迷いの涙
心のどこかではブランを説得できるのではないかと、淡く期待していた。だが、いざ対話してみた結果、その期待は土壁のように崩れていった。
最初から分かっていたはずだった。愛を求め続け、愛に盲目になってしまった。自分程度の存在が殻に閉じこもってしまった心を変えることが出来るわけがない。そう思い知らされた。
「しっかりしなさいスミレ!」
イルザがスミレの肩を揺さぶる。
何度も揺れる覚悟をイルザが戻してくれる。上辺だけの覚悟、頭では理解しているつもりだった。気持ちが、心が覚悟しきれていなかった。
もう、残された手段はない。暴走とも呼べるブランの行動を止めるには・・・。
「ごめんなさいですイルザさん・・・。もう、迷わないです。」
降り注ぐ光の矢の中、スミレは再び心ではなく頭で覚悟を決め、自身の“
「覚悟なんてそう簡単に決めれるものじゃねぇんだよ。心が出来ないって叫んでるなら、そいつはもう無理だ。スミレはそこんところどうなんだ? 心に、気持ちに嘘ついてないか?」
「私は・・・本当は主様を手にかけたくないです。ですが、ですが・・・もう、他に手段がないのです・・・。仕方がないのです・・・」
仕方がない。
グレンはその言葉に確信を持った、スミレはまだ揺れていると。それもそのはず、年端も行かない少女が生死の選択を簡単にできるわけがない。
「スミレ、お前は迷っている。だがその迷いは正しい、だから無理をするな。正直な気持ちで自分と戦え」
「私は、私は・・・」
気持ちと共に涙が溢れだす。本当は、生きたまま主様を止めたい。間違った愛情の表現を正しい方向へ導きたい。目の前で苦しんでいるのに、助けることが出来ない自分がふがいない。
「まぁ見てなって。スミレの迷いは俺達が消してやる。だろ? イルザさんよ」
グレンはスミレの肩に手を置き、イルザの方へ向いた。
「格好いいこと言うじゃない。だけどその通りよ。あなたは優しい心をきちんと持っている、だから私たちはそれに応えてあげるわ」
イルザもスミレの肩に手を置く。ブランを止めると決めた時から感じていた心の中にある霧が晴れるようだった。
「イルザさん・・・グレンさん・・・」
涙がボロボロと零れだす。優柔不断で迷いに迷って不甲斐ない自分に、優しい心を持っていると言ってくれた。迷うことが正しいと言ってくれた。
闇の中の光のように二人は導いてくれる。
「・・・攻撃が弱まってきた」
降り注ぐ光の矢は徐々に薄くなっていく。
「行くわよグレン!」
「ああ、俺たちの戦いを見せてやろうぜ」
二人の背中は眩しく輝いて見え、この二人こそが、王に相応しいと感じた。
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