第231話 アースバインド

夜中に探査艦まで帰ってきたのだが、外に生命反応多数、らしい。

ヘルプAIに尋ねても、それ以上の情報は出てこない。それがヒトなのかそうじゃないのかも、判別できないらしい。

ただ相手がなんであれ、この艦には認識阻害の効果があるから、危害を加えられる可能性は低いと言われた。


可能性は低い、というのは微妙な表現だ。

万が一認識されて艦を攻撃されるのは避けたい。

『隠密』ジョブをセットして気配希薄と隠形魔力のスキルを発動する。

上部ハッチから岩の上に出ると、コソコソと端に行き下を覗き込む。


暗くて何も見えないが……、マスクの暗視機能をフルに発動すると、月明かりにほのかに照らされたシルエットが浮かび上がる。


……ふむ。



「主。何だった?」


館内まで戻り降りると、ハッチの前で待機していたキスティが緊張した様子で仁王立ちしていた。


「アリだ」

「アリ?」

「ああ。正確には分からないが、体長2〜3メートルはありそうな馬鹿でかいアリだ。ただ背中にこう、背びれみたいにトゲトゲしたもんが光ってた」

「……鉄喰いかもしれん」

「鉄喰い?」

「ズレシオンでも西の山地でたまに出る魔物だ。大きなアリ型で、背中の背びれ状のものが特徴的だ」

「強いのか?」

「手強い。とにかく硬いのだ。死んだ後の素材はそこまでじゃないから、魔力で外殻を強化していると言われている」

「硬い、か。キスティのハンマーでも潰せないか?」

「どうだろうか……。狂化状態なら、あるいは」

「それほどか。なら、関節を狙えば削れるか?」

「それを狙うのが正道だ。だが、実際にやるのは至難の業……いや、それよりもだ。鉄喰いなら、少しまずいかもしれん」

「ん?」

「鉄喰いは岩を喰う」

「鉄喰いなのに?」

「主。ヒトの手が加わっているのでなければ、鉄だけが転がってることは少ないだろう」

「……それはそうか」

「この岩山の中身に気づいていないとしても、岩山は奴らの餌になる。この辺りに多数滞在しているなら、危険やも」

「……マジか」


これまで、この艦は長い間岩山に隠れてきたのだから、まず大丈夫だとは思うが……。

万が一露出してしまったりしたら、面倒そうではある。


「特に、ここに巣でも作られたら今後面倒では?」

「あー。この艦がどうこう以前に、それは避けたいな」


この艦は、俺たちのホームになりつつある。

なんせここから各地に転移できるのだから、今後も折に触れて訪れることになるだろう。

そこが巨大アリの巣に囲まれていたら、落ち着かなさそうだ。


「しゃーない、駆逐するか。出来るならだが」


キスティの知識を掘り下げながら、対策を練る。

奴らがキスティの知る鉄喰いであれば、物理攻撃はほとんど通じない。魔法の方がまだ効果があるが、弱いというほどではない。

魔法のなかでは火魔法や水魔法が比較的効きやすいが、それ以上に雷魔法が効く。

雷魔法を使うと、動きが鈍くなるのだそうだ。


弱点というほどではないが、付け入る隙があるのは持久力。

その巨体と重装甲が災いしてか、戦闘を続けていると動きが目に見えて鈍ってくるという。

ヘロヘロになり、ロクに攻撃も当たらなくなったところで節や目などを狙い、攻撃して仕留めるのが常道。

雷魔法があれば、手軽にその時間を短くできる感じだ。


岩山の上から狙い撃てばしばらくは一方的に攻撃できそうだが、それはヘルプAIに止められてしまった。

岩山の上は艦の認識阻害が及んでおり、そこから攻撃し続けると認識されるリスクが高いという。

敵に攻撃するのであれば、右舷ハッチから外に出てやってくれと言われてしまった。


確かに艦の安全を守るために、認識阻害が剥がれるリスクを負うというのも本末転倒だ。

ただ、正面から出て行って、押し切るのは少し不安が残る。


ざっと探知しただけだが、相手の数は少なくとも10以上、下手すれば20以上いるかもしれないのだ。

そしてその1体1体が、強固な鎧を着た重装甲兵と言えるのだ。


ただ敵の数が多いということは、悪いことばかりではない。

『愚者』のスキル「盗人の正義」で、常に魔力を吸収し続けられるからだ。

奴らに魔力があればだが。

もし吸収できそうであれば、そうやって魔力を補充しつつ動き回れば、敵は疲弊していくというわけだ。

倒し切る必要はない。ひたすら敵に捕まらないように立ち回ればいい。


問題は、仮に疲れさせたとして、どうやって止めを刺すか、だ。

例えば剣を一刺しすれば倒せる弱点とかが、分かれば良いのだが。

色んな攻撃を試せば、そのうち何か見つかるだろうか。


1つの解としては、キスティを温存しておくことだろうか。

動きが鈍れば、キスティのハンマーアタックで首ごとねじ切るとか……出来そうだ。



***************************



色々と作戦は考えたが、とりあえず一先ず寝ることにした。

……何故そうなったかといえば、ちゃんと理由はある。


鉄喰いは夜行性なのだ。


つまり、視認性が悪く活発な夜に挑むよりも、奴らの寝入り端を狙って、強襲する方が合理的というわけだ。


もし朝になって消えていたら、そもそもここに居つかれるリスクはなかったということだし、これから朝までに岩山を食い尽くされてしまうなんてことも、なかなかないはずだ。

一応、艦に危険が及びそうな兆候があったら起こしてくれと、ヘルプAIとドンに頼んでおく。


いつでも出られるように、鎧下は着た状態で、皆でコントロールセンターに寝袋を並べる。

寝室のふかふかベッドを使うのはまだお預けになった。



意識を落としてどれだけ経ったのか、艦内を照らす照明が明るくなり、目を覚ます。

一晩でアリが岩山を食い散らかすことはなかったようだ。


「さて、作戦通り行くぞ」

「ご主人様。無理はなさらないで下さい」

「おう」


今回も、まずは俺が単騎で出る。

キスティ、ルキが第二陣。

サーシャ、アカーネは岩の上から戦況を見守る。

シャオは上空を飛び、異変があったら報せてもらう要員とする。


艦内であればヘルプAIを通して伝言も可能だ。

それを利用して、サーシャがキスティ達の突入タイミングを伝える。


俺が行ってみて、厳しい場合は艦に撤退する。

その行動も認識阻害効果に悪影響はありそうだが、岩山の上から攻撃するよりはマシらしい。

相手からすると「突然不自然に俺が消えた」と思えるそうだ。


なんか最近、多数を相手に突撃しがちだな。

今回はキスティを温存したいという狙いもあるわけだが、もうちょっと仲間内での連携を深めていきたいところだ。


「さて、汚物は消毒だ」



***************************



右舷から岩山の中の通路を通り、出入口にスタンバイする。

ここにはヘルプAIの端末もないため、俺のタイミングで出るしかない。


深呼吸を1つしてから、外に出る。


デカい。

巨大な魔物に見慣れたといっても、やはり虫型の魔物が人間以上のサイズで存在しているのはまだまだ違和感がすごい。


突然岩山の傍に現れた俺の前に、触覚をピクピクと動かしながら佇む巨大なアリが多数。


起きているようにも見えるが、俺に反応しないところを見ると休憩モードなのは間違いなさそうだ。

キスティによると、鉄喰いに限らず、アリ型の魔物というのは寝ているときでもこうして警戒しているらしい。

大きな動きをしたり、音を立てたりすれば触覚に感知され、意識が覚醒するのかもしれない。


「魔力ではどうかね」


夜でもないし、多少派手な魔法を使っても目立ちにくいだろう。

魔力を練り上げ、特大のラーヴァストライクを放つ。


その成果を確認する前に、ステータスを確認。

……よし、魔力は回復している。


つまり目の前のアリどもは、魔力を持っているということだ。

ならば「盗人の正義」で魔力を奪えるし、また魔力が枯渇したら弱体化する可能性も高い。


そうしているうちに、上空に打ち上げたラーヴァストライクが分裂し、アリの群れに降り注ぐ。

俺は身体強化魔法をかけながら、アリの少ない方向に走る。

今は『魔剣士』と『愚者』で固定し、サブジョブは『魔法使い』をセットしているため、『警戒士』を付けられず、探知ができない。というか魔力で覚醒されても面倒なので、念のため探知は控えている。昨夜反応していなかったので、大丈夫だろうとは思うのだが。

そこで、事前にサーシャが目視で確認したところ、20体以上いることは確実とのこと。


そして今、俺が目の前で確認しても、やはり10体は優に超えそうだ。


孤立した場所にいた1体に、通りざまに剣を振ってみる。

まるで鉄壁を殴ったような重い感触がして、魔力放出しても削り切れない。

こちらを向いたアリが、まるでギロチンのような顎を閉じながら噛もうと身体を捻る。


エア・プレッシャーで逃れながら、頭の上に乗る。振り落とそうと暴れだす直前、眼を一刺しするが、硬い。


降りながら加速し、奥へと逃げる。


眼も硬いとか。やはり魔力か?


身体を捻りながら、顎を閉めるスピードは驚異的なものがあった。

巨体ながら、軽快に動けるようだ。

ただ、移動するスピードそのものは俺の想像するアリのスピードよりもモタモタしている。


ドシンドシンと、踏みしめながら迫ってくる。


これがトップスピードなら、身体強化しつつ逃げれば捕まらないハズ。

問題は数だ。

連携して囲まれると、逃げ場を失うかもしれない。


腰の魔石の位置を確認する。

これを投げれば音と光が出るので、サーシャがそれを見てキスティたちに救援指示を出すことになっている。

出来れば使いたくはないが、一当たりしてみて俺が死ぬ可能性が濃厚であれば使う予定だった。


……が、これなら使うレベルではない、か。

位置取りをミスらなければ、なんとか翻弄できるレベルだ。


周りに他の魔物がいないかどうかは、サーシャとアカーネが索敵してくれているはずだ。

俺は目の前のアリどもに集中する。


「よお、言葉分かったりしないだろうな?」


少し前に虫人間と出会っているだけに、こいつらも見た目がアリなだけの種族である可能性はゼロではない。

一応言葉を掛けてみるが、反応は見られない。


万が一知性があっても、いきなりラヴァーストライクを浴びせられたら交渉は不可能かもしれないが。


まあ、いい。

そうだったら、不幸な出会いということで。


後ろ、後ろに逃げながら、林の中に入り込む。

『魔剣士』を外し、『警戒士』をセット。

敵と樹木の位置とを常に確認しながら、様子を探る。


これで高度な知性があるなら、一度追うのを止めて作戦を立てるとか、してもおかしくはないが。

追ってきたアリどもは躊躇することなく、林の中に足を踏み入れる。

ちょっと安心する。


その一心不乱ぶりは、ヒトを狙う魔物の姿そのものだ。


「そりゃ悪手だろ、アリンコ」


巨体に林は相性が悪い。

それでも器用に巨体を捻ったり、樹木に登ったりしながら追ってくるものの、速度は大きく落ちている。


先ほど構えていたのとは違う魔石を放る。


砂が出て舞い上がるだけの改造魔石だ。

「作戦通り、問題なし」の合図だ。


1体のアリが、樹の間を通り抜けてこちらに接近する。

常に移動して突進を防ぎながら、一通りの魔法を試してみる。


土、風は効果なし。

火は眼に当たると痛そうだが、それだけ。

水も効果なしだ。


そうこうしているうちに他のアリも追いついてきたので、雷の魔石を1つ放る。


「ギギギギ!」


まさに感電しています! という漫画的表現のように、身体を震わせるアリども。なるほど、効果ありというのは本当らしい。

だが、雷の魔石は限りがあるのだ。


緊急の場合以外は、なるべく使いたくない。


俺も土地勘があるわけではない。

敵から遠ざかるように移動しているうちに、林が途切れた場所に出てしまった。


周囲を見渡すと、近くに岩山が見えた。

グルリと半円を描くように、戻ってきたらしい。


もう一度砂の魔石を投げながら、索敵する。

先ほどは確認する余裕がなかったが、数体のアリが動けなくなってジタバタしている。

どうやらラーヴァストライクの当たりどころが悪く、脚を失ったりしたらしい。

やはりラーヴァストライクは優秀だ。

威力マックスで直撃させてこれだから、効率が良いかは分からないが。


うむ? 追ってきて林に入った一団とは別に、岩山の近くに陣取ったままの一団がいるな。


こちらを認識すると、4体ほどのアリが横並びになり、威嚇姿勢を取る。


その後ろにいるアリが……カラフルだ。

虹色に光っているように見える。


「あれの話は聞いていないな。親玉か?」


これ見よがしに火の玉を創り、カラフルなアリに放ってみる。

1体のアリがその射線上に割り込み、自身で受け止める。

まさにSPだ。


「間違いなさそうだな」


岩山の周囲を大きく回るようにして移動しながら、練り上げたラーヴァストライクを再度親玉の上に投げる。

先ほどより威力は低めだが、1体でもダメージを与えられていれば重畳。


重要個体を護るなんてSPムーブができる程度の知能があるなら、これで俺に脅威を感じて及び腰になってもらいたいところだ。


カラフルアリとそのSP以外の、ズシズシと俺を追ってきたアリの一団を引き連れて、西の森に向かう。


既に息切れしている個体もいるのか、集団もいくつかに分断されてきた。

最速で俺を追ってきているのは、5~6体程度だ。


第2集団の位置を常に把握するようにしながら、囲まれないムーブを続ける。


ラーヴァストライクで減った魔力が回復すれば、また適当にラーヴァストライクを投げる。

その繰り返し。

偶然なのか狙ってなのか、俺を半包囲するような形になりかけたら、森に逃げ込んで再度分断する。


そんなことを1時間も繰り返していると、やがてアリどもはぐったりとその場から動かず、こちらに威嚇するだけになってしまった。


そろそろいいだろうか。

岩山の入り口まで戻ると、中からキスティたちが現れた。


「やっとか、主!」

「待たせたな」

「サーシャ殿から伝言だ。動かない一団は、明らかに体力を温存している。手下のアリどもを倒すと逃げ出すおそれがある、と」

「出来ればここで叩きたい。予定にはなかったが」

「正面から殴り込みだな!」


カラフルなアリを中心とした一団に近づく。

黒い手下アリがすぐに威嚇態勢に入る。


さんざん連れ回してヘバっているアリどもと異なり、こいつらだけは元気だ。


「うがああああ!」


キスティが狂化を発動。

俺も改めて、『警戒士』を外して『魔剣士』をセットする。短期決戦の構えだ。


「ルキの後ろに隠れて行け。俺の合図で攻撃しろ」

「うぐあああああ!」


通じたのだろう、ルキの後ろに隠れて進むキスティ。


俺は音と大きさを意識したラーヴァフローを作成し、敵の頭上に落とす。

接近するそぶりを見せ、注意を惹く。


他のアリどもと異なり、簡単に挑発には乗ってくれない。

一定距離を保ちながら、威嚇してくるだけだ。


左から近付くルキとキスティに、1体が反応する。

繰り出した嚙みつきは、ルキの盾に受け止められる。


「やれ、キスティ!」

「うがああ!」


ハンマーでアリの頭を横殴り。

アリはひっくり返って飛ばされるが、すぐに立て直す。


俺はもう一度ラーヴァフローを放ちながら、カラフルアリの動向を見る。

カラフルアリの身体から何やらキラキラしたものが出て、攻撃されたアリが光に包まれる。

なんだ、回復魔法か!?


そんな便利な魔法、ズルいぞ。


「ルキが攻撃を受け止めたやつだけ、攻撃しろ!」


キスティに指示を与え、俺は残る3体に近付く。

さんざんラーヴァフローで攻撃してきた俺を、このSPアリが放置はできんだろう。

うち1体が噛みつき突進をしてくるが、いなして魔力放出を浴びせる。

脚を狙ってみたが、傷はない。


「うがああ!」


キスティが今度は、上からハンマーを振り下ろし、アリの頭を地面とサンドした。

驚くべきことに、それでもアリの頭は潰れなかった。

潰れなかったがダメージはあったようで、よろよろと動く。


そこに、ルキが槍を突き立てた。


「ギギギギギ!」


バタバタと暴れたアリが、崩れ落ちる。

隙を見せたアリの弱点を見極め、槍で突いたらしい。


「よくやった、ルキ!」


3体の攻撃をいなしながら、称える。

体力のあるアリ相手でも、この数なら倒せる。


そう認識した瞬間、カラフルアリが動いた。

踏ん張るような前傾姿勢になると、背中から針のような何かを射出したのだ。


ルキが、盾とスキルでそれらを防ぐ。

俺も咄嗟に、ウィンドシールドを張ったが、いくつかの針が通り抜けて鎧を叩いた。

殴られた程度の衝撃だが、ダメージは受けなかった。


「チッ、あいつは飛び道具あるのか」

「どうしますか、主様?」

「問題ない、ルキとキスティは護衛を潰せ。俺はこのボスアリを駆逐する」


先ほどの動きなら、残る3体を任せても大丈夫と判断。

未知の能力を持つ、ボスの動きを拘束することを優先する。


「行きますよ、キスティさん」

「うがあああ!」


指令自体は、先ほどのもので良いだろう。

ルキが上手く操ってくれれば倒せる。


俺はカラフルなボスアリに接近し、攻撃……しようとすると、バッとボスアリが羽根を広げた。

羽根は虹色に光っている。

どうやらこれが、光っていた物の正体らしい。


「アースバインド!」


準備していた魔法を、ここで使う。

時間はかかったが、行動を止めれば勝てそうなので、ずっと練り上げていたのだ。


足元の地面から、帯状の土がボスアリに絡みつく。

いつぞや見た、ウォータバインドをした爺さん魔法使いのものと比べると、大分しょぼい。

だがそれでも、ボスアリの急発進を止められたらしい。


再度背中から針を飛ばして、バインドを破壊しようとするボスアリ。

その余波がキスティたちに向かっていないことを確認して、俺はエア・プレッシャー。

急接近して上に飛び乗ると、羽根に向かって魔力放出。

片羽根が千切れ、ボスアリは叫ぶ。


「ギギギギギ!」

「おらっ!」


眼に突きを入れる。

弾かれるかと思ったが、すんなりと刃が入った。

短剣も取り出し、もう片方の眼に突き刺す。


両方の剣から、魔力を放出。

暴れまわるボスアリから振り落とされないようにしていると、動きが止まった。


虹色に光っていた羽根は、色を失い透明になり、下に垂れ落ちる。


「よし、討ち取ったぞ!」

「うがあああ!」


キスティも、順調にハンマーで部下アリたちを殴り続けている。

ルキが冷静に槍を突き入れ、最後の1体。


ふう。

長い戦いだった。



残るは、スタミナを使い果たしたアリどもを1体ずつ処理していくだけ。

硬いだけに時間がかかったが、支障はない。


賊から回収した行動阻害の剣の効果を確かめたりしながら、ゆっくりと処理を進める。


そんな最中、上空から監視をしていたシャオが、俺の頭上に降り立って鳴いた。


「ん? どうかしたか?」

「ムニャニャ……」


シャオが再度飛び立つ方向に向けて探知をすると、小さな何かが近付いて来るのが分かった。


「誰だ!?」


叫ぶと、緊迫した声で答えがあった。


「拙者だ! ヨーヨー、助けてくれー!」


前に町まで送ってあげたラキット族のアカイトだ。

今度は何だ、全く。

かわいい小人ネズミみたいな見た目をしていなかったら、取り合わなかったところだぞ。


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