羽化不全
田鯉 広菊
第1話私から離れたかったのかもしれない
その日は1日イライラしていた。昨日慣れないことをして疲れていたし、生理もかれこれ2週間ぐらい続いている。頭痛はするし、寝不足。明日から4連勤だと思うとそれだけで身体は重くなる。
昼に起きて、溜まりに溜まった秋からの新ドラマの録画を2つだけ観れたけれど、気がついたらまた眠ってしまっていて、起きた時にはもう夕方の5時だった。
夕飯の支度を始めないと。そろそろ父親が帰ってくる時間だ。こんな時、独り暮らしならいいのにと思う。常に自分のペースで行動していたい。昔から自己中心的な性格ではあったけれど、年々それがひどくなってきたと自分でもそう感じる。
夕食を済ませ、起きてすぐに回して忘れていた洗濯物をランドリーに持っていく。乾燥した後、カゴの中に衣類を入れる。いつもは家に持ち帰ってから畳むのだけれど、今日はなんだか帰るのもめんどうで、ランドリーの大きなテーブルの上で畳む。
くるぶし靴下が1つない。床にも落ちていない。家から出た時に落としたかな?とぼんやり考える。乾燥機の中も一応見てみると、丸まった黒いくるぶし靴下がそこにいた。いつもなら家に帰っていたし、家に帰って無いことに気づいていたなら、たかがくるぶし靴下1つの為に絶対にランドリーを見に行くことはしない。
君は私に見つけてほしかったのね。と愛しく感じる。たかがくるぶし靴下に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます