第313話、【ハロウィン企画】わたくし、少女漫画界のレジェンドの生誕70周年を言祝ぎますの♡(その1)

 第三次世界大戦により、すべての文明が崩壊してから、およそ1200年。


 ネオトウキョウ、治外法権特区、シブヤ・ゲットー。


 蛸の月オクトパー、最終週──人呼んで、魔物の祝祭日、『ハロウィン』。




「探せ」


「探せ」


「探せ」




「──『悪役令嬢』を、探し出せ!」




「今宵は、ハロウィン」


「闇の一族たちの、祭りの夜」


「魔の者たちが、うごめく時」


「この祭りの一週間に限り、人間は我が身を守るために、あえて魔物の仮装をし」


「逆に、魔の者たちは、普段は人を装っている化けの皮を剥いで、魔物としての姿をさらけ出す」


「人と魔が混じり合い、聖と邪の垣根が取り払われ、昼と夜が逆転し、世のことわりは非合理となる、混沌カオスの一週間」


「気を抜くな」


「魔に取り込まれるぞ」


「『悪役令嬢』どもは、虎視眈々と狙っている」




「「「──我々人間を、魔道へと、堕落させることを!」」」




「探せ」


「探せ」


「探し出せ」




「──『悪役令嬢』を、一人残らず、根絶やしにするために!」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




 同時刻、ネオトウキョウ、治外法権特区、シブヤ・ゲットー、マルヤマチョウ地区。


 ──悪役令嬢秘密集会場、『ダーナ109』。




「……というわけで、今年のハロウィンにおいて、わたくしたち悪役令嬢はそれぞれ、旧文明の第二次世界大戦における、各国の軍艦のコスプレをすることに決定いたしました!」




「「「──何でだよ⁉」」」




 由緒正しき『悪役令嬢連盟会』の栄えある会長として、今回の祭典における活動方針を述べた、わたくしことアルテミス=ツクヨミ=セレルーナ70歳(ただし外見上は10歳)に対して、一斉に突っ込みを入れる、秘密会議場(という名の場末のホテルの一階のこぢんまりとした酒場)にて、窮屈そうに肩寄せ合っている、同じく悪役令嬢である仲間たち。




「──どうして、冒頭からずっと、いかにも70年代初期のSF少女漫画のイメージで攻めていたのに、いきなりぶち壊しにするんだよ⁉」


「あえて、『第三次世界大戦』とか『ネオトウキョウ』とか、もはや『死語』に片足突っ込んでいる、ダサダサSFワードを使って頑張っていたのが、台無しじゃん!」


「せっかく、季節柄『ハロウィン』でもあることだし、かの少女漫画界のレジェンド、萩尾○都大先生の生誕70周年を記念して、超名作『精○狩り』へのオマージュを捧げることによって、先生の偉大なる功績を言祝ごうとしていたのに!」


「やるんだったら、最後まで徹底してやれよ!」


「何でこのアホ作者ときたら、何でもかんでも、途中でほっぽり出すかねえ?」


「──しかも何だと? 言うに事欠いて、文字通り女の子ばかりである、我々悪役『令嬢』に、軍艦のコスプレをさせるだってえ⁉」


「この微妙な御時世に、いろいろとマズいだろうが⁉」


「旧日本艦が多ければ、『国粋主義者』呼ばわりされて」


「かといって、外国艦が多ければ、『反日』呼ばわりされて」




「「「いたずらに、『艦○れ』と『アズ○ン』の、『対立煽り』をするだけだろうが⁉」」」




「いや、そもそも、何で我々悪役令嬢が、他のキャラのコスプレをしなければならないんだよ⁉」


「普通『悪役令嬢』であるだけで、十分キャラが立っているはずだろうが?」


「それなのに、あのアホ作者ときたら、悪役令嬢を、ロリにしたりショタTSさせたり名探偵にしたり裁判長にしたり、あげくの果てには悪役令嬢同士で、バトルロイヤルをやらせるといった始末」


「現在の【魔法令嬢編】においても、デフォルト(?)の魔法少女である段階で十分おかしいというのに、本来はJK女子高生だった子までもロリ化させたり、しまいにはジェット戦闘機のパイロットに仕立て上げるといった体たらく」




「──そしてついに、今回に至っては、『ハロウィン』と『萩尾望○都先生生誕70周年』にかこつけて、我々をもはや人間でも魔法少女でもない、『精霊』と呼ばれるミュータント…………というのはほぼ死語だから、いわゆる『新人類ニュータイプ』にしようとするとはな」




「……まったく、あのアホ、本当に『悪役令嬢』というものを、わかっているのか?」


「丁度連載開始から一年ほどたったことだし、もう一度一から、『悪役令嬢』というものを、学び直すべきなのでは?」


「うん、それがいい」


「賛成賛成」




「「「いいか、アホ作者、これ以上いい加減なことばかり書くつもりなら、我々『悪役令嬢』は、全員本作から降ろさせてもらうからな? 肝に銘じておけ!」」」




 そのように、『最後通牒』そのものな捨て台詞を言い終えるとともに、やっと沈黙してくれるご一同様。




 ……もはや会長であるわたくしに対する非難と言うより、『作者フルボッコ』の巻であった。




 ──ひどい、ひどいわ、みんな!


 せっかくわたくしが、年に一度の『ハロウィン』を盛り上げようと、現在Web上で大絶賛のアニメにあやかって、安直なコスプレパロディ案をでっち上げたのにぃ。


 もう知らない、みんな勝手にすれば、いいんだわ!




 …………なあんて、ね☆




「──あ、そう、せっかく『気になるあの子』と、お近づきになれるチャンスだと思ったのに、わたくしだけで楽しむことにいたしましょう♫」




「「「は?」」」




 わたくしのあまりに唐突なる一言に、呆気にとられて一気にクールダウンする、悪役令嬢たち。


 その機を逃さず、たたみかけるようにして、『百合姉妹ガーリィラブリィの悪役令嬢』こと、タチコちゃんへと言葉をかける。


「例えば、タチコちゃんが気になっている、いつもスケスケなワンピースばかり着て、パンモロよりもよほどエロい格好をしている、三丁目の定食屋の看板娘の、ユネコちゃんのことなんだけど」


「──っ。ゆ、ユネコさんが、何だと言うのです⁉」


 くくくっ、ほうら、まんまとかかりやがった。




 実は何と、我々悪役令嬢は『原典オリジナル(?)』の設定通り、むちゃくちゃ寿命が長いから、ほとんど年をとらないので、基本的に子供を作る必要が無く、メンバー全員がほぼ例外なく、『ガチの女の子好き♡』だったりするのであった!




 ……とはいえ、もしも想いが通じてつき合うことができたとしても、しょせんは人間の女の子と悪役令嬢という、『哀しき関係』。


 成長速度の差により正体がばれそうになって別れたり、仮に幸運にも添い遂げることができたところで、いつも必ず相手と死に別れて、自分一人だけが取り残されるという、結局はどっちに転んでも、バッドエンド確定なのであった。


 ……え? そもそも『女の子同士』であることは、問題にならないのかって?


 いやもちろん、その点に関しては、『ノープロブレム』に決まっているじゃないですか? おかしなことを聞かれるものですねえ。


 ま、とにかく、悪役令嬢側としては、自分自身の特殊性ゆえに、どうしても恋愛に積極的にはなれず、相手のことをただ見守るばかりとなるわけなんですよ。


 ──そもそも、人類全体から『危険な種族』として見なされていることもあり、想いが成就したらしたで、相手に迷惑をかけることになりかねませんしね。


 ただし、『見守るばかり』と言っても、これまた『原典オリジナル(?)』通りに、悪役令嬢はそれぞれ固有の『異能の力』を有していますから、想い人の女の子に対しては、気配を完全に消してどこまでも尾行したり、いっそのこと透明化して住居に侵入したり、できるものなら遠慮なく裸を透視したり、念動力を使って手を触れずに下着を盗んだり等々と、ある程度の欲求は充足できているんですけどね☆




 ……あれ? もしかして、悪役令嬢のこういう所こそが忌み嫌われて、『討伐対象』になっていたりして?




 ま、まあ、それはそれとして、今はみんなを『(口車に)乗せる』ことのほうが、先決よね!


「──きゃっ、な、何ですの? アルテミスさん。一体何を、わたくしの頭に被せたのですの⁉」


「……ふふふ、アメリカ海軍の、制帽だよ」


「はあ? 何で、そんなものを──」




「その帽子を被って、アメリカ海軍正規空母の『エンタープライズ』になり切って、ユネコちゃんに向かって、こう言って迫ればいいのよ! 『……ユネ子が、悪いんだよ? そんなスケスケでパンツ丸見えのエッチな格好をして、私を誘惑したりするから』ってね♡」




「「「──‼」」」


 わたくしの渾身の決め台詞に、一斉に息を呑む、タチコちゃんを始めとする悪役令嬢たち。




「……そ、それって、もしや」


「例の、某『街角の魔族』なやつ⁉」


「すごい……」


「元々、『マリ○て』へのリスペクトとして、『タチコ』と『ユネコ』という、ネーミングにしていただけだというのに」


「これで一挙に、『アズ○ンのユニコーン』と、『まちカ○まぞくのシ○ミ子』との、トリプルミーニングに、なっただと…………?」


「今年の夏から秋にかけての、アニメの超話題作すべてを、総なめじゃん⁉」


「しかもこれが全部、偶然の賜物に過ぎないなんて……ッ」


「この作者、どれだけ『パロディの神様』に、愛されとるんや⁉」


あと、三作品すべての作風的には、『百合レズー○アーンの女神様』にもな!」


「更には、『エンタープライズ』の台詞の中の、ユネコちゃんの名前が、『ユネ』になっているところなんかも、芸が細かいよね☆」




 ──そうでしょう、そうでしょう。


 この「○○子が悪いんだよ?」ネタは、どこかで使ってやろうと思っていたものの、なかなか格好な使いどころがなくて、保留にしていたんだけど、今回の本作については『ギャグ回』と言うことで、『萩尾○都先生生誕70周年』にかこつけて、『精○狩り』の基本設定だけお借りして、やりたい放題やっていたら、自然とこのネタを使う場面に行き着いてしまったという次第でして、これには作者自身も、びっくり仰天でしたw




 いやあ、どんなど素人でも、ちゃんと真面目に小説を書き続けていれば、思わぬ幸運に恵まれることも、十分あり得るんですねえ〜。(コナミ)




(……以下、次回に続く?)

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