第279話、あたしリ○ちゃん、あなたに最高の異世界転生をさせてあげるわ♡(最終話)
……そうなのである。
驚愕のあまり目を丸くするばかりの精神医のほんの眼前にて、多数の『リ○ちゃん』
「そりゃあ、『都市伝説』としての格が違いますからねえ、『弱い概念』が『強い概念』に取り込まれてしまうのも、当然ではないですか?」
「弱い概念だと? 確かに『都市伝説』としては、メリーさんのほうが格上だろうが、『人形』としては、リ○ちゃんのほうが大先輩じゃないか⁉」
「確かに、『本物』なら、そうでしょうね」
「はあ? な、何だよ、本物ならって?」
「……まだわからないのですか、あなたは騙されていたんですよ、その胸ポケットの中に入れてある、白衣を着たリ○ちゃん人形にね」
「ええっ⁉」
慌てて自分の胸元を見下ろす、小太り医師。
もちろんそこには一体の人形が、すまし顔をしているだけであった。
「そもそも、我が国の誇る由緒正しき少女人形の『リ○ちゃん』が、薄汚い異世界人の『工作員』なんかになって、日本国に対して害悪を及ぼすはずが無いだろうが? 製作元の玩具メーカーや熱烈なる愛好家の皆様から訴えられるぞ? 実のところそいつらは、『リ○ちゃん』の名を騙っているだけの、パチモンの安物人形の類いに過ぎないのさ。──それに見ろ、その白衣を着た『医者』のような格好をした『リ○ちゃん』を、とても公式設定の小学五年生なんかじゃなく、数十歳も年上のBBAの顔をしているじゃないか?」
「うげっ、そういえば、そうじゃないか⁉ 気持ち悪い! どうして私は、こんな気色の悪い『リ○ちゃん』を、後生大事に持っていたんだ⁉」
「──だから言っているだろう、あんたその人形に、操られていたんだよ」
「私が、この人形に? だったら、一体この人形は、何物なんだ⁉」
「現実世界に絶望して異世界転生を夢見つつ、Web小説を書いたり読んだりしながらも、いつまでたっても『ワナビ』でしかない自分に比べて、すでに書籍化はもちろんアニメ化等の大成功さえも収めた、『テンプレ異世界系Web作家』に対する憎悪の念が、集合的無意識において『ワナビ』の数だけ無数に結集するとともに、本物の異世界人の『テンプレWeb小説の主人公に対する憎悪』とも合体し、『リ○ちゃん』人形の形へと凝縮して、あんたを始めとする『ワナビ』たちに『異世界人の記憶と知識』をインストールさせて、ネット上のアンチ活動を始めとして、都心の繁華街でのモンスター化に至るまで、数々の『破壊工作』を行わせていたってわけなんだよ」
「な、何だと? この私まで、異世界人の記憶や知識をインストールされていたというのか⁉」
「まあ、現在のあんたの『テンプレWeb作家』に対する憎しみが、現代日本の『ワナビ』としてのものなのか、テンプレ転生の被害者である異世界人としてのものなのか、すでに境目が判別不能なまでに、混じり合ってしまっているけどね」
「そ、それじゃあ、この白衣の『リ○ちゃん』こそが──」
「まさしく、他のエセ『リ○ちゃん』たちの代表格で、そのエセ『リ○ちゃん』(BBAヴァージョン)こそが、真のすべての黒幕だったというわけなんだよ」
「くそっ、こんなパチモンのBBA人形ごときが、生粋の日本人様を洗脳しようとしやがって⁉ この! この! この! この! この! この!」
いくら洗脳されていたとはいえ、自分だって先頭立って、日本に対する裏切り行為的工作活動をしていたくせに、自分のほうこそ『操り人形』であったことが判明した途端、悔し紛れに物言わぬ白衣のパチモン『リ○ちゃん』を踏みつけにする、あまりにも哀れなる男、リカルド=カマヤ。
そんな元『工作員』に対して、微塵も容赦無く、とどめの言葉を突き付ける、他称『世界の作者』のWeb作家。
「いくら、そんなパチモンを踏みつけにしたところで、無駄ですよ?」
「な、何だって?」
「──我々Web小説家が異世界系の作品を創り続ける限り、その主人公たちは異世界において多大なる影響を及ぼしていくことになるけど、それは大抵の場合けして望ましいものとは言えず、むしろ異世界の皆様の恨みを買っていき、その大いなる憎悪は、たとえ何十年たとうが、現代日本側の人間が何度謝ろうが、『NAISEI』等の日本の最先端の科学技術によって、異世界をかつてないほど豊かにしてやろうが、けして帳消しにされることは無く、『日本人憎し』のあまりに、ファンタジーワールドならではの『魂だけの転生術』をフル活用して、人知れず無数の異世界人の魂を日本人の肉体の中に転生させて、身も心も乗っ取り完全に洗脳して異世界側の『工作員』に仕立て上げて、ネット上でのサイバー攻撃等の隠密破壊工作を行わせつつ、来たる異世界軍の本格的侵攻時に呼応しての、『一斉蜂起』の準備を着々と進めさせているのさ。例えば、これまでの散発的な異世界オタクの一般人の異世界のモンスター化による暴走を、休日の
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