第447話、わたくし、オキナワの『狼』少年、ですの。(その5)
──皆さんは、これまでに見たホラー系SF映画では、一体どういったタイプのものが怖かったですか?
僕はやはりあれですよ、いわゆる『精神体型の宇宙人』なんかが、密かにじわじわと、地球人を乗っ取っていくやつ。
ほら、アメリカやイギリスの閉鎖的な田舎町で、子供たちがどんどんと『何者か』に乗っ取られていって、集団で街を支配してしまって、大人たちを奴隷化したり殺したりするってのがあったりして、むちゃくちゃ嫌な感じになったじゃないですか?
実際問題、自分の家族とか、昔から親しかった周囲の人たちが、ある日突然、まったくの『他人』のようになってしまったりしたら、あなたは正気を保てますか? 下手したら、世界そのものがイカれたんじゃないかと、大混乱に陥るんじゃありません?
想像してみてください、いつものようにテレビを見ていたら、すっかりお馴染みの国民的な人気を誇るニュースキャスターや
……何か、SNS上ではすでに、同じような状況になっている気もするけど。
まあ、ここまでお読みになればおわかりになるかと存じますが、こういった『精神体侵略型SF』というのは、冷戦まっただ中において西側のプロパガンダとして創られたものが多く、『宇宙人等によって身も心も乗っ取られていく』というのは、『共産主義に洗脳される』ことのメタファなのであって、子供たちが集団で教条主義化して、同じ村の大人たちを弾劾するなどと言ったシチュエーションなんかは、今は亡き北方の共産主義連邦共和国において、子供が実の親を『党』に密告して粛正させることを奨励していたことを、思い起こさせたりして。
つまり、それまで自由主義や資本主義を謳歌して大らかに暮らしていた、欧米や日本の大人たちが、『北』を崇拝する狂育者組織が支配している、公立学校等で洗脳された我が子によって、家庭内の『文化の大革命』を引き起こされて、『退廃主義者』として『自己批判』を迫られるようなものであろう。
そういえば、最近日本においても、子供が自分の親を『通報』する事案等が、増えてきたような気がするけど………………………う〜ん、まさかねえ?
……沖縄においては絶対に許されない、『黒人差別撲滅デモ』もそうだけど、何でも『人道主義』と言えばまかり通ると言わばかりの、『悪しき風潮』については、少々気をつけておいたほうがいいかもね。
──まあ、それはそれとして、どうして急にこんな話をしたのかと申しますと、実は現在、僕のすぐ目の前にもいるのですよ、
僕んちの庭先で、外見は小学校の担任教師そのままなのに、スマホに向かって日本語どころかまったく耳にしたことの無い謎言語でがなり立てている、中年男性が。
「△□◇☆◎×♫〆<〒♂♭────おっ、
「……
決定的瞬間を見られたというのに、少しも慌てたり悪びれたりすること無く、むしろいつも通りの穏やかな笑みをたたえながら、こちらへと振り向く担任教師。
……やはりこいつが、すべての黒幕だったのか。
「いやあ、さすがは『勇者ミハエル』、黄色オークの一般兵三匹くらいでは、足止めもできなかったか。お陰でこちらは『本国』から、大目玉を食らってしまったよ」
「……本国って、異世界のことですか?」
「うん? ああ、違う違う、あっちの大陸のお国のほうだよ」
「──⁉ た、大陸って、まさか『中つ国』⁉」
いやでも、さっきのは確か、『中つ国語』では無かったはずだぞ?
「おや、我々が『転生者』──すなわち、『異世界人の精神のみの憑依体』であることを、聞いていたんじゃないのか?」
「──ま、まさか、それって⁉」
「ああ、中つ国はおろか、半島の南北の両国も含めて、東アジア全体は、すでに我々異世界人によって、完全に乗っ取られているんだよ」
……何……だっ……てえ……。
あまりの驚愕の事実の発覚に、さすがの「おまえちょっと、小学生のくせに、達観し過ぎじゃないのか?」との評価も高い僕すらも、完全に言葉を失ってしまった。
「おかしいとは思わなかったのかね? いやしくも国連の常任理事国であり、人口を14億も抱え、GDPや軍事力に至っては、あのアメリカとほぼ互角の第二位を占めているという、押しも押されぬ指導的大国家が、共産主義などと言った前時代的な狂ったイデオロギーを信奉し、少数の党幹部のみの独裁による全体主義体制の
──っ。
そうか、そうだったのか!
中つ国の、とても現代国家とは思えない、すでに旧ソ連によって『失敗作』の烙印を押されている時代錯誤のイデオロギーや、横暴な世界侵略路線は、あくまでも異世界人に乗っ取られていたからだったんだ!
そりゃ、そうだよな。
ナチスのように血迷って世界征服でも目論んでいない限りは、まさかこの21世紀に、そのような横暴なやり方が認められるわけがなく、本気でそんなことをやろうものなら、第二次世界大戦時のドイツ同様、世界中から袋だたきに遭うだけだよな♫
……よし、ナイス。
これでもう、『中つ国』のことをボロクソにこき下ろそうが、目の前の腐れ外道を始めとして、その国家工作員どもを虫けらのようにぶち殺そうが、あくまでも『異世界人に乗っ取られていたのだ』ということにすれば良く、何の問題も無くなったぞ。
そう、我々自由主義国家の敵は、あくまでも異世界人なのだ。狂ったコミー思想に染まった、中つ国などでは無いのだ!
──というわけで、ついに次回は『メインヒロイン』も登場して、本格的な『異能バトル』を展開しますので、どうぞご期待のほどを♡
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