第358話、わたくし、軍艦擬人化美少女は、クトゥルフ神話っぽいと思いますの。(後編)

メリーさん太「実は、軍艦として擬人化された女の子たちって、最初から全員が全員、肉体がショゴスで構成されていたって、設定ことだったりしてね☆」


ちょい悪令嬢「……え、つまりは、元から人間では無かったってこと?」




メリーさん太「と言うよりも、それこそ実はショゴスこそが、あなたたち人類の始祖ではないかという説もあるくらいだし、一部の少女たちが、いわゆる『先祖返り』的に、ショゴスの性質を発現することだって、けして無いとは言えないでしょう?」




ちょい悪令嬢「ああ、そこら辺が、『クトゥルフ神話』的なわけね……」


メリーさん太「クトゥルフ神話オンリーでは、あざと過ぎると言うのなら、集合的無意識とか量子論とかを、混ぜ合わせてもいいわよ?」


ちょい悪令嬢「なっ、クトゥルフ神話に集合的無意識を、ミックスするですって⁉」


メリーさん太「そもそも、集合的無意識自体も、十分オカルト的だしね」


ちょい悪令嬢「……そ、それは確かに、そうだけど、集合的無意識とはあくまでも、他の世界や他の存在の『記憶や知識』を、別の存在の脳みそにインストールすることによって、『前世の記憶』を擬似的に形成して、異世界転生等の超常現象を、現実性リアリティを損なうことなく実現するものであって、少女の軍艦擬人化なんて言う、肉体の改造等の『物理的現象』を発生させるものでは無かったでしょう?」


メリーさん太「だったら、変化させるのは、『情報』だけにすれば、問題無いんじゃないの?」


ちょい悪令嬢「情報、って?」




メリーさん太「前回登場した『きたかみさん』みたいな普通の少女を、集合的無意識とアクセスさせて、肉体を構成する『情報』を書き換えることによって、分子レベルでショゴスへと先祖返りさせて、デフォルトで変幻自在な存在へと改変するというわけよ」




ちょい悪令嬢「じょ、情報を書き換えることによって、女の子の肉体を、物理的に改変するですって⁉」


メリーさん太「遺伝子だって情報なんだから、論理的に間違ってはいないでしょう?」


ちょい悪令嬢「いや、完全に、『屁理屈のごり押し』じゃん⁉ もう、それがOKだったら、『何でもアリ』じゃん! これまでの物理法則絶対主義と、完全に矛盾しているじゃん!」


メリーさん太「果たしてそうかしら? ──と言うわけで、ここで登場するのが、『量子論』というわけなの」


ちょい悪令嬢「へ? 量子論、て」




メリーさん太「これまで本編を始めとして、この作者の諸作品において、何度も何度も述べてきたように、量子というものは、常に『形ある粒子』と『形なき波』という相反する二つの性質を同時に有しているので、常態としての形や位置が決定していない、いわゆる『確率的存在』であるんだけど、それはまさに『形や位置が不定形』であるという、ショゴスそのものなのであって、量子論に則れば、ほんの一瞬後にも幼い女の子の右腕が、駆逐艦の砲門へとメタモルフォーゼすることだって、十分あり得ることになるの。つまり、そもそも少女の肉体に限らず、物理量の最小単位である量子によって構成されている、この世の森羅万象は、あくまでも論理的可能性の上では、まさしくショゴスそのままに、あらゆるものにメタモルフォーゼする可能性を秘めていることを勘案すれば、前回のエピソードにおける、各『魔法ナデシコ』たちは、場合によっては、『ショゴス化』が施されているものと思われるの」




ちょい悪令嬢「──だからそれは、あくまでも『可能性』の上の話であって、実際に女の子がショゴスみたいに、ホイホイ軍艦なんかに変身できるはずが無いのであり、やはり軍艦擬人化イベントを、現代日本を舞台にして行ったんじゃ、現実性リアリティもへったくれも無くなってしまうでしょうが⁉」


メリーさん太「ふふーん、だからそこはあえて、『逆に考えれば』、いいのよ」


ちょい悪令嬢「は? 逆に考えろ、ですって?」




メリーさん太「現代日本にクトゥルフ神話を持ち込むことによって、物理法則をぶち壊すのでは無く、むしろ逆に、ショゴスの不定形な性質を、量子論や集合的無意識によって論理づけることによって、クトゥルフ神話やその派生作品に、現実性リアリティを確立するわけなの!」




ちょい悪令嬢「──クトゥルフ神話を、現実的にするなんて、それこそある意味クトゥルフ神話ならではの『決め台詞』的に、世界の文学界に対する、最大の『冒瀆』じゃないの⁉」


メリーさん太「そう、そもそもの『間違い』は、文学界を始めとするすべてのクトゥルフ神話関係者が、ショゴスを──ひいては、クトゥルフ神話そのものを、人類の叡知の及ばない、『特異なる存在』と見なしていることなの!」


ちょい悪令嬢「クトゥルフ神話を特別視しなかったら、一体何を特別視すると言うのよ⁉」




メリーさん太「およそこの世に存在する限りは、妖怪だろうが使徒だろうが邪神だろうが、すべて量子で構成されているべきなのであり、特に不定形暗黒生物であるショゴスは、ほんの一瞬後にも無限の形態に変化し得る量子の集合体としては、むしろ理想的な性質を有しているとさえ言えるの。つまりショゴスは、量子の有する無限の変身能力を、意識的に調整オン&オフできて、メイドさんや謎の少女の姿をとっている際には、量子としての無限の可能性をオフにしていて、何かに変身する際には、それをオンにしているというわけなの」




ちょい悪令嬢「なっ、むしろショゴスこそが、量子論にとっては理想的な存在ですってえ⁉」


メリーさん太「どう? この理論によってこそ、物理法則に完璧に支配されている現代日本においても、軍艦擬人化美少女作品はもとより、いかなるクトゥルフ神話系の作品であろうとも、現実性リアリティを一切損なうこと無く、作成し放題となるってわけなのよ」


ちょい悪令嬢「……前回のエピソードって、たかだか『軍艦擬人化美少女たちによる異能バトル』程度に思っていたんだけど、実はそんな画期的なアイディアが、仕込まれていたなんて⁉」




メリーさん太「まあ、前回のテストケースにおいては、軍艦擬人化美少女を、『魔法少女』や『ショゴス』として捉え直した上で、どのような作品展開が望み得るかという、可能性を見定めることを目的にしていたのであり、それはそれで、これから先いろいろな展望が期待できるところだけど、たとえどんな路線をとろうとも、作品の根幹に量子論や集合的無意識といった『核』となるものを常に据え付けておけば、たとえどのような突飛な内容のものであっても、現実性リアリティを損ねることなく、何ら気兼ねなく作品づくりに邁進していけるの」














ちょい悪令嬢「……ところで、前回のエピソードは、あくまでもテストケースと言うことだったけど、一応これからのストーリー展開は考えているの?」


メリーさん太「実は、まだしかと固めていないからこそ、いろいろなアイディアがひしめき合っている状態にあるの」


ちょい悪令嬢「例えば、どんな?」


メリーさん太「『魔法ナデシコ』たちが相争っているのは、真に自分たちを従えることができて、しかも『疑似カリエンゲージ・システム』によって、ナデシコたちの力を最大限に引き出すことすらもなし得る、『提督』なる人物を奪い合っているからであり、実は『彼』にも、クトゥルフ神話的秘密が隠されていたりするの」


ちょい悪令嬢「ほう、それはまた、興味深い…………って、おい! 『疑似カリエンゲージ・システム』って、もしかして、『ケッコン(カr」


メリーさん太「──それ以上は、言っちゃ駄目なの!」


ちょい悪令嬢「……まあ、確かに、『艦○れ』においても、『深海○艦』なんて、もろにクトゥルフだしね」


メリーさん太「実は『艦む○』は、旧日本軍が極秘に開発した、ショゴス兵器だったとか?」


ちょい悪令嬢「──最後まで、虚○玄先生ネタかよ⁉ ていうか、とっとと本編の続きを上げろ!」




メリーさん太「まあ、冗談は置いといて、実は今回のテストケースにおいては何よりも、『女子中学生として現代に甦った、旧日本海軍の軍艦たちによる、クトゥルフ神話風異能バトル綺譚』てな感じで、これまでの『異世界転生』編と同様に、あえて現代日本を舞台にすることによって、軍艦擬人化美少女たちの、オリジナルの各種ゲーム等において設定されている、本来の性能以上の魅力を導き出すことこそを、主な目的にしているの」




ちょい悪令嬢「……なるほど、確かに軍艦擬人化美少女を、あえて現代日本において大暴れさせるという、ある種の『ギャップ萌え』を狙うわけですね、これは盲点でした」


メリーさん太「ギャップ『萌え』かどうかは、意見が分かれるところかと思うけど、やはりテストケースであるのなら、できるだけ思い切ったことにチャレンジすべきだと思うの」


ちょい悪令嬢「まあ、テストケースも結構ですが、何よりも肝心な本編のほうも負けずに、熱意をもって取り組んでいただきたいところですよね」


メリーさん太「……善処するの」


ちょい悪令嬢「確か、前回の本編の最終シーンは、巨大な武蔵むさしと化したアグネスちゃんの中に、わたくしが取り込まれて、『──さあ、これから一体、どうなるのか⁉』というところで、終わっていましたよね?」




メリーさん太「……次回は冒頭から、いきなり15年後に、物語舞台が跳躍ワープしたりして」




ちょい悪令嬢「──『エヴ○キュー』かよ⁉ ほんと、好きだな、『エヴ○』⁉」

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