第239話、わたくし、某アニメみたいにパイロットが人外美少女なら、特攻に使ったほうが合理的だと思いますの。
──実は第二次世界大戦時において、何とドイツではすでに、音速突破を可能とする航空機が、三機種もあったという。
一つは、人類史上唯一のロケット戦闘機である、Me163の最後期シリーズで、ただでさえ高出力のロケットエンジンに副燃焼室を加えたタイプであり、本来の急上昇用としてではなく、水平飛行に全出力を用いれば、軽く音速を突破したであろう。
次に有名なのは、誰もがご存じの世界初の実用ジェット戦闘機にして超傑作機の、Me262の試作C型シリーズで、これはジェットエンジンだけでも時速900キロを出せるところに、急上昇用補助エンジンとして、Me163のメインエンジン相当のロケットエンジンを追加したものであるからして、ジェットエンジンとロケットエンジンとを、同時に水平飛行において全力で用いれば、余裕で音速を突破したであろう。
──そして最後は、まさしく現在
基本的には、Me262Cシリーズと同様に、急上昇能力が劣る初期のジェット機の弱点を克服するために、メインエンジンであるBMW003Eと補助ロケットエンジンBMW718を合体させた、第二次世界大戦きっての怪物エンジン、BMW003Rエンジンを搭載しており、標準装備のBMW003Eのみでも時速900㎞を超えるところに、BMW718をも併せて水平飛行に使えば、超音速飛行も十分に可能と思われた。
……いや、『可能と思われた』って、まさに今の
『──こちらワルキューレ1、敵有人飛行爆弾「Fタイプ」を、一機撃墜!』
『──こちらワルキューレ2、同じく、一機撃墜!』
『──こちらワルキューレ4、同じく、一機撃墜!』
『──こちらワルキューレ5、同じく、一機撃墜!』
そうこうしているうちに、ワルキューレ3である、
「──こ、このお、しぶとい!」
ロケット
「……まずい、万が一市街地で3トンもある爆弾が爆発したら、大惨事になってしまうわ! ──こうなりゃ、最後の手段よ!」
そのように意を決するや、敵機のいる下方ではなく、あえて上方へと機首を向けて、ある程度高度を稼いだところで、いまだ速度に勝る目標に向かって急降下する。
「──行っけええええええ!!!」
速度計はアッと言う間に、最高制限速度の900㎞を超え、1000㎞に迫っていく。
──実はこれぞ、ジェット機ならではの、裏技であった。
旧来のレシプロ機においては、プロペラ自体の回転速度に限界があるため、どんなに急降下態勢をとろうが、時速800㎞あたりが限界となるが、プロペラの無いジェット機にはそのような制限はなく、ほんの30度ほどの緩やかな降下角度においても、機体と操縦手さえ持ちこたえることができれば、どこまでも速度を増すことができるのだ。
「──これで、決まりよ!」
相手もすでに全速力飛行ができなくなっていたこともあり、どうにか追いついて機関砲をぶち込めば、胴体後部の燃料タンクから、ジェット機ならではの低オクタンのガソリンが噴き出していった。
もちろん、どんなに高性能を誇ろうが、燃料が無ければ飛行機は飛ぶことはできず、ほんの目の前に陸地が迫ったところで、虚しく海面に着水する敵機。
どうやら機首の3トン爆弾は、不発に終わったようだ。
「……飛行爆弾だから、降着装置が付いていないはずだから、同じ不時着するにしても、陸地よりも海面であったことは、相手にとってはラッキーだったかもね」
──しかし、それにしても。
先に仲間たちに撃墜された、他の『Fタイプ』同様に、
確か旧ドイツ軍の有人飛行爆弾は、旧日本軍の特攻機とは違って、目標に突入する直前に、脱出することが前提になっていたはずだけど……。
まあ、とにかく、どうにかこれにて、任務終了か。
『──こちらワルキューレ3、敵機を撃墜!」
『──こちらワルキューレ1、敵有人飛行爆弾「Fタイプ」全機の、撃墜を確認! なお、空中空母のほうは、すでに撤収した模様。よってこれより基地へと帰投する!』
『『『『──らじゃっ!』』』』
こうして今回はそれなりに苦戦したものの、どうにか敵全五機の殲滅を成し遂げるや、意気揚々と帰途につく、聖レーン転生教団空軍新設特殊部隊、『ワルキューレ』。
──またの名を、『魔法令嬢育成学園』初等部5年F組におけるトップチーム、『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』。
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「……一体どういうことなの? どうしてこの子、アグネスちゃんとそっくりなの⁉」
長く緩やかなウエーブを描く髪の毛すらも含み、全身真っ白な肢体は、あまりに小柄かつ華奢で、年の頃はおよそ六、七歳程度と思われ、いまだ意識を失っているので、西洋人形のごとく端整な小顔の中の瞳は閉じられているものの、そこに隠された瞳が鮮血そのままに深紅であることは、すでに確認済みとのことであった。
──そう、まさしく、
「つくられた人魚姫、『セイレーン』よ」
軍所属の病院兼特殊研究所のベッドの上に寝かされている、あまりに予想外の敵機のパイロットをまじまじと見つめていた、
「……ミサト先生」
いかにも人懐っこい笑みをたたえながらも、常に腹に一物隠しているかのような、油断ならない雰囲気をかもし出している、
「……あの、先生、この子が、『つくられた』って、どういうことです?」
「言葉通りよ、この子やその仲間たちは、有人飛行爆弾によって自爆テロを行うための、余計な自律的意思なぞ必要としない、操縦システムの
──‼
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