5秘密にしたいこと~男性の生態はよくわかりません①~

 私には妹が2人いる。すでに結婚をしている。一番下の妹に先日、子供が生まれたそうだ。現在、実家で過ごしているようだ。


 子供が欲しいという願望はないのだが、とりあえず、妹と生まれてきた子供の様子を見に行くために、実家によることにした。


 妹が子供を産んだという話をしたら、大鷹さんは黙り込んでしまった。私が実家に妹と生まれた子供の様子を見に行くというと、自分も一緒に訪ねていいかと言われた。もちろん、構わないと答えると、安心したような顔をされた。



「珍しいですね。大鷹さんは子供が好きなんですか。」


「まあ、そんなところです。紗々さんは、子供はどうですか。嫌いそうな感じですが。」


「好きか嫌いか言われたら、好きな方ですかね。でも、どちらかというと、小学校から中学生くらいの少年が好きです。そのくらいの方が萌えますし。それ以上小さいと何かと問題も発生しますし。それに幼すぎます。幼児受けも幼すぎると萎えますし。」


 昔、塾の講師のアルバイトをしていたことがある。その時に、子供に関して思ったことがある。


「二次元よりも、三次元の現実の子供の方が可愛いし、萌える。」


 小学校から中学生を対象にしていた塾で、個別に勉強を教えていたが、どの子も素直で、口は悪いが、大人と比べると発言がほほえましいものばかり。すっかり子供の虜になってしまった。そんなことは、大鷹さんに話す必要もないので、黙っておこうと思っていたのだが。



「何を言っているのか理解できないです。理解したくもないですが。何ですか。二次元より三次元とか。せめて、三次元ではなくて、現実といってください。」


 どうやら、最後のつぶやきが大鷹さんにばっちりと聞かれてしまったようだ。最近、心の中だけのつぶやきが、つい口から出てしまう。大鷹さんの前限定だが、どうやら、大鷹さんにはだいぶ心を許しているらしい。


 今更、大鷹さんにばれてまずいことはないと思うのだが、それでも、もっと気を引き締めていこうと心に誓うのだった。


「今後は、もっと気を引き締めていかないと。」


「何か言いましたか。」


 心に誓ったのに、数秒後にはすでに破られている、何とも情けない現実があった。






 いつものように会社に行き仕事をしていた。


「倉敷さんは、旦那さんとはうまくやっているの。夜はどんな感じなのかしら。」


 昼休憩の時間に突然、私より2歳年上の女性、平野さんが話しかけてきた。たまたま、控室には私と平野さんの二人しかいなかったため、私が標的になったのだろう。私に大鷹さんが浮気したと話しかけてきた40代のパートの女性、安藤さんと仲がいいようだ。


 ちょうど、お茶を飲んでいたところで、思わず吹き出しそうになってしまった。


「ごほっ。ごほつ。」


 幸い、お茶は少量しか口に含んでいなかったので、大惨事にならずに済んだが、何を言い出すのか。これは、大変デリケートな問題だ。


「別に普通ですよ。もしかして、平野さんは何か問題でもあるのですか。」


「そうなのよお。」


 仕方なく質問すると、嬉々として悩みを話し始めた。まったく、そんなに話したいならば、私に質問せずに話したい内容を最初から話してくれればいいものを。とはいえ、二次元ならいくら読んでも聞いてもOKな私だが、三次元の話は聞いても何も萌えないし、面白くもない。興味もないので、話してほしくはないのだが。



「それで、旦那とは最近、一緒に寝ていないの。結婚してまだ1年しかたっていないのに、これってどう考えてもおかしいでしょう。私は彼のことが好きだし、いずれ子供も欲しいのに。」



 それを言われると、何も言えない。私たちは最初から夫婦の寝室は別で、夜に間違いが起こるなんてことはない。子供ができる可能性は今のところ皆無だ。今のところというより、未来永劫ないといっても過言ではない。


 その私に何のアドバイスをしろというのだろう。聞くならもっと年配のすでに子供がいる同僚に聞いた方が有意義である。


「これは絶対に浮気をしているわ。だって、男性って、性欲が強いというでしょう。それなのに私に手を出さないなんておかしい。絶対にこれは浮気だわ。」



「必ずしもそうではないでしょう。浮気という証拠もないのに決めつけは良くないですよ。」


 一応、当たり障りのない忠告をしておくことにした。そういえば、安藤さんが話していた、大鷹さんが浮気をしているという話は嘘だった。念のため、大鷹さんに確認したら、千沙さんと一緒に居たということだ。まあ、千沙さんは若く見えるので、安藤さんも浮気相手と間違えたのだろう。


 話を戻すが、平野さんの理屈が本当だとすると、大鷹さんはどうやって性欲を発散させているのか疑問である。私のところに夜這いに来ることもないし、家にも毎日帰ってくる。土日もいないことは多いが、泊りになることはない。



 もしかして、男の機能が停止しているのか。俗にいる「エンド」という奴か。それなら、早急に治療をしに病院に行くべきだ。



「だから、私は……。」



 平野さんの話はその後も続いたが、それどころではなかった。これは真実を確かめる必要がある。



 会社で気になることができたので、さっそく帰りにそれを確かめることにした。確かめるといっても、面倒なことはやりたくないので、単刀直入に本人に聞いてみよう。

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