第28話、わたくし、『ちょい悪令嬢』になりましたの。【悪役令嬢バトルロイヤル編反省会】(その3)
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サキュバスですの〜と以外の全員「「「…………は?」」」
サキュバスですの〜と「つまりは、『輪廻転生』の別の世界ヴァージョンである、『異世界転生』なんてものも当然のごとく、絶対実現不可能ってことになるわけなのよ」
サキュバスですの〜と以外の全員「「「──はあああああああああああ⁉」」」
かませ犬「何だよ、それ⁉」
ちょい悪令嬢「解説シーン開始早々、話が終わってしまいましたわ⁉」
メイ道「──ていうか、まさにこの瞬間、ほとんどすべてのWeb作家の皆様を、敵に回してしまったのではありませんか⁉」
真王子様「……何という、恐れ知らずな」
ジミー「──いやいや、そもそも何でそんなことを、断言できるわけ?」
妹プリンセス「そうですわ! そこまで自信満々におっしゃるのなら、その根拠について、ちゃんと論理的に納得のいく説明をしてくださいませ!」
サキュバスですの〜と「……あらあら、思った以上に反響が大きかったわねえ。──
サキュバスですの〜と以外の全員「「「──っ」」」
サキュバスですの〜と「それというのも実はね、『ゲンダイニッポン』における物理学においては、現代の量子論は言うに及ばず、遥か昔の古典物理学の時代から、人の人格とか精神とか意識といったものは、その個人を決定づける絶対的に普遍なものなぞではなく、あくまでも脳みそによってつくり出されている物理的存在に過ぎず、言わば肉体にとっては単なる『付属物』でしかないわけなのよ」
ちょい悪令嬢「へ? 人の人格とか精神とか意識が、肉体の付属物でしかないって……」
サキュバスですの〜と「ええ、だから肝心の肉体が──特に脳みそが、死滅してしまえば、霊魂とか残留思念とかが残る余地はなく、もちろん輪廻転生とか異世界転生とかも、絶対あり得ないことになるわけ。──ご理解いただけたかしらあ?」
かませ犬「うぐぐ……」
ちょい悪令嬢「『ゲンダイニッポン』の物理学に則って言われたんじゃ、一応科学文明のレベルが『チュウセイヨーロッパ』止まりの私たちでは、反論のしようがありませんわ………ッ」
メイ道「いやでも、たとえ論理的に正しかろうと、こうも杓子定規に『異世界転生』の実現可能性を全否定してしまったんじゃ、
サキュバスですの〜と「うふふ、その点については、心配ご無用よ」
メイ道「え?」
サキュバスですの〜と「確かに私は、『実際に死者の魂が異世界で転生する』なんてことは、けしてあり得ないとは言ったけど、
メイ道「……え、ええと」
ちょい悪令嬢「その二つは、どう違うのですの?」
サキュバスですの〜と「つまり紛う方なく本当に、『「ゲンダイニッポン」における死者が、異世界において生まれ変わる』ことは実現できないけれど、『ほぼそれと同じようなこと』なら、論理的に実現できるから、これはけして『Web小説における異世界転生
かませ犬「異世界転生と
ちょい悪令嬢「一体、どうやってですの⁉」
メイ道「……ああ、そういうことですか。そういった回りくどい論旨から始めておいて、集合的無意識論や量子論に繋いでいくわけですね」
サキュバスですの〜と「おお、
かませ犬「何だって? すでに死んだ者の『記憶や知識』を、活用できるだと⁉ ──いや、そもそも集合的無意識って、一体何なんだ?」
サキュバスですの〜と「別に集合的無意識論においては、特別なことなんて、何も言っていないわ。──『新たなる発明や発見はあくまでも、過去の先達たちが積み上げてきた、努力や知識や経験の上にこそ、生み出されるものである』といった、極当たり前のことぐらいしかね」
かませ犬「……確かに、当たり前だなあ」
ちょい悪令嬢「それがどうして、すでにお亡くなりになった方の、『記憶や知識』の活用に繋がるのですの?」
サキュバスですの〜と「まさに新たなる発明や発見を成し遂げ得る、一握りの『天才』たちって、先達たちが残してくれた業績や研究成果の習得や応用だけではなく、彼らならではの『閃き』ってものがあるじゃない? ──それって、『どこから』来ると思う?」
かませ犬「ど、どこからって」
ちょい悪令嬢「いや、そのような閃きこそが、『先達たちが残してくれた業績や研究成果』を、受け継ぎ発展させていく過程で、生み出されるのではないのですか?」
サキュバスですの〜と「基本的にはそうだろうけど、それはさっき私が言った『応用』に含まれるのであって、まさに時代を一変させ得る『真の閃き』というものは、あたかも過去の一切とは完全に隔絶しているかのような、文字通り超越的レベルで生み出されるものなのよ」
ちょい悪令嬢「……そうなると、『どこから』と聞かれても、答えようがなくなるのですが。──あえて申しますなら、『ゲンダイニッポン』の少年漫画等でお馴染みの、主人公が想像を絶する過酷な修行の末にたどり着いた、『神の領域』とでも呼ぶべき
サキュバスですの〜と「──おお、いい勘しているわね! さすがは
サキュバスですの〜と以外の全員「「「はあ?」」」
サキュバスですの〜と「そもそも集合的無意識って何かと言うと、提唱者のかのスイスが誇る心理学者カール=グスタフ=ユングの言うところでは、『我々人間の精神の最深部に存在する、すべての人々の「無意識」が繋がり合った「超自我的領域」』のことであり、よってここには人類の歴史の幕開け以来世界中の人々の、現在及び過去における『無意識』──すなわち、あらゆる『記憶や知識』が集まってきているのであって、だからこそエジソンやベル等の、人類の歴史を一変させた天才的発明家たちは、何かの拍子にこの集合的無意識に触れることで、本来自分の知識に無かった先人の『記憶や知識』を、まさしく『閃き』として受け取り、おのおの偉業を達成していったという次第なの」
ちょい悪令嬢「……人々の無意識が繋がり合った、超自我的領域、ですか?」
かませ犬「何だか話が俄然、オカルトじみてきたな」
サキュバスですの〜と「うふふ、確かにユング心理学は他の学派と比べて、何よりもオカルトじみていることこそが最大の特徴であり、ユング自身も晩年、降霊会等のオカルト的イベントに傾倒していたそうよ。──だけど、それまでの過去の積み重ねから間違いなく超越した発明や発見が、複数の人物の手によってほぼ同時に成されるといった、それこそユングの言うところの『
ちょい悪令嬢「つまり複数の人たちがほぼ同時に、何かの拍子に集合的無意識との
かませ犬「……にわかには信じられないが、最先端の科学技術を誇る『ゲンダイニッポン』において、その実在を一応のところ認められていると言うのなら、『剣と魔法』のファンタジー世界の住人である俺たちならなおのこと、頭ごなしに否定できなくなっちまうな」
サキュバスですの〜と「──とまあ、ここまでがあくまでも前提条件なのであって、いよいよこれから本論に入っていくんだけど」
サキュバスですの〜と以外の全員「「「やっとかい⁉」」」
サキュバスですの〜と「ところで、集合的無意識には現在と過去における、すべての人類の『記憶や知識』が集まってきていると言ったけど、実はこれこそが、『異世界転生』を事実上実現させ得る最大の根拠なんだけど、なぜだかわかる?」
かませ犬「現在や過去の人々の『記憶や知識』によって、異世界転生を実現するだと?」
ちょい悪令嬢「ええと、つまり集合的無意識には世界の別なぞなく、それこそありとあらゆる世界の──すなわち、この世界だけでなく『ゲンダイニッポン』における『記憶や知識』も、すべて集まってくるのですね?」
サキュバスですの〜と「そうそう、でも注目してもらいたいのは『世界』だけでなく、『人物』のほうもなの」
かませ犬「……そりゃあ、異世界転生ってのは、ある人物が『ゲンダイニッポン』から異世界に転生するわけだから、『人物』の所属する世界も、重要になってくるだろうけど」
ちょい悪令嬢「──あ、わかりました! 単に世界が違うことだけでなく、
サキュバスですの〜と「その通り! 集合的無意識には現在のみならず過去の人物の『記憶や知識』も存在しているということは、現在においてはすでに存在していない者──すなわち、
かませ犬「な、何と!」
ちょい悪令嬢「……確かに今までの説明からしたら、『ゲンダイニッポン』でトラック事故なんかで死んでしまった人の『記憶や知識』も、いつまでも集合的無意識において存在することになるのだけど、しかもそれが集合的無意識との思わぬ
サキュバスですの〜と「そゆこと♡」
かませ犬「で、でも、本当にいいのかよ、こんな元々思いつきで始めた行き当たりばったりの作品の、そのまた番外編の中なんかで、これまでのWeb小説界における『異世界転生』の概念を、完全に覆すようなことをしでかしたりして?」
サキュバスですの〜と「一応は、『人間は死んでしまったら文字通り「一巻の終わり」なのであり、霊魂や残留思念の類いなぞ残りはしない』といった前提に立って、『質量保存の法則』等の現代物理学やユング心理学に基づいて、現実的実現可能性を求めるのなら、この方法以外に『異世界転生』的状態をつくり出すことは不可能だと思うけど、他の作品においてどういう見解をとられているかまで関知するものではなく、それぞれの作者様にとっての『異世界転生』は、それぞれの作者様の数だけ存在していても別に構わず、ここでの持論が絶対的に正しいと主張するものではないので、その辺はどなた様も、誤解無きよう」
かませ犬「……うわあ、最後の最後で、盛大な『予防線』を張りやがったよ、こいつ」
サキュバスですの〜と「──それでは、字数のほうも予定より大きく超過しましたことですし、『死に戻り』や『作者としての力』についての説明は、改めて次回以降にいたします所存ですので、読者の皆様におかれましても、どうぞよろしくお願いいたします♡」
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