第188話、【GW特別編】わたくし、悪役令嬢ワリーさん、今異世界にいるの。(その7)
「──いやいやいやいやいや! 何いきなり、出版界全方面に向かって、ケンカを売っているのよ⁉ 『世界の改変』が絶対にできないなんて、ラノベ等における超人気作品のほとんど全部を、全否定するようなものじゃないの⁉ ほら例の、『消失する』やつとか、『ハーレム要員の精霊たちが何度も全滅してはしつこく復活する』やつとか⁉ それに何よ、さっきも言っていた『正夢体質』って? それが『世界の作者』としての力と、何の関係があるわけ⁉」
私は、抗議した。
それはもう、必死に抗議した。
──だってこのままでは、誰かさんのWeb作家生命が、絶たれてしまいかねないんですもの。
しかし、当の発言者である、スマホの画面内の『異世界におけるもう一人の私』にして、自称『悪役令嬢』の幼女、アルテミス=ツクヨミ=セレルーナのほうは、いかにも何でもないことのように、私こと、我が国でも一二を争う名家、
『関係大ありよ、それこそがあなたの
「は?」
『「
あー。
「た、確かに、あなたの言う通りだわ。自分のWeb小説内で描いた異世界が現実のものとなって、ある意味メタ的に自分自身が『世界の外側に存在する作者』──すなわち、あなたの言うところの『
納得納得。別に商業ラノベやSF小説や、下手すると出版社自体が、絶対に正しいなんてことが、あるわけなかったんだ。
あ〜あ、そんな『間違った答案用紙』そのままな作品を、何の疑問も覚えずに無条件で受け容れていて、そっくりそのまま
そのように、いきなり手のひらを返してしまった、私であったが。
この出版界全体を震撼させかねない、『大どんでん返し』には、まだまだ続きがあったのだ。
『どうやらようやく、納得してくれたようね。──それでは今度は、何で「巫女姫」と「語り部」のコンビであれば、「唯一絶対の未来予測を、ズバリと的中させられる」のかについて、詳しく述べていくことにいたしましょう♡』
………………………あ。
「そうだ、そういえば、そうだった! 何で『絶対に的中する未来予測は絶対に不可能』なのに、巫女姫の『夢告げ』だったら、的中させることができるわけ⁉」
『だから、祐記の「正夢体質」こそが、それを実現させているのよ』
「ええっ、たかが正夢体質ごときで、超有名ラノベすら実現できなかったことを、可能にしてしまえるですってえ⁉」
『確かに「明石月の巫女姫」の未来予知能力は、ずば抜けて素晴らしいわ。──ただしそれは、たった一つの未来をズバリ的中させるのではなく、
「えっ、未来の可能性をすべて
『ええ、その通りよ。さっきも言ったように、どうせたった一つの未来を的中させることなんてできないのだから、むしろあらゆる可能性を俎上に載せて、将来起こり得る「問題点」をすべて洗い出し、万全な対策を練ることができるという、「リスク管理」を事前に完璧にこなすことによって、こういったことこそが非常に重要な意味合いを有する、「経営戦略」や「軍事戦略」の場において、非常に役に立てると思うの』
何それ、完璧な『経営戦略』や『軍事戦略』を実現することなんて、下手したら「よろしい、貴殿が望むままに、たった一つの未来をズバリ当てて進ぜよう☆」などと言った、ある意味世迷い言や詐欺みたいなエセ予言なんかよりも、よほど現実的で利用価値が高く、国内外の経済界やアメリカ国防省あたりから、引く手あまたじゃないの⁉
……
『ふふふ、驚くのはまだ早いわ。更には何と、語り部の「強力無比な正夢体質」の力をも併用すれば、絶対に不可能なはずの、「絶対に的中する未来予知」すらも、実現できるのよ!」
おっ、そうだ、そうだった、『本題』はむしろ、そっちのほうだった。
『ユング心理学における「集合的無意識」については、もう祐記あたりから説明を受けたかしら? 実は「巫女姫の未来予知」の力は、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の「記憶と知識」が集まってくるとされている、集合的無意識に自分自身でアクセスを果たすことによって、主に「未来の記憶と知識」を己の脳みそにインストールして、適切なる
──!
「そ、それって、まさか──」
『そう、「巫女姫」が、自分が集合的無意識で垣間見た「未来の可能性」のうちで、最も明石月家にとって利益のあるパターンの状況を、「語り部」の夢の中で「夢告げ」として見せることによって、「正夢体質」に基づく、関係者全員の「集合的無意識への強制的アクセス」を発動させて、無理やりに記憶を改竄して、予言通りに行動させることで、まさしく「自作自演」そのままに、自ら行った未来予測を的中させているわけなの』
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