第257話、わたくし、夏休みの宿題におけるネット検索は、別に手抜きではないと思いますの。
「……あつ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!」
ほとんど冷房の効いていない、猛暑の学園内の図書館での自習中に、ついに我慢の限界に達した
それを見て、いつも通りに真面目くさった苦言を呈すのは、我ら『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』のリーダーであり、実は『自分もロリのくせにガチのロリコン』であることが最近発覚したばかりの、ヨウコちゃん。
「いきなりどうした、アルテミス。せっかく前回、前々回と、久方振りにシリアス路線に回帰したかと思ったのに、ついに作者が夏バテで倒れたのか?」
「いきなりは、こっちの台詞だよ、ヨウコちゃん! 何を前後の脈略も無しに、メタ的発言をしているの⁉ シリアスとかコメディとかおねロリとか言う以前に、
「……私たちが、
「ガチで忘れているよ、この人⁉ あんたは、自分のことを『艦○れの
だからって、自分もロリのくせに、幼女を
「……とにかくさあ、せっかくこの【魔法令嬢編】において、
「確かになあ、うちら、まだ十歳くらいの魔法少女だというのに、大人顔負けのジェット戦闘機パイロットなんかを、強制させられてるしね(ユーちゃん)」
「最初のうちは、水泳の授業シーンなんかで、盛んにスクール水着姿なんかを、アピールしていたけどね(メアちゃん)」
「とはいえ、あくまでも文字媒体である小説においては、一見しただけでは、キャラクターの年齢を判別しにくいので、どうしても常に『
「それで今回は、メンバー全員で図書館に集まって、夏休みの自由課題についての勉強会ってわけか? 確かに
「そういうこと。──ていうか、そもそも
「……気持ちがわかるが、かといって、肝心のおまえの勉学に対する姿勢は、とても感心できないのだがな、アルテミス?」
「は? 何がよ、ヨウコちゃん?」
「──貴様、さっきからずっと見ているが、与えられた課題について、何一つ自分で調べようとはせずに、すべてネット上でググってばかりではないか⁉」
図書館内の自習室中に響き渡る、ヨウコちゃんの渾身のツッコミ。
……いや、図書館の中で、大声を響き渡らせちゃ、駄目でしょう。
だがしかし、その気持ちも、わからないでもなかった。
こうも暑いと、やる気がまったく起こらず、それでなくともとかく人間というものは、安易なほうへと流れがちであるゆえに、こうして図書館にいるというのに、参考文献を探す気にもなれず、私ときたら課題のすべてを、ネット検索だけで済ませようとしていたのだ。
「ミサト先生も、口を酸っぱくして言っていたではないか、『課題研究でのネット検索は厳禁』と。つまり先生のほうでも、生徒がネットを利用することは先刻ご承知なわけだから、ネット丸写しのレポートを提出したところで、叱責を受けることはあれ、評価されることは無いんじゃないか?」
「──うっ」
まったくもって、おっしゃる通りであった。
……仕方なく、ちゃんと参考資料を探すために、席を立とうとした、まさにその時。
「──いいえ、アルテミスは、間違っていないわ」
ふいにかけられる、新たなる声。
振り向けばそこには、髪の毛から素肌から身につけているノースリーブのワンピースに至るまで、全身真っ白の少女がたたずんでいた。
「……え、アグネスちゃん、どうしてここに」
「どうしてもこうしても、『観察対象』である、あなたを追って──もとい。と、当然私も、夏休みの課題研究のための、参考資料を探しに来たのよ!」
「ああ、うん。前半のほうは、聞かなかったことにするね」
「──待て待て、
「もちろん、学校側による、『夏休みの課題作成における、ネット活用の厳禁』が、もはや時代遅れも甚だしい、大間違いでしかないって、言っているのよ」
「……何だと?」
「例えば、本作の作者なんか、小説の作成時には、もはや紙媒体の参考資料なんか見もしないで、パソコンの前から一歩も動くこと無く、ネットの知識だけで、すべてを済ませているらしいわよ?」
「「「「「──っ」」」」」
思わぬ『事実』を突き付けられて、完全に言葉に詰まってしまう、『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』のメンバーたち。
「これは何も、Web小説という、独特なジャンルだけの話では無いわ。その他にも、プロの小説家はもちろん、一般企業のサラリーマンによる企画立案や、学者や学生によるレポートや論文作成に至るまで、今やネット主体で必要な情報を集めることこそが、『常識』となっているんだし、それを子供の頃から訓練しておいて、しっかりと身につけてから社会に出ようとする姿勢は、むしろ推奨されるべきかと思うけど?」
「ぬっ⁉ ……し、しかし、それって結局、子供の頃から、『手抜き』を覚えるだけの話ではないのか?」
思わぬ闖入者の思わぬ『超理論』に圧倒されながらも、至極もっともなる観点で反駁するヨウコちゃん。
「だから、そこで生徒たちを正しい方向へと導いてやるのが、まさしく教師としての使命なのですよ」
「「「「「…………はあ?」」」」」
「『ネット検索は絶対禁止!』などと、頭ごなしに押さえ込むことなんて、馬鹿でもできることだし、何よりも現状にそぐわない、『駄目教育者』以外の何物でもないわ。──真の教育者を名乗りたいんだったら、まず初めに、ネット検索の利便性や有効性を認めつつ、更にその上で、生徒たちを正しい方向へと導いてやるべきなのです」
「「「「「ネット検索の、正しい方向、って?」」」」」
「いくらネット検索自体が有効だと言っても、単なる『丸写し』では意味がありません。学者の研究レポートも、サラリーマンの企画案も、ネットで得た知識を基に、それぞれの目的に合わせて『加工』しているからこそ、意味があるのであって、まず生徒たちには、『目標意識』を持たせるとともに、その目標に至るには、どのような『テクニック』が必要となるか、明確な定義づけを与えるとともに、それに到達するための飽くなき訓練を促さなければならないのです」
……ああ、なるほど。
要は、課題研究のための『材料』集めについては、ネットを利用して、いくらでも楽をすることは許されるが、それを具体的な『
そのように、私を始めとする『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』のメンバー全員が、どうにか理解に及んだのを見て取ったようにして、いよいよ最終的結論を述べていく、アグネスちゃん。
「何とプロの作家においても、俗に言う『ウィ○の丸写しwww』問題が、たびたび取り沙汰されているけど、それも結局ところその作家自身に、目的意識があるか無いかの話に過ぎないのです。プロだろうが、Web作家等のアマチュアだろうが、駄目な作家は結局、ネット上の知識を鵜呑みにして、自作内で丸写しするしか能が無いけど、まず最初の大前提として、『ネット上の知識は、必ずしも正しいとは限らない』ことをわきまえなければなりません。ここで断言しますが、すべてのミステリィ小説における『警察に関する知識』は、全部でたらめです。あいつらは『ネットの知識』や『他人の受け売り』を鵜呑みにしているだけの、能無しに過ぎないのです。本作において以前も述べましたが、『非番とは警視庁の警察官にとっての休暇では、
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