背中合わせの告白

雪兎

第1話彼女の場合

こんな世界は嫌いです。

新品の靴を下ろしたその日に夕立にあったとき

混み合った電車の優先席に高校生のカップルが座ったとき

張り切ってあてたパーマに引きつった笑いで目をそらされたとき

大好きなあの人に好きな人がいると相談されたとき


こんな世界なんて嫌いです。

ギラギラしたネオンもすれ違うお気楽な人たちも

全てが嫌。

こんな世界、嫌い。

でも、一番嫌いなのは、自分なんだ。

悔しくて、哀しくて、情けなくて。

彼と二人っきりで外で会えるのに浮かれて、昨晩は鏡の前で一人ファッションショーの開演。

今日こそこの気持ちを伝えられるかな、伝えようかなって、思っていたのに。


泣いて適当に拭いた顔は化粧もぐちゃぐちゃで、

はは、ほんと、嫌になっちゃう。

不細工な笑顔でいいや。

次にあの人に会うときまでに、上手く笑えるようにならないと


こんな世界は嫌いです。

でもね

嫌いだけど、嫌いだけじゃないんだよ。

あの人を好きになったこと

あの人を思ってオシャレしたこと

あの人に認めてほしくて仕事を頑張ったこと

そんな毎日は楽しくてきらきらしてたから。


震えるスマホを見ると、さっき別れたあの人の名前が。

あぁまだ好きだな。

だからせめて伝えたい。

今なら告げられる。

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