第165話、わたくし、いくらエイプリールフールでも、この作品自体が嘘でしかなかったなんて、あんまりだと思いますの。

 ──はーい、現代日本の推定三千万人の、『魔法少女』愛好家の、ヒキオタニートのお兄ちゃんたち、こんにちは!


『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』でお馴染みの、『の魔法令嬢』アルテミス=ツクヨミ=セレルーナだよ!


 今日はストーリーも一区切りついたことだし、いきなりほとんど説明無しで始まった、いわゆる『作中作』的な本シリーズがどのような世界観に基づいているのか、改めてご紹介するね!




 まずは、わたくしたち『魔法令嬢』やその宿敵『悪役令嬢』についてだけど、これまでの『魔法少女』モノのお約束通り、一般の人にはその存在が知らされていません。


 確かに超常の力を有する『悪役令嬢』を放っておくと、社会に対して多大なる悪影響を与えてしまいかねないけど、そのためにこそわたくしたち『魔法令嬢』がいるのだから、『悪役令嬢』が何か悪事を働いたら遅滞なく討伐に赴き、世間にあまり影響を及ぼさないうちに事件を収めているので、今のところ目立った騒ぎにはなっていないの。


 その際には、わたくしたち『魔法令嬢』も超常の力を行使して、結構派手な『異能バトル』を展開することになるんだけど、熱心な読者の皆さんならすでにご存じの通り、『魔法令嬢』としての『悪役令嬢』の討伐は、基本的に『夢の世界』の中で行われるので、現実世界に被害をもたらすことなく、人知れず事件を解決することを成し得ているの。


 続いて、わたくしたち『魔法令嬢』や『悪役令嬢』が存在している世界というか国というか地域社会というかの、いわゆる『舞台設定』についてなんだけど、場所的には某巨大なる大陸の東部ということになっていて、残念ながらその東方海上に存在している『極東の弓状列島』では無いんだけど、国内の様相や人々の暮らしぶりは、ほとんど『日本』そのものとなっているとともに、その一方で、わたくし自身を始めとする登場人物の外見なんかは、どちらかと言うと『欧米』寄りだったりするといった、この手の話にありがちな『ちゃんぽん』的な世界観となっているの。


 もっと細かい舞台設定として、わたくしたちが現に暮らしている『街』についてはどうかと言うと、もうこの辺は完全に『現代日本』──特に世田谷区や大田区や西東京といった、『東京都内』においても市街地よりも住宅地近辺のイメージで、わたくしたちの学校についても、ちょっと規模が大きかったり施設が近未来的だったりするけど、基本的には『現代日本の小学校』といった感じなのだ。


 ──ちなみにこの学園の生徒たちは、『悪役令嬢』の実の娘ゆえに母親同等の力を秘めている、わたくしのような『魔法令嬢』や、その他生まれつきあるいは後天的に超常の力を有している、特殊な子供たちが集めてられて、対『悪役令嬢』の『人間兵器』として育成されている、なんかどこかの『マル○ゥック機関』的な一種の『魔法学園』なので、生徒及び教職員のすべてが、『悪役令嬢』の存在を既知としているわ。




 ──さて、ここからはいよいよ、学園きってのエースグループである、わたくしの所属している『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』の構成メンバーを、一人一人紹介していくね♡




 まず最初は当然このわたくし、『の魔法令嬢』のアルテミス=ツクヨミ=セレルーナよ!


 自分で言うのも何だけど、月の雫のごとき銀白色の長い髪の毛に縁取られた、端整なる小顔の中で夜空の満月そのままの黄金きん色の瞳を煌めかせている、まさしく自他共に認める、天使や妖精そのままの超絶美少女なの!


 いまだ小柄で華奢な肢体を包み込むバトルコスチュームは、ウエディングドレスをイメージした純白のミニスカワンピースを基調としたもので、魔法のステッキは通常形態から魔導書『アカシックレコード』へと変幻自在な、ちょっと特殊なやつなの。


 そして肝心の『魔法令嬢』としてのスキルは、『アカシックレコード』なんかを持っていることからもわかるように、『未来予知能力』なのよ!


 ただし、本来なら最強無敵とも言える力なのに、わたくしがいまだ完全に『魔法令嬢』として覚醒していないために、完璧に使いこなすことはできず、今のところ基本的な戦闘能力のみで、グループに貢献を果たしているの。


 次に、グループのリーダーである、ヨウコちゃん──『九尾の魔法令嬢』、ヨウコ=タマモ=クミホ=メツボシ嬢についてだけど、




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「……何よ、メイ。あなたまた、性懲りもなく、『企画』なんて、創っているわけ?」




 私こと、ホワンロン王国筆頭公爵家御令嬢アルテミス=ツクヨミ=セレルーナ様の専属メイド、メイ=アカシャ=ドーマンが、本来は敵対関係にある聖レーン転生教団の教皇庁に与えられた作業室にて、愛用の魔導書型タブレットPCに向かって、新作『魔法令嬢、ちょい悪シスターズ』の【エイプリールフール特別編】を執筆していたところ、突然かけられるもはや耳馴染みの声。




「──って、でけえ⁉」


「……はいはい、もう、『お約束』だか『天丼』は、食傷気味だから(天丼だけに)」


 そう言いながらも、腕を組み、さもこれ見よがしに、スイカのごとき胸元を押し上げる、エアハルト=ミルヒ殿。


「『嘘企画』とは、ずいぶんな言いようね? これは単なる量子魔導クォンタムマジックネット小説なんかではなく、聖レーン転生教団の最終計画研究所や、他ならぬあなたの夢魔サキュバスとしての力を借りて、れっきとした『現実の世界』として構築されていると言うのに」


「……実際に力を貸して、実情を垣間見ているからこそ、心配しているんじゃないの? 特に最新エピソードにおいては、『初代のの巫女姫』なんていう超危険人物の、『物語ステージ』への侵入をみすみす許したりして、そのあまりのシナリオからの逸脱ぶりに、教団のほうはカンカンに怒っているそうよ?」


「……『あいつ』のやることまで、知ったこっちゃ無いわよ? 別に私が招き寄せたわけじゃないんだし」


「とぼけても無駄よ、私が構築した夢の世界の『結界』に、微妙なほころびが生じていたことが、『初代』さんの侵入を許した後でわかったんだけど、そんなことができるのは、当の夢魔サキュバスである私か、『作者インナー・ライター』であるあなたくらいなものでしょうが?」


 ……う〜ん、やっぱり気づかれてしまったかあ。


 仕方ない、この『計画』を完璧に遂行させるためには、『夢魔サキュバスの悪役令嬢』である彼女の協力は、必要不可欠ですものねえ。


「ちょっと、話を聞いているの? 下手したら、あなたの『お嬢様』が危なかったのよ? あなた、それでもいいわけ?」




「──はあ? 何言っているんですか? 私が大切な『お嬢様』を、危険にさらしたりするわけがないでしょうが?」




 当然のごとく即答する私に対して、途端に怪訝な表情となる、自称『ミルクの次官』殿。


「え、で、でも、あなた、あの時……」


「あはは、実は『あれ』も必要なことだったのですよ、何よりも私の、『お嬢様』のためにね」


「ちょ、ちょっと、待って! あなたの言う『お嬢様』って、あなたが唯一仕えている、『御主人様』としての『お嬢様』のことだよね⁉」


「? 何で今更、そんなことをお聞きになるのですかあ?」


「い、いや、何だか、あなたの言う『お嬢様』と、私の言う『お嬢様』とが、何となく、聞こえたものだから」


「ふふっ、変な次官殿。私にとっての『お嬢様』は、一人っきりに決まっているではないですかあ」


「そ、そうようね! ──ごめんなさいねえ、私の取り越し苦労に過ぎないのに、変なこと言っちゃって」


「いいええ、わかってくだされば、それでいいのですよう♡」




 ──そう、私の『お嬢様』は、、ただ一人だけなのだ。




 どんなに世界が変わろうとも、どんなに時代が移ろおうとも、




 何度裏切られてしまおうとも、何度この手で死なせてしまおうとも、




 ──私は今度こそ必ず、『彼女』のことを、捕まえてみせる!

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