第690話、わたくし、作品として面白ければ、時系列的矛盾くらい許容しますの♡(後編)

メリーさん太「……え、こんな無理やりなネタバレ防止策が、読者や視聴者に対する、きめ細かな配慮であり、超絶効果的な演出だと?」




ちょい悪令嬢「先日も申しましたが、動画サイトの『ア○マTV』様で絶賛開催中の、『○語』シリーズのアニメ版の順次連続全話無料配信ですが、現在は主に羽○翼嬢を主人公にした、『猫○語』の【黒&白】が配信されているのですけど、そこで驚天動地の『真相』が明らかになったのです!」




メリーさん太「今更になって驚天動地て、原作は読んでいたんじゃないの?」


ちょい悪令嬢「生憎『猫○語』は、【黒】も【白】も未読だったのです」


メリーさん太「でもよう、羽○翼嬢については、すでにアニメ版のほうも視聴済みの、元祖『化○語』(ファーストシーズン)とその続編の『偽○語』において、十分に語り尽くされていたのでは?」




ちょい悪令嬢「わたくしもそう思っていたのですよ、羽○嬢についても、彼女に取り憑いている怪異である『猫』のことも、すでにすべて知り尽くしていると。──しかし『猫○語』の【黒】のアニメ版を初めて見ることによって、二人の関係性はもちろん、羽○翼嬢個人に対しても、これまでの認識をすべてひっくり返されてしまったのです!」




メリーさん太「ど、どうしてだよ? むしろ【黒】こそは、『猫』に関するファーストエピソードだろ? それ以降の、羽○嬢と『猫』との関係がすでに確立済みのエピソードを何本も見た後で、認識が変わるなんてことがあり得るのか⁉」




ちょい悪令嬢「この点についてあまり詳しく述べますと、それこそ『ネタバレ』になってしまいますので、これ以上はやめておきますが、何ゆえ本作の作者がこうもびっくり仰天して、羽○翼嬢──ひいては『○語』シリーズそのものを、『惚れ直した』のかの原因については、ここで述べておいても構わないでしょう」


メリーさん太「……原因て、それがさっき言っていた、『配慮』や『演出』のことか?」




ちょい悪令嬢「ええ、一つには、この重大なる謎の真相そのものを、時系列的に後に位置づけられたエピソードにおいても、あたかも『無かった』かのようにして、完全に秘匿していたことによって、初めて触れる者には驚愕とともに、かつてないほどの『感動』を生じさせるように仕組まれていたことなのです」




メリーさん太「驚愕だけでなく感動さえも与えただと? ……確かにそれ程重要なネタバレなら、少々の齟齬や矛盾が生じようが、ずっと隠し通していたのも納得だな」


ちょい悪令嬢「ひょっとしたら、むしろ謎が解明した際のインパクトを最大限に高めるためにこそ、あえて齟齬や矛盾を生じさせるような強引なる『ネタバレ防止』をしていたりしてね☆」


メリーさん太「え、それって、どういうこと?」


ちょい悪令嬢「ほら、これまで何度も何度も申してきましたが、羽○さんが関わっているエピソードって、時系列がやけに複雑入り組んでいて、本来最初に持ってくるべき『猫○語』の【黒】が、かなり後のほうのエピソードに位置していることですよ」


メリーさん太「そ、そういえばッ!」




ちょい悪令嬢「つまり、羽○さんと『猫』との最も重要な事件イベントは、シリーズが始まった時点ですでに済んでいて、二人の関係性は確固として定まっているものと、数々の『後日談』でイメージづけておいて、いざ本当に『最も重要な最初の事件なれそめ』を作品化した時、これまでの認識をひっくり返すことで、本来の時系列のままのパターンに比べて、より強烈に印象づけることを成し遂げたといった次第なのですよ」




メリーさん太「な、なるほど、こういったあえて時系列を複雑に前後させるといった手法は、実はかの『進○の巨人』においても効果的に多用されているからな」




ちょい悪令嬢「いやあ、ほんと、この点については、非常に勉強になりましたわ。本作の作者のこれからの作品づくりに、大いに役立つことでしょう」


メリーさん太「──おっ、さすがの『イキリ作者』も、『○語』シリーズの原作者の西○維新先生と、アニメ版の新○昭之監督という、超天才に対しては、素直に帽子を脱げるってわけか?」




ちょい悪令嬢「ところがどっこい、これって実は本作の作者自身が、以前より提唱していたことだったりするのですよ♫」




メリーさん太「……へ? 今回アニメ版を初めて見て、びっくり仰天かつ大感動した演出技法を、前もって会得していたって? 何その、完全に矛盾した言い様は?」




ちょい悪令嬢「まず、あえて各エピソード間の時間の前後関係を無視することによって、物語全体を更に魅力的にするといった手法は、『シリーズ作品における各エピソードは、それぞれが独立した「異世界」のようなものであり、実はそれぞれの間には時間的前後関係は無いのはもちろん、お互いに少々の齟齬や矛盾があろうが何も問題は無い』という、得意の多世界解釈量子論に則った見解ですよ」




メリーさん太「……あ」




ちょい悪令嬢「具体的に申せば、『いくらループを繰り返そうが、八月はけしてエンドレスでは無く、いつかは必ず来る九月から顧みれば、すべては終わった話であり、ループの各周回には時間的な前後関係なぞ無いのだ』と言う、いつもの『決まり文句』ですわ☆」


メリーさん太「──確かにそのようなことを言っていたけど、特定の作品を全否定するような例を挙げるのはよせ!」




ちょい悪令嬢「『○語』シリーズにしても『進○の巨人』にしても、演出の都合上あえて時間的前後関係を入れ換えるという、ある意味『反則技』を頻繁に活用しておりますが、最終回を迎えてしまえば、おそらく読者や視聴者の記憶の中では、すべては時系列順となっていると思われ、原作の連載時やアニメ版の放映時において、時系列をいじくって各エピソードを効果的に盛り上げたこと自体は、すっかり忘れ去られてしまっているでしょう」




メリーさん太「……なるほど、すべてが終わってしまった後になって、『あそこの時系列は逆だったよな』とか、突っ込むやつなんて、それこそ重大な設定ミスでも無い限りは、ほとんどいないだろうな」


ちょい悪令嬢「『進○の巨人』なんて、今行われているアニメ版の全話一挙無料配信を見ると、何かと言うと回想シーンばっかりなのにねw」


メリーさん太「と言うことは、本作の作者としては、時系列が複雑に入り組んだ作品に関しては、別に否定的では無いってことか?」


ちょい悪令嬢「演出上必要なら、むしろ大いに推奨するところです」


メリーさん太「……それで、さっき『まず』と言ったけど、他にも何かあるのか?」




ちょい悪令嬢「ええ、少々ネタバレ気味なのですが、羽○嬢と『猫』との複雑のようでいて実は非常にシンプルな関係性も、本作において『なろう系』作品全般に関して、これまで何度も何度も口が酸っぱくなるまで申し続けてきた、『本当に異世界転生やタイムトラベル等が行われているわけでは無く、あくまでも異世界や過去の世界に生まれつき存在している「現地の人間」に、集合的無意識を通じて、現代日本人の「記憶や知識」だけが脳みそにインストールされて、あたかも異世界転生や過去へのタイムトラベルが行われたかのようにに過ぎず、その際に何らかの肉体の変化が伴う場合においても、やはり集合的無意識を通じて別の存在の形態情報がインストールされて、いったんショゴスそのままに肉体を構成する量子を重ね合わせ状態にされた後、形態情報を書き換えられているに過ぎないのだ』によって、すべて論理的かつ現実的に説明できるのです」




メリーさん太「おお、確かに⁉」




ちょい悪令嬢「──と言うわけですので、何かと刺激の強い『○語』シリーズのアニメ版については、現在全話が順次無料配信中ですので、特になにがしかの創作活動に携われている方にとっては、作品づくりに役立つ突飛なアイディアや演習技術が山盛りとなっていることですし、是非ともご覧になることをお勧めいたしますわ♡」




メリーさん太「今回ネタバレ防止のために述べられなかった、最も肝心な『羽○嬢と「猫」との関係の真相』は、誰もがびっくり仰天なされるかと思われますので、どうぞご自分の目で確かめてみてくださいませ☆」

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