第4話

「母さん行ってきます」


母さんが口をきいてくれなくなった

もう一年話をしていない

成績はもとに戻ったのに





「じゃあ多数決の結果学級委員長は円山秀くんで決定です。みんな力を貸してあげるように

じゃ、拍手」


あれ以来腫れ物を触るような扱いをされていたが内申書がよくなるように積極的に役を貰うようにした

すると自然と他者との繋がりができて会話が増えていった

母に対していい子を演じてきた俺がまわりの同級生に好かれるようにするのは容易いことだった


「秀う、ここ教えてくれよぉ」

「秀くん、ここも教えて」


悪い気はしなかった

人に頼られるのは

家で話ができない分外で話をよくした


同級生の女の子に告白された

初めての経験でどうしようか悩んだが見た目も悪くないしそこそこ頭のいい子だったので

好きでもなんでもなかったが付き合うことにした


彼女はしおり、天真爛漫でいつもニコニコしていた

「秀くん、好きだよ」

確認するかのように毎日俺にいってきた

俺もあぁ、とかありがとう、とか返した

照れ臭かったが嬉しかったんだ

母さんはなにも言ってくれないから



気が付いたらしおりはいつも隣にいた

家にいるとき以外はしおりとの世界にいた



しおりが好きになった



ある日しおりが俺以外の男と楽しそうに話をしていた

自分のなかで黒い鉛がくすぶってるのを感じた

気が付いたらしおりの手を引っ張りその場から連れ出した


「痛い!痛いよ!どうしたの?秀くん」

いつもと違う俺にしおりは困惑している

しおりの顔をみて我に返った


「あ、その、一緒に帰ろ?」


「うん、一緒に帰ろうね」


「あのーえっと、

そろそろ母さん誕生日なんだ、だからそのぉ

今度プレゼントとか、なんか買いに行きたいなって」


しおりはまた笑顔に戻った

「いいよ!秀くんてお母さん大好きなんだね

喜んでもらえるもの一緒に選ぼう!」

俺が強く握った右腕をさすりながら言うしおりをみて

俺は罪悪感を感じた


「秀くん大丈夫、私嬉しいよやっと秀くんの本当がみれた」

不安そうな顔をやめてニコッと笑った




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