第24話

「いってくるね」

「うんいってらっしゃい」

しおりはひかりになって仕事へと出掛けていった



俺は母さんと同じことをした

母さんが俺を父さんに重ねたように

ひかりをしおりに重ねてしまった

でも母さんと俺が違うのはひかりがそれを受け入れてくれていること


あれだけ嫌悪した母さんと同じ事をしている自分に絶望したと同じくらい

しおりをまたこの手にしているという喜びを感じた



家事の合間にテレビを観ているとひかりが映っていた

過去の名作映画を放送している番組で

ひかりが主演の映画だった

画面の向こう側にいる彼女はとても魅力的で手の届かないところにいる人だった

アイドルとして、女優としている彼女はしおりではなく

間違いなくひかりだった

ひかりの魅力に取りつかれたように見居っていると映画は終わってしまった



他に出ている作品があるのか気になって調べてみたがこの一作だけだった




「おかえり」

「ただいま遅くなっちゃった早くご飯食べよう」

「もう準備できてるよ食べよう」



「はぁおいしい、毎日帰ると美味しい食事が待ってるなんて幸せぇ」

「そう言ってくれると作りがいがあるよ

ところで映画なんで一つだけしか出てないの?すごい良かったのに今日テレビ見てたら映画やってて観たんだ」

「演技下手だから仕事が来ないのよ」

「ええ素人目に見ても上手かったよ

引き込まれちゃったよ」

「いいの!私は今しおりなのしおりは映画なんて出てません」


それからその日は一言も喋らなかった

聞いちゃいけないことだったかな

明日は機嫌なおってるだろうか?



寝室で寝ているとドアがあいた

そして彼女が入ってきた

俺の横に入ってくると

「バカ」

と言ってそのまま寝てしまった

しおりは俺にバカなんて言わなかった




でもこうやって甘えてくるひかりが可愛くて愛おしく思えてしおりに対して罪悪感が芽生えた


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る