第215話、わたくし、百合路線の乙女ゲーム転生作品は、ヤンデレ成分が足りないと思いますの。(改5)
──お姉様の
──『獣化第一形態』になるまでも無い、これは『妹』──もとい、『使い魔』としては、当然の嗜みである。
──しかし、ここからは、待ちに待った、『闘争の時間』だ。
「……獣化形態、第一段階、全面解除」
──施錠されていた、体育用具室の扉を、力任せに蹴破る。
──ぎょっと、こちらへと振り向く、上級生らしき生徒たち。
──その中央で、苦悶の表情を歪ませている、愛しのお姉様。
──彼女自身も、私の姿を認めて、驚きながらも、安堵の表情を浮かべた。
「貴様らあ、私のお姉様に、何をしたあああああっ!!!」
──体育用具室内へと、怒鳴り声を上げながら飛び込んでいく。
──その瞬間、
「いやあああああ、ユネコ──⁉」
──お姉様の絶叫が耳をつんざくが、問題は無い。
──獣化第一形態解除とともに、痛覚を遮断しているし、骨折等も無いようだから、四肢は問題なく動く。
「……『
──そうつぶやきながら、ゆらりと立ち上がった私の姿を見て、顔色を変える『異端者』たち。
「……こ、殺せ! でないと、私たちが、殺されるぞ!」
──リーダー格の少女の怒号とともに、再び四方八方から殺到してくる、体育用具。
「……獣化形態、第二段階、限定解除」
──轟音を鳴り響かせて、床へと着弾する、多数の体育用具。
──しかしすでに、そこには、誰もいなかった。
「き、消えた?………………………ぎゃああああああああああっ!」
──いの一番に、リーダー格の少女の土手っ腹に拳を叩き込み、風穴を開ける。
──吹き出す鮮血とともに、彼女の生命力の源である、魔導力──すなわち、『
──『頭』を潰してまえば、後は単なる烏合の衆に過ぎなかった。
「ひいっ」
「きゃあっ」
「や、やめて」
「助けてえっ」
もはや戦意を喪失して、残りの四人で一塊となって、震えながらこちらへと、哀願の声を上げる────『屠所の羊』たち。
──さあ、『屠殺ショウ』の、始まりだ。
「クソ豚どもがっ! 私が、愛するお姉様に手を出したおまえたちを、見逃すとでも思うのか⁉」
──死ね!
「あぐっ!」
──死ね! 死ね!
「ぎゃあっ!」
──死ね! 死ね! 死ね! 死ね!
「ぐげっ!」
──死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!
「びえっ!」
──死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!
「ひぎっ!」
──死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!
──私のお姉様を傷つけるやつは、この世界からすべて、消え去ってしまえばいいのだ!!!
「──やめて! もう、やめてえ!」
……え……あれ?……お姉様?
すでに物言わぬ肉塊と化していた、異端者どもを、憎しみに駆られて殴り続けていたところ、気がつけば華奢な細腕に、後ろから羽交い締めにされていた。
「お願い、もうやめて! これ以上、見ていられないの!」
ミテ、イラレナイ?
……ああ、あああ、あああああ。
………………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
見られた、見られてしまった!
お姉様に、見られてしまった!
──この浅ましき、『獣の姿』を!
……本当は、お姉様だけには、見られたくは無かったのに。
だけど、お姉様が苦しんでいる姿を見たら、我を忘れてしまって。
だって、お姉様を
お姉様のためだけに、死の世界から甦ってきた、私だけなのだから。
なのに、あのクズ雌ガキどもが!
私に断りもなく、お姉様をいたぶりやがって!
『人の物』に勝手に手を出せば、相応の報いを受けるのは、当然のことだろうが⁉
……だけどそのせいで、お姉様に、浅ましい姿を見せてしまった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
お姉様に、嫌われてしまったら、どうしよう!
「……ユネコ」
──‼
まさにその時、真後ろから耳元へとささやかれた言葉に、私の全身が硬直する。
「──
………………………………………え。
「
……おねえ、さま?
「しかも、使い魔としての、『獣化形態』の力を使ったりして、辛かったでしょう、痛かったでしょう、本当に
そう言い終えるや、優しくそっと、後ろから抱きしめてくれる、温かい体躯。
──ああ。
──お姉様は、わかってくださっていたのだ。
──やはりお姉様は、『私のお姉様』だったのだ。
「お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様! お姉様あああ──!!!」
もはや堪えきれず、お姉様の胸元に飛び込み泣きじゃくる、忠実なる『使い魔』。
「よしよし、もう大丈夫よ。
まるで赤子をあやす母親のように、私の頭を優しくなで続けてくれるお姉様。
それでも私は、ただひたすら彼女の胸で、泣き続けたのであった。
──なぜなら、まさにこの瞬間、私はようやく本当に、彼女の『使い魔』に、なれた気がしたのだから。
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