二振りの剣
「ぐあっ・・・! あんた・・・ブランじゃ・・・ないわね・・・」
「アロンダイト、・・・ヲ、スベル」
首を掴まれているせいで息が出来ない、ブランの言葉を聞き取ることが出来なかった。
左腕の弓が胸に当てられる。
(ああ、私、殺されるのね・・・)
死を覚悟した。意識が薄れていく・・・。抵抗する力もない。
(走馬灯・・・っていうのかしら)
グレンに出会ってから嵐のような日々だった。戦うことなく平穏に過ごすと思っていた。それを見事に打ち壊してくれた男の子。私を守ると言ってくれた男の子。
(家もボロボロになっちゃったけど、楽しかったな・・・)
短い時間だったが得たものは大きかった。馬鹿みたいに笑ったりはしゃいだり、思い出が何倍にも膨れ上がっていた。願わくば、まだ続けていたい生活。死んでしまったら叶わないだろう・
「・・・ザ!」
(最期に聞こえるのがグレンの声だなんて・・・笑っちゃうわ・・・)
「させるかよ! うおおおおお!」
グレンはブランの背後へ飛び掛かり、剣を振り下ろす。イルザの胸に当てていた弓を背後にやり、剣を受け止める。間一髪のところでイルザの窮地を救うことはできたが、不利な状況には変わりない。
グレンは続けて二撃、三撃と打ち込むが、全て防がれる。
「イルザから手を離せ!」
イルザを掴んでいる腕を狙い、突きを放つ。剣先がブランの右腕に突き刺さる。ブランは衝撃で手を離したが、ブランは左腕を真横に薙ぎ払い、グレンの腹部へ打撃を打ち込んだ。
意識が飛びそうになったが、ブランの手から逃れたイルザを自身の“
ブランは標的を変え、グレンへ打撃を連続で打ち込む。グレンがふらついた所を左腕の弓で魔力矢を放った。
「があっああああっっ!」
グレンはトドメともいえる一撃を食らい地に伏せる。
「グレン!」
グレンに飛ばされた衝撃で意識を取り戻したイルザは、グレンに託された“
「今度は私が助ける番よ!」
二振りの剣は蒼白に強く輝く。
大地を力いっぱい蹴り、足に爆裂魔法をかけて爆発的に加速する。
グレンの頭を踏み砕こうとしていたブランを、一歩手前で着地し、体を回転させて二振りの剣を真横に振り払う。
白金の月よりも強く蒼白に輝く剣はブランの体を打ち飛ばす。
だが、打ちつける瞬間にブランは両腕で防ぎ、衝撃を抑えたので体は飛ばされることなく踏みとどまった。
「アロン・・・ダイトォォォォォォォ!」
怒りに我を忘れて剣の名を叫ぶブラン。しかし、イルザはその叫びを気にすることなく攻撃を続ける。
更に“
「はあああ! “
上腹部、顎、下腹部、脛。それぞれ突きと打撃の急所を確実に狙った高速八連。ブランは膝をついた。
「ガアアアアアアアアッッ!アアアアアアッッッ!」
ブランの体から黄金の魔力が蒸発する。それと同時に宵闇の空間は無くなり、純白の部屋へと戻ってきた。
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