈴木から佐藤に姓が変わりましたの♡』とか自慢げに当てつけられて、『さびしんぼう(w)』としては非常に悔しかったもんだから、夫婦円満で幸せな家庭を破壊しようとして、自分にはまったく無関係な『夫婦別姓制度』をごり押ししようとしているんだぜ?」




メリーさん太「──余計なことは言わないでいいから、その『副産物』ってのを、さっさと述べやがれ!」


ちょい悪令嬢「おっと、失礼。──あのですねえ、いきなり姓が変わることによって、プライバシーの侵害的に、非常に肩身が狭くなるのは、世間で言われているように、女性のほうのですよ」


メリーさん太「……あー、そういうこと」




ちょい悪令嬢「ええ、結婚適齢期の男性が改姓する理由って、ほとんどは『婿養子になった』こと以外にはあり得ず、『結婚の事実』どころか『婿養子である』という、非常に重大でできればあまり知られたくない個人情報が、白日の下にさらけ出されてしまうのです」




メリーさん太「う〜ん、これもある意味差別的な思考かも知れないけれど、やはりこう言ったことは、男性のほうがダメージがでかいよな?」


ちょい悪令嬢「事実なんですから、胸を張って言っていいんですよ。………何か文句有るか、エセ人道主義者ども?」




メリーさん太「──だから何でもかんでも、ケンカ腰になるなよ⁉」




ちょい悪令嬢「でもですねえ、もしも『新たに入籍した戸籍への旧姓併記』方式が正式に採用されたならば、たとえ男性が『婿入り結婚』しようとも、知らん顔をして旧姓を使い続けることによって、婿養子になったというできるだけ他人には知られたくない個人情報が拡散してしまうことを、ほぼ完璧に防止できるのですわ♡」




メリーさん太「──‼」







(※後編に続きます)

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