2私の趣味~週末の過ごし方②~

 大学生には暇な時間がたくさんある。


 もともと、本を読むのが好きだった私は、暇な時間を本を読もうかと考えていた。しかし、本を1冊読むのは結構な時間がかかる。それに比べて漫画なら本よりは時間がかからない。



 漫画コーナーをぶらついて目についたのが、少女漫画であった。興味を持ってあらすじを読んでみて、どうしようかと思い悩んでしまった。それでも絵がきれいで可愛らしい男子と女子の表紙に思い切って購入を決めてしまった。


 人生で一番初めに買った漫画は「この思いよ、届け」というタイトルで、根暗な主人公がクラスの人気者の男子と仲を深めていく話だ。根暗という部分がなんとなく当時の私と共通する部分があって購入を決めた。昔は、人間関係の順番など考えることもなかったので、友達がいない女子が突然男子と仲良くなるというものにも抵抗がなかった。


 購入した漫画をさっそく家に帰って読みふける。恋愛というものは、私と正反対に位置する代物とはいえ、当時の私は現実にないものと思い込んでいるからこそ、現実逃避みたいにひたすら漫画を読み続けた。意外に面白くてあさりまくるのだった。


 

 漫画に興味を持ち始めて、私はバイトのお金を使って漫画を集め始めた。集めて読み進めていくうちに、とうとう運命的な出会いをしてしまった。



 ある日、いつものように面白い漫画を求めて本屋をさまよっていた。そこで、運命の出会いをしたのだ。


 そう、私が現在はまっている、腐女子の原因ともなったジャンル、BL(ボーイズラブ)である。最初は、男同士が表紙に描かれていて、変だなくらいにしか思わなかったが、裏のあらすじや帯についている紹介文を読んで衝撃を受けた。



「男同士の恋愛もあるんだ。」



 ちなみに私が人生で初めて読んだBL漫画は「純情ロマンス」だ。両親を事故で亡くした主人公は、年の離れた兄と二人で暮らしていた。大学進学を希望していた主人公は、兄の親友という有名作家に勉強を教えてもらうことになる。その有名作家の男性は、兄のことが好きだが、自分の思いは心の中だけにとどめておくという。


 兄は、結婚相手を紹介してきた。親友の気持ちも知らずに平気で結婚相手を伝えた兄にいら立ちを感じた主人公。わざわざ自分のことのように怒ってくれる主人公に兄の親友は徐々に惚れていく。


 大学には何とか合格して、なんやかんやで、その有名作家と一緒に暮らし始める。そこから恋が始まっていく物語だ。



 男同士の恋愛の難しさや、葛藤が意外にも面白くて、少女漫画からBLのジャンルに移行するきっかけになった一冊だ。



 漫画をあらかた制覇していくと、今度はアニメにはまりだした。漫画の帯などに「待望のアニメ化」などと書かれているのを見て、アニメは最近見ていないなと思い、そこから深夜アニメにはまりだした。



 もともと、アニメを見るのは好きだった。モンスターマスターを目指して旅する少年のアニメは毎週、見ていたほどだ。現在も視聴は続けている。



 漫画に描かれているアニメの放送時間を見ると、何と深夜だった。深夜にアニメがやっていることをこの時、初めて知った。



 アニメでは、漫画が動いてしゃべるのだ。どんなものなのだろう。そう思ったものの、さすがに深夜の放送を見ることはなかった。実家通いで、家族が寝静まった深夜にアニメを見ることに一応の恥じらいを覚えたのだ。


 とはいえ、録画して休みに見ることはできる。私は面白そうなアニメを録画して、休日に見ることにした。


 アニメにも、私は大いにはまってしまった。そこで、さらに声優というものに興味を持ち始めた。


 様々なアニメを見て、かっこいいキャラやかわいいキャラの声を当てている人が気になった。声を当てているのは、声優という職業の人だった。気になる声優をネットで調べ、その人が出演しているアニメを見つけると、近くのレンタルショップまで赴き、アニメを一気に見ることもあった。



 私のお気に入りの声優は、いろいろなキャラを演じていた。首無しライダーが池袋で活躍する話の情報屋や、妖怪が見える高校生、巨人を駆逐する団の兵長などたくさんあった。さらには、人間以外のキャラもこなしていて、動物のペンギンの声を担当していると知った時は驚いた。


 彼が声を担当するキャラは、どれも私の心をつかんで離さなかった。クールな声をしていると思ったら、ペンギンの声のように変わった声を出す。



 私は声優にも手を出し始めた。好きな声優が出ているアニメは見るようになったし、お気に入りの声優が出演しているドラマCDも購入するようになった。



 BLのドラマCDは、男同士の恋愛を音声のみで表現している。聞いていて、これが噂に聞く、耳がはらむということかと実感した。



 二次元にはまりだしたが、私はオタクの中でも、陰キャラの部類である。よく、オタクは行動派だなどというが、私に限ってそれは当てはまらない。漫画やアニメ、声優が好きだとは言っても、それらに関するイベントに参加したことがない。


 オタクの祭典とも呼ばれるコミケ、コミックマーケットに行ったこともなければ、アニメのイベントに行ったこともない。声優が好きだと言っても、実際に声優に会えるイベントんに行ったことはない。

 理由は想像にお任せしたい。




 そうこうしているうちにあっという間に大学4年間の生活は終わりを告げた。振り返ってみれば、二次元に費やした時間が圧倒的に多い。友達もできずに、彼氏なんてもってのほか、貴重な学生生活は終わってしまった。



 就職活動については、早めから準備をしていて、インターンシップにも参加して、何とか地方銀行の内定を取ることができた。土日完全引きこもりの私にしては上出来だ。



 就職できたわけだが、相変わらず、土日完全引きこもりをいまだに実行している。



 それは、大鷹さんとの結婚でも同じように実行されるはずだった。



 しかし、それが今、なくなろうとしている。脱土日引きこもり生活が始まろうとしていた。 

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