第449話、わたくし、オキナワの『狼』少年、ですの。(その7)
「……やはりこの沖縄には、プロ市民等の、外見上は日本人そのものなのに、実は『中つ国人』──いや、『異世界人』の工作員が、すでに多数潜入しているのか?」
『くくく、馬鹿め、我らの同志が暗躍しているのは、もはや
実際問題、てっきり自分の担任だと思っていた日本人の小学校教師が、いきなり『異国の潜入工作員』としての本性を現して、下品極まる
──返ってきた返事のほうは、とても聞き捨てならないものであった。
「……沖縄だけでは無いと言うことは、まさか」
『その通り、すでに日本そのものが、我らの掌中にあるも同然なのだよ』
「はあ? 確かにこの沖縄以外にも全国的に、政権奪取の可能性ゼロの野党議員や、もはや政権を叩くことしか能が無く若者から完全に見放されているマスコミや、評論家気取りの芸能人やスポーツ選手や、インチキ人道主義者や、プロ市民団体等々が、必死こいて他国の宣伝工作員として、日本のイメージ低下や、真っ当な大多数の国民の皆さんの『分断』なんかを、盛んに画策しているようだけど、TVやオヤジ&オバン向け週刊誌のような偏向メディアしか無かった、かつての情弱時代とは違って、今やネットによって居ながらにして、世界中のあらゆる情報をリアルタイムで参照することができるのだから、偏った思想や情報操作に騙されることは無く、むしろほとんどの芸能人やスポーツ選手等の『欺瞞ぶり』が暴かれて批判の的になっているくらいで、宣伝工作活動としてはまったく影響力を発揮できておらず、とても『日本を掌中に収めている』とは言えないんじゃないのか?」
それはあくまでも、至極当然な見解のはずだった。
しかし、目の前のオークの余裕の表情は、微塵も揺らぐことは無かったのだ。
『そんなことはないぞ? すでに選挙権を有する日本国籍所有者のうち三割ほどが、我々異世界の同志となっていおるのだからな』
「へ? 有権者の、三割って……」
それって下手したら、『国民投票において、
そんなんじゃ、日本そのものが、異世界人の思い通りになってしまうだろうが?
『おやおや、そのご様子では、どうやらお忘れのようだな』
「……忘れているって、何をだよ?」
『我々は異世界人と言っても、肉体丸ごとの『転移系』ではなく、精神体のみの『転生系』であって、某大陸や半島の潜入工作員とは違って、たとえ先祖代々の日本人であろうとも、精神的に憑依することで、身も心も完全に乗っ取ることができると言うことをさ』
………………あ。
そ、そうか、そういえば、そうだった!
僕自身、『昔懐かしホラー系SF映画』等を例に出して力説していたくせに、どうしてすっかり忘れ去っていたんだ?
……やはり、目の前にいきなりオークなんかが現れたものだから、平常心を失っていたのだろうか。
「と、と言うことは⁉」
『このまま行けば、あと半年もしないうちに、日本国民全員の、文字通りの「洗脳」が完了して、晴れて「中つ国日本自治区」の出来上がりってわけよ!』
……何……だっ……てえ……。
これじゃまるで、同じく僕自身が例に挙げた、共産主義等の外国のイデオロギーによる、『内からの侵略』そのものじゃないか⁉
「……うん? そのような転生者ならではの習性によって、どんどんとこの世界の人間を乗っ取っていけると言うのなら、沖縄で『米軍基地闘争』を装ったり、現在全世界的に展開している『黒人差別撤廃運動』を装ったりして、人々に対して密かに『洗脳工作活動』をする必要は、無いんじゃないのか?」
『おいおい、他でも無い「異世界転生経験者」である、おまえ自身が何を言っているんだよ? 異世界転生なんて超常現象を起こしてしまう者なんて、我々のようなファンタジーワールドにおいて、自発的に召喚術を行使できる者以外では、現在自分が存在している世界に常に不満を抱き、何かと現実逃避ばかりしている、典型的な「なろう系小説主人公予備軍」の皆様のような、「心の弱い」者に決まっているのであって、この現在の日本こそを自分の居場所だと心得て、何よりも絶対に揺るがない「自分の意思」と言うものを保っている、真の政治家や軍人等の「強き者」には、結局「逃げ」に過ぎない「異世界転生願望」なぞ微塵も無いので、異世界人の精神体が憑依することが不可能なのだよ。──はっきり言って日本人は大したもので、何と国民の大多数が、そういった「強い心の持ち主」ばかりなのだ』
へえ、そうなんだ。
確かに、敗戦後はしっかりと平和憲法を守り、世界有数の軍事力を有しながら、この数十年間一度も武力紛争を起こしたことが無く、経済大国でありながらけして奢らず、常に他国との協調関係を優先してきたんだから、世界における信頼も篤く、そりゃあ国民としても、日本人であることに満足し、愛国心も自然に育まれると言うものだ。
結局、変なイデオロギーに支配されているよその国に理想を見いだす輩なんて、自分自身が努力を欠いて人生に失敗したのを、国や社会や他人のせいにしている、『心の弱い』者たちばかりで、そんなのは例外的な少数派に過ぎないんだ。
「……そこまでわかっているんだったら、日本の精神的侵略なんてあきらめて、とっとと自分の国に帰ればいいじゃないか?」
『何を言うんだい、むしろそのためにこそ、「実働部隊」である、我々オーク先遣兵士がいるんじゃないか?』
──っ。
「ま、まさか、おまえら⁉」
『そうさ、どうしても我々同様異世界人として「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます