終章

 父親似の漆黒の髪をひるがえし、帝都ベスビアスを振り返る。ずいぶん遠くはなれてしまっていた。


「置いてきた弟が心配なのですか」


 同じく父親似の茶髪の騎士が、声をかける。


「ちょっとね。黙って出てきてしまったから」


 昇進試験の最中であるため、いらぬ心配をさせまいと気を遣ったのだ。


「オリヴァーは良かったの? ファーレンハイト家の長子として、エリス先生に弟子入りしなくて」


 弟子入りを断ってまで、旅に同行してくれると決めてくれたのが心残りだったのだ。


「家は弟が継ぎますよ。それにゼノビア様をお守りするよう父上にも、言われていますからね」


 未知なる場所へ続く街道へ顔を向け、楽しげな色を瞳に宿した。


「じゃあ、行こうか。母上と父上が歩んだ道へ」



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