第689話、わたくし、作品として面白ければ、時系列的矛盾くらい許容しますの♡(前編)

ちょい悪令嬢「──いやあ、『Vi○y』の最新話は、良かったですねえ。やはり『面白さ』と言うのは、理屈ではありませんでした。『考えるんじゃない、感じるんだ!』でございましたわ♫」




メリーさん太「……おい」




ちょい悪令嬢「大体アニメって、元々『動画』と呼ばれていたくらいだから、何よりもが高水準だったら、それだけで傑作と見なされるべきなのですが、最近では作画技術が格段に向上したために、的にはピカイチなのに内容はダメダメといった駄作も少なからず存在していて、油断できないのですわ」


メリーさん太「おい」


ちょい悪令嬢「特に物議を醸したのが、去年の秋期のオリジナルアニメ『戦犯二作』で、作画が高レベルだけでは無く前評判も上々だったので、その内容の期待外れっぷりには、ネット上等で非難囂々となる有り様でございました」


メリーさん太「おいったら」


ちょい悪令嬢「まさにそのメインスタッフさんが、性懲りもなく畑違いのアニメ脚本を書かれた新作と言うことで、怖々と様子見を続けていた『Vi○y』ですが、最新第4話まで見終えたところ、どうやら今期最高レベルの高作画に見合った内容であったようで、一安心でしたわ☆」




メリーさん太「──おいっ、いい加減にしろ!」




ちょい悪令嬢「……何ですかメリーさん、いきなり大声を上げたりして?」


メリーさん太「どうしてまたしても、『雑談』から始めるんだよ? 今回こそ、『本題』に入るんじゃ無かったのか? まさか、前回の轍を再び踏んでしまうつもりじゃないだろうな?」


ちょい悪令嬢「──おっと、いけない。そうそう、そうでした。読者の皆様に、是非ともお伝えしなければならないことがあったのです!」


メリーさん太「……だからその、伝えなければならないことって、何なんだよ?」




ちょい悪令嬢「──実はわたくし、すっかり騙されておりましたの!」




メリーさん太「は?」


ちょい悪令嬢「今更になって、ミステリィ小説のセオリーの奥深さに、気づかされるとは」


メリーさん太「……ええと」


ちょい悪令嬢「さすがは日本最大の出版社の誇る、文芸第三出○部、心よりお見それいたしましたわ♡」


メリーさん太「あ、あの……」


ちょい悪令嬢「そうか、このために、このためだけに、あの『鉄の掟』はあったのですね⁉」




メリーさん太「──あーもう、一体何が言いたいんだよ、あんたは⁉ もっとわかりやすく説明しろよ!」




ちょい悪令嬢「す、すみません、あまりにも嬉しくて、つい興奮してしまいましたっ(汗)」


メリーさん太「『嬉しくて』? 騙されたのに嬉しいって、どういうことなんだよ?」


ちょい悪令嬢「ほら、わたくし先日、本作の作者が、西○維新先生の原作小説のファンであると、申したではないですか?」


メリーさん太「ああ、うん、『○語』シリーズに代表される、初期作品はほとんどすべて読んでいるんだっけ?」


ちょい悪令嬢「『○語』シリーズに限らず、『戯○』シリーズや、『人○』シリーズに、『世○』シリーズや、『刀○』に、『新本格魔法少女り○か』と、代表作はほぼすべて押さえております」


メリーさん太「──大ファンじゃねえか? ……え、そうだったの? 本作の作者って、それ程本格的に、西○作品の愛読者だったわけ?」


ちょい悪令嬢「おや、そんなに意外ですか?」


メリーさん太「……う〜ん、あれ程強烈な個性の作家様の御著作を、少なからず拝読していて、作風的にあまり影響を受けていないのが、不思議に思ってさあ」


ちょい悪令嬢「本作の作者の初期のミステリィ系の作品とかは、結構同傾向のものが見受けられるのでは?」


メリーさん太「『人魚の声が聞こえない』とか『ツンデレお嬢様とヤンデレ巫女様と犬の僕』か? あれって西○維新先生と言うよりも、入○人間先生や野○美月先生の、影響のほうが強いんじゃないのか?」


ちょい悪令嬢「どっちにしろ、現在の作品においては、もはや影響は『皆無』と言っても構わないでしょう」


メリーさん太「……それはまた、どうしてだ? つい最近も、初めて目にした『化○語』と『偽○語』のアニメ版を絶賛していたじゃないか? さっき言っていた『騙された』ことと、何か関わりがあるのか?」


ちょい悪令嬢「いえいえ、『騙された』こと自体は、むしろ『プラス』に作用したのですよ!」


メリーさん太「──もうあんたが何を言っているのか、全然わからないよ⁉ 何だよ、騙されたことがプラスになったって?」




ちょい悪令嬢「本作の作者が、あれ程話題を呼んだ『○語』シリーズのアニメ版を、これまで一切見なかったのは、さる理由から西○先生の作品自体から離れてしまったからなのです。──とは申しましても、西○作品そのものでは無く、『文三』のしきたりと言うか、ミステリィ作品全体に関わる根本的問題のせいですけどね」




メリーさん太「ミステリィ小説の根本的問題、だと?」


ちょい悪令嬢「もちろん、『ネタバレは絶対に許さない』ことですよ」


メリーさん太「──そんなの、ミステリィ小説にとっては、当然のことじゃん⁉」


ちょい悪令嬢「『単発物』、ならね」


メリーさん太「単発物って…………ああ、一話とか一冊とかで、ストーリーが完結するやつか」




ちょい悪令嬢「それに対して、いわゆる『シリーズ物』において、第1巻で明らかになった『謎』を、第2巻や第3巻で隠し通すことなぞ、果たして可能でしょうかねえ?」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「下手したら、第2巻の裏表紙に記されている『あらすじ』で、第1巻の致命的ネタバレが行われていたりしてね☆」


メリーさん太「……で、でも、シリーズ物だったら、仕方ないんじゃないのか? 新刊においては、それ以前の謎は、すべて解明しているのが前提なんだし」


ちょい悪令嬢「順不同で読まれる読者様には、配慮は必要無いとでも?」


メリーさん太「そういうのは、自己責任だろう?」


ちょい悪令嬢「──駄目なのです! ミステリィ作品においては、いかなるネタバレも許されないのです!」


メリーさん太「……だったら、どうすればいいんだよ?」


ちょい悪令嬢「隠す、のです」


メリーさん太「隠すって、何を?」




ちょい悪令嬢「各巻各エピソードで明らかになった、『重大なるネタバレ』ですよ。これらは、事件自体が完璧に解決されようとも、その結果作品そのものの世界観や人間関係が激変しようとも、それらから完全に切り離されて、秘匿され続けるのです。……そうですねえ、一例を挙げれば、『双子トリック』に見せかけて本当は『二重人格』だったとかいう、よくあるオチの場合には、続刊以降も何事も無かったようにぬけぬけと、『双子』として登場し続けたりします」




メリーさん太「──そんな、作品の世界観や人間関係にかかわってくる重要なネタバレを、いつまでも隠し通すことなんて、いろいろと『齟齬』が生じてしまって、絶対に不可能だろうが⁉ それにその『一例』とやらは、何なんだよ! 双子では無く二重人格であることが明らかになったのに、何で続刊以降も双子であり続けるわけ⁉」


ちょい悪令嬢「真相が二重人格だったからって、双子で無いとは申しておりませんが? 例えば双子の内のどちらか──場合によっては両方共が、二重人格であっても構わないではありませんか?」


メリーさん太「屁理屈こねるなよ⁉ ──ていうか、もしかしたら、ミステリィ作品のシリーズ物って、エピソードを重ねるごとに、そんな『屁理屈』ばかりになっているんじゃないだろうな?」


ちょい悪令嬢「──うっ⁉ ……じ、実はその通りでして、本作の作者が、西○先生の作品を含めて、ミステリィ小説そのものから離れてしまった最大の理由が、まさにそれだったりするのです」


メリーさん太「過剰なネタバレ防止のために、読者が離れてしまったんじゃ、本末転倒だろうが⁉」




ちょい悪令嬢「──ふっふっふっ、それがそうとも言えないのですよ。何せまさにこれぞ、作者様&編集者様&出版社様による、非常に素晴らしいご配慮であり、読者様を唸らせることすらも可能とする超絶演出であったことが、今回の『○語』シリーズアニメ版の、全話一挙配信において判明したのですからね♡」




メリーさん太「なっ⁉」







(※後編に続きます)

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