第3話

「それでは登場していただきましょう!

ひかりさんです!」

黄色い歓声と眩いスポットライトに照らされてステージに立っている


私はデビューして一年しないうちに事務所の看板アイドルになった

取り巻く環境は変わっても私は世界の中心にいた



「次は映画の主演が決まったわよ」


「ほんと?川村さん!演技なんて出来るかなぁ」


「あなたなら出来るわよ、なんでもこなしちゃうんだから」


「えへへー、そうかなぁ

私!頑張るね期待に応えてみせる」


なんでも出来る自信があった、歌だってダンスだってすぐに上達したんだから、演技だってきっとうまく出来る

お父さんもお母さんも喜んでくれるかなぁ


しばらくして演技の稽古が始まった

恋愛映画で相手役は今一番勢いがある若手俳優の加々美さんだった


「ひかりちゃん初めまして、よろしくね」

こんな爽やかな笑顔初めて見た


「ひかりちゃん?」


「あ、ひかりですよろしくお願いいたします

初めての演技なのでご迷惑お掛けしないよう頑張ります!」


「そんな緊張しなくていいから、頑張ろうね

なんでも相談してくれていいから」

沸騰するぐらい顔が熱くなった

恥ずかしいような、でももっと見てたいような

こんな感情初めてだ


撮影が始まり、加々美さんに会えると思うと

撮影の日が楽しみで楽しみで仕方なかった

積極的に演技の相談をしにいった

加々美さんもたくさん気にかけて話してくれた


加々美さんとは仕事以外の話もするようになっていた


「ひかりちゃんて彼氏とかいるの?」

ドキッとした

「い、い、ないです。事務所の人に怒られちゃうし、それに忙しくて今はそれどころじゃ」


「へぇ、良かったじゃ立候補しようかな

考えといて」


行ってしまった

返事なんて出来るわけなかった


からかわれただけなのか本気なのか恋愛なんてしたことない私にはさっぱりわからなかった


私を中心に回っていた世界が違う回りかたをし始めて

私の心臓はいつもよりも大きく早く鼓動した

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