君と私

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君と私

私は君と校舎の人気の無い階段で会う約束をした。

目的は、彼女がいる君とキスする為。

その時の私はひどく寂しくて、とにかく人の温かさを感じたかった。

漫画や小説の影響のせいか、周りの女の子はファーストキスを特別なものだと考えていたけど、私にとっては辛い現実から逃れる為の手段でしかなかった。


待ち合わせの時間に、君は走って私のもとにきた。そこでようやく、自分のしていることを恥ずかしく思った。

私は決して良い人ではないし、今も君の彼女を傷つけている自覚はあったけれど、君を拒む事は出来なかった。

何故なら、君は私に幸せをくれたから。

君と出会う前は、自分の存在価値を感じられなかった。でも、君はこんな私を好きだと言ってくれた。

私に告白してくれた人は他にもいたけれど、私の外側しか見てない人だった。今考えれば、君もそうだったのかもしれない。だけど、当時の私には君が私の弱さを理解してくれた唯一の人だと思えた。

だからあの夏、階段で君とキスをした。


心の底から君が好きだったけど、君の彼女にはなれない。

一緒に帰りたくても、秘密の関係だから帰れないし、君の彼女を傷つける罪悪感もあった。でも、それ以上に君が大好きだったからどうでもよかった。


でもある日、君は私とシたいと言ってきた。

その時、ようやく目が覚めた。

いくら君が好きでも、学生のうちにキス以上のことをする気は皆無だったし、自分のしたことが愚かなことだと気付いた。

だから、私は君にもうこの関係をやめようと告げ、君も承諾して、お互いの過去となった。


でも、君への想いは私の中で消えてはくれなかった。どんなに時間が経っても、君を無意識のうちに目でみてしまっていた。

その結果、私は君に嫌われた。

私は君に「ストーカー」と言われた。

確かに未練はあったし、君を無意識のうちに目で追ってしまったのは事実だったから、申し訳なくなった。

だから、私は顔をあげないようにした。

これ以上君に迷惑をかけないよう、授業中も黒板を極力みずに、耳で聞いてノートに書いた。

そんななか、君は私に聞こえるぐらいの大声で数人の連絡先を「こいつは、もーいいや。」と笑いながら消したこと話していた。

名前は言わなかったけど、私のことを言ったのだろう。

その日から私の未練は完全に消えた。

私の中で、君と君の彼女には罪悪感はあったけど、君をただの学校の生徒と思えるようになった。ようやく君を忘れられて、晴れやかな気分だった。


でも、君はそれでは終わらせてくれなかった。

ある日、私はクラスメイトの女子数人に呼び出された。

「ねぇ、あなた彼女からあの人のこと奪ったの?」

あの人とは勿論君の事だ。

確かに、キスはした。それを奪ったというのなら、奪った。

ただ私の中では、私は君を奪えたのではなく、ただの君の遊び相手だという位置づけだった。

私は馬鹿正直に答えるつもりは無かったので、「誰がそんな馬鹿な噂流したの?」と聞き返した。

答えは聞かなくても、誰が噂を流したかわかっていたので、クラスメイトのその先の話は流して聞いていた。


私の口から君との関係を話した事は一切無いし、あのキスをした日は人目のつかない階段

で、周りを確認してからキスをした。

答えは1つ。君が私との仲を話しているという事だった。

その瞬間、君に抱いていた罪悪感は少しばかり消えた。代わりに、君に対しての少しの苛立ちを覚えた。

大体のメールは日数がたって消えていたが、いくらか残っていた君とのメールを彼女にみせる事も出来た。

だが、流石にそんなことはしなかった。私の噂は流れていたから暴露して失うことはもう無いが、君と彼女の仲をさきたいわけではなかった。

だから何も話さず、君とのメールを全て削除して、メールアドレスも変えた。


しばらくして、友達から君が彼女と別れた事を聞いた。その頃には、君に対しての罪悪感はもう消えていた。

でも、彼女への罪悪感は変わらなかった。

それでも、彼女には申し訳ないが、私は結果的に良かったと思っている。

ちゃんとした付き合いをした方がいい事を身をもって学べて、彼を忘れる為に勉強したおかげで成績も上がったのだ。

勿論いい事ばかりではなかったが、学べたことは多かった。


それからしばらくして、君は私の後輩と付き合いはじめた。

正直、ここまで君が配慮に欠ける人だとは思わなかった。これでめでたく私は部活で後輩を見るたびに、君の元彼女への罪悪感を思い出さなくてはならなくなった。

けど、私は少し嬉しかった。

君が私とまだ友人だった頃、私に家族関係の悩み相談をしていて、その事を話せる人が君にまたできたことが素直に嬉しかった。


袖振り合うも多生の縁というけれど、君と私はその良い例なのかもしれない。

私は君に恋をできたし、失敗から多くを学べた。そして君もきっと何かしらの事を学べたと思う。


私が君を大切な人だと思うことは二度とないし、話すこともないけれど、心の底から感謝している。

私に多くを学ばせてくれた君にありがとう。

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