第126話、わたくし、作家だったらむしろ、すべての小説を疑ってかかるべきと思いますの。

「……ええと、今回は前回の補足説明みたいな感じなのですが、いちいち『祝、PV30000アクセス突破記念』とか言っていたら大仰だから、今回は私こと、ホワンロン王国筆頭公爵令嬢アルテミス=ツクヨミ=セレルーナ様の専属メイドである、メイ=アカシャ=ドーマンと──」


『ありとあらゆる異世界転生を司る、女神様──つまりは、ある意味「メガ○ン」、私こと「なろうの女神」の二人での、対談形式で行います! イエーイ♡』


「……何ですか、その無駄なハイテンションは?」


『うふふふふ、泣いたカラスが、もうろた♡』


「──‼」


『何が、「私はお嬢様が、真に理想的な『の巫女姫』になれるのなら、自分が憎まれようが嫌われようが、構わない」よ? その後でちょっとばかり、「お嬢様」からつれなくされただけで、ワンワン泣いたりして』


「──や、やかましい、この駄女神が! さっさと本題に入れ!」


『はいはい。──と言ってもねえ、この補足説明って、すでに別のエピソードで、詳しく述べているのよねえ……』


「……ああ、第30話か」


『それでねえ、いっそのこと今回は、「総括的解説」にしようかと思うんだけど?』


「『総括的解説』って、何を総括するって言うのですか?」


『ようく振り返ってみると、基本的に異世界転生の仕組みを活用しながらも、今回の話はほとんど異世界転生に関係の無い、SF小説やラノベ等でよくある「人格の入れ替わり」イベントそのまんまだったし、第30話のほうは一応「ゲンダイニッポン」からの異世界転生者が関わっているけれど、実際上は「二重人格」イベントみたいなものだったじゃない。よってそれこそSF小説やラノベ等でよく見かける、「別人格化」イベント全般について総括しておこうと思うのよ』


「………………つまり?」




『SF小説とかラノベとかWeb小説とかで、馬鹿の一つ覚えみたいに登場してくる、「人格の入れ替わり」とか「二重人格」とか「前世返り」とか「記憶喪失中のみの仮の人格」とか、それからもちろん「異世界転生者としての覚醒」とか、どう考えてみても、現実にあり得るはずがないじゃん──と、言うことよ♡』




「──ちょっ、こいつ言うに事欠いて、出版界の全方面に対して、一気にケンカを売りやがった⁉」


『そりゃあ、ケンカも売るわよ? そもそもさあ、これまで散々こういった「別人格化」の類いのネタを扱った作品の中で、何でこのような「別人格化」が起こり得るのか、論理的に説明した作品なんて、一つでもあったかしら?』


「え? いや、そう言われてみれば……」


『つまりすべてのプロの作家が、「人格の入れ替わり」とか「二重人格化」とか「前世返り」とか「記憶喪失中のみの仮の人格化」とかの、「別人格化」が起こり得るのは、もはや「当たり前」だと捉えて、完全に思考停止しているわけなのよ』


「そ、そりゃあ、『別人格化』なんて、真面目に考えると、そんなことあり得るはずがないわけだし……」


『それって、なぜだと思う?』


「な、なぜって」




『なぜならね、そもそも「人格」なんてもの自体が、「時間」なんかと同様に、人間が便宜上定めた、「概念上の存在」にすぎず、本来はそんなものからよ』




「へ? 人格が、存在していない?」


『第30話で言っていた通りよ、人格なんて肉体の単なる付属物であり、人間を適切に動かすための「OS」のようなものすぎないのよ。それなのに「他人と人格が入れ替わった」とか、「俺は記憶喪失中の仮の人格だから、記憶が戻ったら消えてしまうんだ!」とかほざいている作品なんて、時間そのものが確固として存在していないのに、「ブラックホール付近では時間の流れが歪んでしまう」などと、どこかで聞いたような非論理的ホラ話を、何ら自分の頭で考えることなく、自分の作品にそのまま引用している、プロのSF小説家みたいなものよ。──そう、「別人格化」系の作品を創っているプロのラノベ作家なんて、先行作品という名の「間違った答案用紙」を何ら疑問を持たずに「カンニング」して、劣化コピー作品を大量生産しているに過ぎないの』


「だからあんたは、何も考えずに、全方面にケンカを売りすぎだっつうの⁉」




『それに対して、まさに論理的かつ現実的に、これら「別人格化」イベントの実現可能性を証明してみせたのが、何と当の「別人格化」イベントを全否定したかに思われた、本作「わたくし、悪役令嬢ですの!」だったのよ』


「は? あれだけとことんまで否定しておきながら、『別人格化』イベントの実現可能性を証明したですって?」


『だって、本作においては当然のごとく、ある意味「別人格化」イベントの一つとも言える、「異世界転生」の現実的かつ論理的実現方法を何度も述べてきたでしょう? もちろん他の「別人格化」的イベントも、同じ理論で実現させることが可能なわけなの』


「……集合的無意識とのアクセス、か」


その通りザッツ・ライト! 集合的無意識には、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってきているからして、「自分の身の回りの人物」や「別の性格の自分」や「前世の代表例である戦国武将や異世界の勇者」等々の「記憶や知識」も当然存在しているので、集合的無意識とアクセスさえすれば、「人格の入れ替わり」や「二重人格化」や「前世返り」や「記憶喪失中のみの仮の人格化」や、もちろん「異世界転生」に至るまで、あくまでも擬似的にとはいえ、論理的に十分実現可能となるわけなのよ』


「……だったら、別にプロの皆様の作品を全否定するような、この上なく危険な話なんかする必要なかったじゃないか⁉」




『とんでもない! 今回の結論としては、何よりも先行作品なんかを鵜呑みにせずに、まずは「自分の頭で考えてみよう!」というのを、最大の主題テーマとしており、そしてそういったプロセスを踏まえてこそ、真の「別人格化」の在り方というものをつかめるのであって、だからこそ私はあえて心を鬼にして、プロの作家様の作風をやり玉に挙げさせていただいたといった次第なの』




「──そんなふうに自己の正当性をアピールする前に、いわれなき言いがかりを付けてしまった出版界の各方面の皆様に、心からお詫びしろ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る