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まよぱ

プロローグ

 DORV、PAPVR、それが、未だ胎児だった頃の彼の病名だ。

 両大血管右室起始症、部分肺静脈還流異常、その他、幾つかの合併症を伴い、彼の心臓の部屋は一つしかなかった。


 「生まれて来る子が、どんな子供だって構わないよ。心臓の部屋が四つ、いやせめて三つあればいい。それであれば、この世に誕生する事が出来るからね」


 心臓外科医だった父は、私が生まれる前、そんな風に母に言ったらしい。

 心奇形には様々な形態がある。合併症を含めるとその症例は数え切れるものでは無い。

 新生児として生まれてきて、僅か数時間で死んでしまう例も決して少なく無い。

 ただ、それが例え数時間であっても、生まれて来る事が出来る心臓と、胎児のまま死んでしまう心臓とがある。


 両者を分けるものが、一体何なのか。

 結局、私には最後まで良く分からなかった。

 アリスには、分かっていたのかな。



 ねぇ?アリス。


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